次期モデルの登場もアナウンスされている現行フォルクワーゲン・ゴルフ7。ラインアップに加わった2.0ℓ直4ディーゼルターボエンジン搭載グレード「TDI」は、ゴルフ7の「完成形」とも言えるモデルだ。
VWゴルフTDI ハイライン マイスターに300kmほど試乗して、その完成度、TSIモデルとの比較した際のアドバンテージを考えてみた。
ゴルフ7最終型 熟成され尽くした「最終型」を選ぶ価値は?
ドイツ車のファンには、「最終型狙い」の人が多いという。フォルクワーゲンにもその傾向があって、次のモデルがもうデビュー間近なタイミングで現行型の最終モデルを手に入れるという人がいるという。
なんの話かというと、もちろんVWゴルフの話だ。現行ゴルフ7は、「最終コーナーを回ったところ」であり、次期ゴルフ8は、10月24日にワールドプレミアされる。とはいえ、ゴルフ8が実際に日本の街を走り出すまでにはおそらく1年ほどの時間があるだろう。まさにいま、ゴルフ7は熟成を極めた「最終型」なのだ。
その「最終型ゴルフ」に最後(だと思う)に追加されたのが、「TDI」のバッヂをつける待望のディーゼルエンジン搭載モデルだ。そのゴルフTDIのトップモデルであるTDI Highline Meisterに試乗した。
まずは価格から確認しておこう。
TDIのラインアップは
TDI Comfortline 323万円
TDI Comfortline Meister 353万9000円
TDI Highline 362万円
TDI Highline Meister 391万円)
さすが391万円である。インフォテイメントシステムやドライバー支援システムは最新に更新されている。
走りもゴルフだけあって、しっかりしている。ディーゼルエンジンと積むために遮音・防音もガソリン仕様よりしっかりやっている印象で、「ディーゼルだからうるさい」ということはない。
日頃乗っているBMW320d(先代F30型。こちらも最終型だ)よりも静かかも、と思って、iPhoneのアプリを使って測定してみた。これは意外にも(!)というかさすがにBMW320dの方が静かだったが、ゴルフTDIも車内にいるぶんにはディーゼル音で悩む必要はない。
VW の最新ディーゼルEA288はどうか?
VWの最新ディーゼルは、EA288型。環境性能も含めて各社の最新エンジンとひけをとるところはない。日本に最初に導入されたパサートTDIに乗ったときは、洗練度を含めて「いまひとつ」という印象だったが、今回のゴルフTDIのEA288型は音振動も含めてまったく不満を感じなかった。それが導入後のこまかなセッティング変更など成熟度が上がったからなのか、ゴルフTDIのEA288がパサートのそれに比べて、ほどほどの出力に抑えているからか、どちらかはわからない。
ゴルフTDI
最高出力:150ps(110kW)/3500-4000pm
最大トルク:340Nm/1750-3000rpm
パサートTDI
最高出力:190ps(140kW)/3500-4000pm
最大トルク:400Nm/1900-3300rpm
である。
モード燃費を上回る高速燃費をマーク
今回の試乗では300kmほど走行したが、トータルの燃費は平均速度36km/hで18.4km/ℓだった。WLTCモード燃費が18.9km/ℓだから、97.4%という高い達成率である。
ゴルフTDIのモード燃費は
燃費:WLTCモード 18.9km/ℓ
市街地モード 14.0km/ℓ
郊外モード 18.9km/ℓ
高速道路モード 22.2km/ℓ
である。実際に走ってみて、このモード燃費数値が掛値なしであることがわかった。
ゴルフTDI、いいクルマである。
次期ゴルフ8は、おそらく運転支援やコネクティビティなどが大きく進化するだろう。しかしMQB(技術基盤)を継続して使うから、いわゆる「走る・曲がる・止まる」の基本性能は、熟成され尽くしたゴルフ7から飛躍的に上がることはない……かもしれない。
となると、いまゴルフ7を手に入れる、というのはなかなか「通な」選択かもしれない。
ガソリンとディーゼルの価格差をどう考えるか
今回のゴルフTDI Highline Meisterの実燃費が18.4km/ℓだった。
燃料価格が
軽油:120円/ℓ
レギュラー:140円/ℓ
ハイオク:150円/ℓ
だとすると、ゴルフTDIは6.52円/kmかかる。
これをそれぞれに当てはめると
レギュラーガソリンのモデルだと21.5km/ℓ
ハイオクガソリンのモデルだと23.0km/ℓ
ゴルフTSI HighlineのJC08モード燃費が18.1km/ℓである。JC08とWLTCの燃費を直接比較することができない。そこで、視点を変えて、ディーゼルとガソリンの2.0ℓエンジンを積むBMW3シリーズで考えてみた。
BMW320i WLTC燃費が13.1km/ℓ
BMW320d Xdriveが15.3km/ℓ
320dは4WDだから燃費はつらい。それでも320iは320dの86%程度。同じ2WD同士なら(定量的な根拠はないが)84%程度だとしよう。これをゴルフにも当てはめると
ゴルフTSI Highlineは実燃費(推測)が15.5km/ℓ程度となる。
ゴルフはハイオク仕様だから、1km走るのに9.68円かかる。
くどくど計算して申し訳ないが、同じHighlineなら
TSI:9.68円/ℓ
TDI:6.52円/ℓ
つまり1km走るごとに3.16円(約3.2円)の差があるわけだ。
TSI HighlineとTDI Highlineの価格差は24万円
24万円÷3.2円/ℓ=7万5000km
TSIとTDIの価格差を燃料代だけで取り戻そうと思ったら(AdBlueの価格は考えないと)7万5000km走る必要がある。
5年間で考えると年間1万5000km以上走るならTDIの方が(何度も言うが、燃料代だけの話だ)お得になる。
ゴルフ7の最終型を買おうとしているなら、ディーゼルかガソリンかは、純粋に想定する走行距離から考えればいいと思う。都市部に住んでいたら、年間1万5000kmはなかなか走らないかもしれないが、郊外で、しかも通勤などに使うと言う場合は、もっと走る人も多いだろう。
熟成しきったゴルフ7は何を選んでも不満はないと思う。
BMW320dの最終型を買った筆者だったら……TSIモデルを選ぶ。理由は、年間1万5000kmも走らないだろうということと、(おそらく)最後に追加されたTDIモデルよりもTSIモデルの方が、値引きなどの条件が良さそうだから、である。実際の購入価格差が24万円を超える可能性もあるからだ。
もちろん、ゴルフ7の最終型にしてTDIの最新型の最上級グレード(つまり今回の試乗車)を手に入れられる人は、ちょっと羨ましいなと思う気持ちもある。
VWゴルフTDI ハイライン マイスター
全長×全幅×全高:4265mm×1800mm×1480mm
ホイールベース:2635mm
車重:1430kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 R4リンク式
駆動方式:FF
エンジン
形式:2.0ℓ直列4気筒ディーゼルターボ
型式:DFG(EA288)
排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0×95.5mm
圧縮比:16.2
最高出力:150ps(110kW)/3500-4000pm
最大トルク:340Nm/1750-3000rpm
燃料:軽油
燃料タンク:53ℓ
燃費:WLTCモード 18.9km/ℓ
市街地モード 14.0km/ℓ
郊外モード 18.9km/ℓ
高速道路モード 22.2km/ℓ
トランスミッション:7速DCT
車両本体価格:391万円
試乗車はプレミアムサウンドシステムDYNAUDIO 7万7000円。フロアマット4万4000円