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連載第8回『よろしく! スズキ・ジムニーシエラ』 新型ではできないアレンジメント ~みんなでたばこを吸って、灰皿復活を訴えよう~


 今回は前回の続編といっていいかも知れない。




 このページをご覧の方の中から


「おっ、そうか。だったら旧型のほうがいいヤ。おし、踏ん切りがついた!」


といって新型をやめ、旧型の中古車を見つけ始める人がいたら、このコラム当初の目論見は大当たり! ということになるのだ。




TEXT&PHOTO●山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)

 反社会的なタイトルである。




 反社会的だ。




 非常に反社会的だ。




 今回は、新型ジムニーでは実現できない、かつ、反社会的と受け取られかねないテーマでお届けする。










 「たばこは男の嗜みです。」




 こんなたばこのコマーシャルが、亡くなった緒形拳のナレーションで流れていたことがある。




 ところがいまときたら、世界的な禁煙と健康志向。




 喫煙者も喫煙所も減り、その影響をもろに受けて、いまの新型車からは灰皿が消え、シガレットライターは12V電源に置き換わってしまった。




 かつてはどんなクルマでも、どんな安グルマでも、灰皿が備わっていたものだ。




 後席にも灰皿があって、トヨタ車ならセンターコンソール後端、日産車の4ドアなら左右リヤドアに回転式が、2ドア車ならリヤサイドトリムにやはり回転式のものが置いてあり、子供ならちょいとしたごみ入れに使うこともできた。




 とにかく、昔は軽自動車にさえひとつやふたつ、灰皿は標準装備だったのである。




 いまならどんなクルマも、飲みもののカップや缶を置く「カップホルダー」なんてものがあるが、過去の灰皿は、いまはカップホルダーに置き換わったように思える。




 私はクルマを設計する時点で、なんでわざわざ飲み物置き場のことなんか考えてインテリアを造形しなければならんのか、バカバカしいと思っていたのだが、あればあったで何かしらの小物置きに使ってしまっているし、非喫煙者の人にとっては、灰皿だってバカバカしい無用の長物だと思う。




 じっさい、「私はたばこを吸わないから、そのぶん値段を安くしてほしい」という声がメーカーに挙がっていたようだし、灰皿をやめればそのスペースを他に充てる・・・ナビ専用コントロールパネルの新設や画面サイズ拡大、空調その他車両制御システムなどのスイッチの置き場所にするといった、車両企画や内装デザイナー側のメリットもある。




 だが、ちょいと待ってほしい。




 この引き出して使うものを「灰皿」だの「アッシュトレイ」などと呼ぶから、「この禁煙時代に!」と顔をしかめるのであって、これを引き出して使う何かのもの入れスペースと思えば、しかめっ面もたちまち笑顔に変わるのではないだろうか。




 私がティーダに乗り替えたとき、困ったことのひとつに、灰皿がどこにもなくなったことという項目がある。




 私が喫煙者だから困ったのではない。




 灰皿は社外品を使う。




 レックスやパルサー、ブルーバードについていた灰皿は、小銭を入れておくのに実に都合がよかったのだ。




 ティーダにも灰皿的な容量を持つふた付きのもの入れがあって、コインを入れて使っていたのだが、本来灰皿ではないから、どうにも使いやすい位置とはいえなかった。





ティーダのコンソールトレイ後端部には、ふた付きのもの入れがある。本来はBluetooth付きのHDDナビにBluetoothのない携帯電話をケーブルでハンドフリー接続するコネクターのありか。電話とケーブルを接続中は、そのケーブルもここに収容しておく。筆者はこのスペースを小銭入れに転用、ふたの軸の部分にお札をはさむことができ、自分流の使い方をすることができた。

ここにも夜間用のランプをつけた。

 


 ETC時代だからといって、窓を開けてのコインのやり取りがなくなったわけではない。




 コイン駐車場やファーストフードでの支払いでは、窓から手を出して小銭を受け渡しする。

 また、コンビニエンスストアでほんのちょっと車を置いて缶コーヒーの1本でも買いに行こうというとき、たかだか1枚2枚の小銭を取りだすためだけのためにわざわざポケットやバッグをガサガサさせて財布を取りださなくとも、灰皿を引き出してそこに忍ばせておいたコインを直接取りだせるという便利さ!




