どれほど技術が進化しても、法規や市場環境の変化など様々な要因が影響するため、最新のモデルが最良とは限らないのが、クルマの面白い所。さりとてモデル末期のクルマは、熟成が進んでいるとはいえ、その後に現れる新型車で劇的に進化する可能性を考慮すると、実際に購入するのはなかなか勇気がいる。
そこで、近々の販売終了またはフルモデルチェンジが確実視されている、モデル末期の車種をピックアップ。その車種がいま“買い”か“待ち”かを検証する。
2回目は、新型ではプラットフォーム一新に加え、海外と同じく「ヤリス」を名乗るのが確実視されているトヨタのコンパクトカー「ヴィッツ」。そのスポーツコンバージョンモデル「GR」のCVT車に、都内~神奈川県内の首都高速道路と市街地で試乗した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、トヨタ自動車
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しかしながら、2005年2月発売の二代目、そして2010年12月発売の現行三代目はともに保守的な作りで、良くも悪くも一昔前のトヨタ車らしい「80点主義」的なもの。目立った欠点もなければ際立った長所もなく、居住性とユーティリティでは歴代ホンダ・フィット(2001年6月~)、走りでは二代目以降のスズキ・スイフト(2004年11月~)、内外装の質感では現行四代目マツダ・デミオ→マツダ2(2014年9月~)の後塵を拝し続けている。
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とはいえ、トヨタもずっと手をこまねいていたわけではない。2014年4月と2017年1月のマイナーチェンジではいずれも内外装の変更のみならず、スポット溶接増し打ち、補強材の板厚向上、ダンパーの改良など、ボディ・シャシー性能も大幅に強化。また2017年1月のマイナーチェンジと同時にハイブリッド車を追加し、同年9月にはガズーレーシングが開発を手掛けるスポーツコンバージョンモデル「G's」を「GR」シリーズに改めている。
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なお、この「GR」シリーズには、ライトチューンのカタログモデル「GRスポーツ」と、これをベースにさらなるチューニングを施した持込登録車「GR」、そしてエンジンにまで手を加えた台数限定モデル「GRMN」の3種類が設定されているが、今回試乗したのは中間に位置する「GR」のCVT車だ。
一方で専用のエアロパーツ(アンダーフロア含む)に前後ランプ、フロントスポーティシート、アルミペダル、小径本革巻きステアリング、ディンプル本革巻きシフトノブ、シルバープレートアナログメーター、カーボン調パネルを装着するなど、内外装はチューニングカーらしい出で立ちだ。
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「GR」ではさらに、フロントロアアームを専用品とし、フロントサスペンションメンバー後端、センタートンネル、リヤフロアにブレースを追加してボディ・シャシー剛性を向上。タイヤも「GRスポーツ」の195/50R16(ハイブリッド車は185/60R15)から205/45R17へとサイズアップしている。ブレーキも、スポーツパッドとホワイト塗装のキャリパーを組み合わせた専用品だ。
そしてCVTには、「SPORT」モードに全日本ラリー選手権で培ったノウハウを注ぎ込んだという専用の制御を採用。加えて、MTのようなシフトチェンジをシフトレバーまたはパドルシフトで可能にする「スポーツシーケンシャルシフトマチック」を、「GRスポーツ」の7速から10速に多段化している。
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では、実際の走りはどうか。最初に走行した麹町周辺の、路面の凹凸が大きいタイトな市街地では、10mmローダウンによるサスペンションストローク減少が影響したか、リヤからの突き上げが強烈で、もし後席に座ったら5分と耐えられないのではないかというレベル。
逆にヒビ割れた路面や石畳路などの細かな凹凸はキレイにいなし、車体をフラットに保ってくれる。この傾向は首都高に入っても基本的には変わらず、ヴィッツGRは明確に路面のコンディションを選ぶクルマだということを確認できた。
その代わりと言うべきか、ピッチ・ヨー・ロールとも出方はクイックかつリニアで操りやすく、かつ速度が上がるほどエアロパーツが効果を発揮し接地性を高めるため、高速域でこそむしろ絶大な安心感を得ることができる。
【Specifications】
<トヨタ・ヴィッツGR(FF・CVT)>
全長×全幅×全高:3975×1695×1490mm ホイールベース:2510mm 車両重量:1060kg エンジン形式:直列4気筒DOHC 排気量:1496cc ボア×ストローク:75.0×84.7mm 最高出力:80kW(109ps)/6000rpm 最大トルク:136Nm(13.9kgm)/4800rpm 車両価格:230万3640円