モーターファンにて連載されていたコラム「福祉の車窓から」。福祉車両の機能的な進化、携わっている人々の考え、そして共に走り楽しむことの心地よさを伝えるべく、その全編をWEBにて再録します。
※データ等は収録時のものになっています。ご注意ください。(2016.10.26)
前回カコミで紹介した国際福祉機器展が今年も開催されました。今年の展示をみて、しみじみ思ったのは福祉車両も進化し続けていること。そしてその方向が、モビリティとして、間違いなく人に寄り添っていることです。
そしてもうひとつ気合いを感じたのが日産ブース。扱う車両も家族ユースが多く、ユーザーと話し合う機会を積極的に持っているとのことで、そのフィードバックが車両に見えています。まさに寄り添うクルマ。新型にリニューアルした今年は、車イス位置が左側、助手席後方に移動しました。従来型はスライドアの開口部の大半を車イスが占めてしまうようなシート位置になるため、助手席側にレイアウトすると、家族が車道側のドアからしか乗れないという状態になってしまうため、車イスは右側設置だったとのこと。今回、車イスを引き上げるモーターユニットを小型化するなどして、車イスの固定場所を助手席に食い込ませるように前進させられたため、スライドドア開口部の後方部分から乗車が可能となり、左右逆転を成し遂げました。この車イス・フォワードレイアウトは、実は運転席にも近くなることから、運転手との2名乗車の際にケアをしやすいというメリットもあります。ケアは停止して行うと考えるとこれでも充分ですが、さらにいえば、運転席ロングスライドがあればパーフェクトだなと思いました。ミニバンでは、跳ね上げ式サードシートを格納し、リアゲートから上がり、セカンドシート位置で車イスを固定するというタイプが増えました。これは車イスの乗車位置がサードシートから運転席近くへ少しずつ移動、同乗者との距離を縮める歴史でもあります。
駆け足での紹介でしたが、運ばれる的な印象から共に走る。自ら走りを楽しむ。という流れが見えてきた福祉機器展でした。
専門業者による一歩進んだカーメイクも見られました
福祉機器展というだけに、自動車メーカーに留まらず、実は数多くの架装業者が車両を展示しています。そここそがまさに「ユーザーに寄り添う」という点において、直球勝負という一面もみられるスペースでした。