 夜間ならランプがあるから、なおのことありがたい。




 うちにあった3代目オデッセイの灰皿なんぞ、お札をたたまないで入れられるほど豊かなサイズを持っていたものよ。




 灰皿を灰皿として使うにはもったいないほどの利便性があったと思うのだ。




 運転席右ひざあたりに、下に引くタイプのもの入れがあるならまだよし。





外から丸見えのところに小銭スペースとはけしからん!

 まったく理解不能なのは、フロントドアから丸見えのところに、小銭スペースを備えているクルマがあることだ。




 こともあろうに旧JB23W軽ジムニーだって、運転席吹出口下に「コインポケット」なるものが、XCやランドベンチャーに標準、または特別装備されていた。

 やれ「中に置いた荷物を見えにくくして防犯性を高める」などといって、リヤドアガラス(2ドアならリヤクオーターガラス)やリヤガラスを、松山千春のサングラスみたいな黒の濃色タイプにしておきながら、法規では色づけが許されないフロントドアのスケスケガラスから丸見えになる場所に、ふたもしないようなコインスペースを設けるとは、一体どういうことなのだろうか?




 この種のポケットはコインをせいぜい4~5枚収められる程度のものだが、それでも隠せるものなら隠したい。





灰皿ががぜん輝いて見えた。

 そう考えて計器盤全体を眺めたとき、小銭入れにうってつけと目をつけたのが灰皿だったのである。

 先回の第7回ではこの話は避けたのだが、この禁煙時代に新型ジムニーに灰皿がなくなるのも予測していた。




 新型間近を知りながら、あえて旧型シエラを選んだ理由のひとつには、この灰皿の存在があった。





旧型のこの位置にあった4WDスイッチや灰皿などのスペースは、新型ジムニーでは、パワーウインドウその他のスイッチスペースに充てられた。

 引き出せばもの入れとしても使える灰皿がどこにも備わらない新型ジムニーに対して、くだらない優越感を抱いているところである。

 だいたいいまのクルマは、値段が同等ならその内容も大差ないのだから、アレンジして別の使い方ができるような何かをひとつ与えておくことが、新車注文書に判を押させる動機になることもあるのではないだろうか。




 灰皿だって禁煙時代だからと趨勢に流され、杓子定規の横ならび意識で安易に廃止するから、自分流のアレンジがしにくくなってどんどんクルマが使いにくくなるのである。




 ほんと、20年前のクルマを買ってよかったと思っている。




 ここで私は、引き出したらもの入れにも使える灰皿の復活を望みたい。




 みんなでジャンジャンたばこを吸えば、メーカーも考えてくれるだろう。




 ここで「灰皿にも使える引き出し式もの入れを」とはせず、コンプライアンスなどはるか彼方に追いやって単刀直入に訴えるところが本サイトの流儀である。

■こうやって使う




 さて、灰皿を小銭入れに使っているのが次の写真だ。

左が灰皿をいっぱいに引き出した状態。たばこの火種や灰が入る場所ならではの熱対策の金属プレートがせり出すため、開口部がせまくなって手を入れにくい(右写真)。

 ただ、元が灰皿だけに、ストッパーを兼ねる上部の金属パネルが邪魔をして手が入りにくい。




 奥のほうにある小銭を取るには邪魔だし、走行中の振動で中からカタカタ音がするのも気になる。




 というわけで、灰皿、灰皿と叫んでいた割には、オプションカタログにあった「プチポケット(税込価格2100円)」というやつを注文した。




 ストッパーを兼ねる熱対策の金属パネルは不要になり、ストッパー役は小さなプラスチックの板だけになるから、手を入れやすくなった。




 それがこれである。



プチポケットに入れ替え。金属パネルが、ストッパー機能だけの控えめなプラスチック板になったおかげで手が入りやすくなった。

 内部は緑色に植毛処理されており、麻雀卓の表面みたいになっている。




 驚いたのは、てっきり灰皿とまったく同じ形状の品だと思っていたのが、こちらのプチポケットのほうが外形サイズ、ひいては中の容量もいくぶん大きいことだった。



左が灰皿で右がプチポケット。内部の深さは灰皿のほうが浅いため、トータルの上下寸も灰皿のほうが薄い。

内部の形は深さ以外まったく同じで、たばこ置きや火消しの溝もそのままだ。同じ形のものをカパッとはめているのではなく、内面に直接植毛処理がされているのだ。

 大きいなら所定のスペースに入らないはずなのだが、はめ込んで初めてわかった、灰皿を入れていたときは下部にすきまがあったのだ。




 したがってジムニーの灰皿内部は、インチキのうな重みたいに、上げ底になっているのである。



同じく左写真が灰皿で右がポケット。わかりにくい写真で申し訳ないが、灰皿を入れていたときは本体下にすきまがあったのだ。目を落とすと、向こう側の内部構造が少し見えている。

 ところでこのシエラ、車両側にランプがついていない。




 過去のジムニーにはあったようだが、途中の改良で廃止されたので、私のシエラの灰皿部は真っ暗だ。




 そうでなくとも、取り付け位置が下のほうなので、昼間でも暗い。




 第7回で「改良やモデルチェンジで使いにくく・・・」と書いたが、これがひとつのいい例だ。




 メーカーにとってはコスト削減が達成できたので「改良」だろうが、ユーザー側にはただの「改悪」でしかないのだ。




 本当に灰皿として使っている人など、夜は周辺に灰をまき散らしているのではないかと思う。

というわけでランプをつけた。






これね。

その効果は一目瞭然!

 もしこの連載をご覧の方の中に、JB23/43Wにお乗りの方、または中古を買おうと決めた方がいらっしゃったら、以下を参考にしてみてください。



インストルメント側の上部天板は、奥の1本、手前上の2本、計3本のねじで止められている。奥は普通のプラスドライバーではずす。手前2本はシフトレバー前のトレイにじゃまされてドライバーを上向きにできないので、短いドライバーを用意しよう。

途中の改良・・・いや、改悪でのランプ廃止と同時にランプ穴もふさがれてしまっているので、ポケットのプラスチック板にあいている穴と重なる位置を定めて(これもかなり苦労した)、ドリルで穴をあける。ここにエーモン工業製の「ワンポイントLED」の白を取付。じかにつけると、配線が直接金属板に触れてショートするので、間にテープを貼るように! 照明電源は、リヤ熱線スイッチの照明から分岐した。下側がわ(灰皿がわ)から見たのが右写真。

■新型ではできないもうひとつ

 もうひとつ追加したものがある。

 


 これね → 

 アシストグリップを運転席用にもうひとつつけたのである。




 ジムニーは床もシートも高いから、乗り降りするときにつかむと便利だぞぉ。





裏にある取付穴&ナットを隠すためのふたをくるくる回してはずす。意外と指先に力が要る。

はずれたら中からねじ穴とナットがこんにちはとなる。右写真が追加で買ったグリップだ。

本体をあてがってねじ穴を合わせ、ねじをしめしめして完成!

 これも運転席のルーフサイド裏側に、誰がいつ使うのかわからない、ナットと穴があるからできたのであって、これらがない新型ジムニーには、アシストグリップの追加はできない。




 旧型はボディルーフサイドのアッセンブリーを、右ハンドルの国内用と左ハンドル輸出用と造り分けせず、共有したかったのだと思う。

新型の運転席には取付穴はなさそうだ。旧型にはあった取付穴らしきものは、新型には何もない(赤丸部)。

 造り分けするならするで、生産技術や工場ラインにとってそれなりにコストがかかるからだ。




 たぶん新型は考え方が変わり、国内向けと海外向け、造り分けする方針に改めたのではないか。




 なのであるからして、新型ジムニーの現車を見ると、どうやらアシストグリップを後付けする余地はなさそうである。




 このへん、あくまでも私の推測である。

 いまのクルマは省エネ・省資源・低燃費、そして安全の4つだけに走ってしまい、遊びとか必要な無駄というものがない。




 もうちょいユーザーレベルで、簡単にアレンジやカスタマイズできる余地を残しておくのもよいのではないだろうかと思う。










 唐突ですが、これでおしまい。




 なんだか今回は、みんカラの「整備手帳」みたいになってしまった。



 おまけ






 配線を追加してグローブボックスにもランプをつけた。














 ←灯体の場所はここだよ。




 




 ではまた次回!




 バイバイ。




(第9回につづく)

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