starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

【新型ホンダ・シビック比較試乗インプレ ハッチバックCVTvsセダン16インチ】両車ともスポーツカーなみの低重心感と高級車顔負けのフラットライドに驚愕!


本田技研工業(ホンダ)が昨年9月末に発売し、以来仕様によっては納期が半年に及ぶほどの人気となっている新型10代目シビック。大きく分けて4種類の仕様の中から、本稿ではCVTを搭載する「ハッチバック」の本革&パワーシート装着車と、「セダン」16インチタイヤ装着車を比較する。

シビックハッチバックCVT車のインパネ

車庫から出てステアリングを切ったその瞬間、圧倒的な重心の低さとシャシー性能の高さを感じ取れるクルマなど、この世界に一体何台あるのだろうか? しかも、超低速域の乗り心地を代償とせずに。しかもこのクルマは、スポーツカーではなくファミリーカーである。




新型シビック初体験となったハッチバックCVT車に乗った直後、脳裏に浮かびすぐにメモを取ったのが、この言葉だった。




その圧倒的な低重心感をもたらしている最大の要因は、このハッチバックとその超高性能モデル「タイプR」を含む全車に採用された、新開発のCセグメント車用プラットフォームだ。

セダン/ハッチバック用マクファーソン・ストラット式フロントサスペンション
セダン/ハッチバック用マルチリンク式リアサスペンション


「低重心・低慣性・軽量・高剛性」をキーワードに開発された新世代プラットフォームは、シビックのハッチバック車では初めてリヤにマルチリンク式のサスペンションを採用。フロントはL字型ロアアームと高剛性サブフレーム、前後方向の微細な振動を吸収する液封コンプライアンスブッシュを組み合わせたマクファーソン・ストラット式とした。

セダン/ハッチバック用ステアリングの特性イメージ

さらに、ピニオンギヤを入力側とアシスト側の2ヵ所に設置しつつ、ラックギヤ比を中央部と左右部で異なるものとした「デュアルピニオン可変ギヤレシオEPS」と、操舵角や転舵速度からドライバーが意図する走行ラインを推定し、4輪のブレーキを独立制御して車両挙動をコントロールする「アジャイルハンドリングアシスト」を採用している。

軽量素材使用部位。水色…270MPa鋼板、青…340-440MPa鋼板、桃…590-780MPa鋼板、薄紫…980~1180MPa鋼板、紫…1500MPaホットスタンプ材、緑…6000系アルミ合金。図はセダン

リヤまわり環状骨格。図はハッチバック
フロア下高効率補強ブレース使用部位。図はセダン


高剛性・低振動フロア構造。図はセダン

ボディも一新されている。ホットスタンプ材など軽量素材を多用するとともに、ボディ全体の骨格を組み立ててから外板を溶接する「インナーフレーム骨格構造」、リヤ環状構造、フロア下高効率補強ブレース、大断面のセンタートンネルと井桁状の骨格部材を組み合わせた「高剛性・低振動フロア構造」を採用。セダンでは先代9代目に対し、ねじり剛性が25%アップしつつ22kg軽量化された。

シビックハッチバックのパッケージング図

パッケージング自体も「低重心・低慣性」を主眼に設計されたことが如実にうかがえるもので、ハッチバックの全長×全幅×全高は4520×1800×1435mm、ホイールベースは2700mm。幅こそ他社のCセグメントハッチバック車と同等だが全長とホイールベースが長く、全高は際立って低い。同等の低さを持つのはルノー・メガーヌだけだ。




これらの効果は、高速域はもちろんタウンスピードでも体感できるほど覿面(てきめん)で、交差点を普通に曲がった程度では全くと言っていいほどロールを感じさせない一方、大小問わずあらゆる路面の凹凸をキレイにいなし、車体とドライバーの視点を常にフラットに保ってくれる。

シビックハッチバックに装着される235/40R18 95Yのグッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2

この走りには、ハッチバック全車に装着される235/40R18 95Yのグッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2も大きく寄与しているのだが、写真のトレッドパターンからもうかがえる通り、静粛性や乗り心地よりもドライ・ウェットグリップとハンドリングを重視した設計で、荒れた路面でのロードノイズは決して小さくない。ただし振動と突き上げは車体側で巧みに吸収してくれるため、乗り心地は極めて快適だ。

シビックハッチバックCVT車のL15C型エンジン
ハッチバックに採用されたセンターエキゾーストシステム


シビックハッチバック用L15C型エンジンの性能曲線図

ハッチバックに搭載される、ストレートな配管の2本出しセンターエキゾーストシステムを装着して排気流量を増加させた、ハイオクガソリン仕様のL15C型1.5L直4直噴ターボエンジンは、CVTとの組み合わせで最高出力182ps/6000rpm、最大トルク220Nm/1700-5500rpmというスペック。




バルブオーバーラップを大きく取れる吸排気デュアルVTCに電動ウェイストゲート付きターボ、アクセル操作に対しリニアに加速Gが高まる特性が与えられたCVTなどによって、ターボラグやCVT特有のラバーバンドフィールをほぼ感じさせないフラットな加速感を備えている。




1360kgの車重に対しその加速性能は充分以上と言えるものだが、低速・低回転域ではややレスポンス過剰で、アクセルオフ後に再加速した際はスナッチが出やすい傾向にある。街乗りではECONモードに切り替えた方が、スムーズに走りやすいだろう。

ハッチバックCVT車よりもさらに快適な走り味を持つセダン。ただし…。

ホンダ・シビックセダン16インチタイヤ装着車

セダンは、標準装備の215/55R16 93Vのミシュラン・プライマシー3を装着する仕様に試乗したが、ハッチバックとの違いは思いの外小さくなかった。

シビックセダンに装着される「ノイズリデューシングアルミホイール」。写真は17インチ

まず、走り始めてすぐに気付くのが、静粛性の高さである。リヤにバルクヘッドを持つ3BOXボディという根本的な構造の違いに加え、中空構造のレゾネーター(消音装置)を持つ「ノイズリデューシングアルミホイール」が装着されていることで、大きな凹凸に乗り上げた際に発生するドラミングノイズ(空洞共鳴音)も抑えられている。

シビックセダンに標準装備の215/55R16 93Vのミシュラン・プライマシー3

だが、最も大きな影響を及ぼしているのは、やはりタイヤだろう。ハッチバックに対しサイズは幅・内径とも2ランク低く、トレッドパターンも明らかに静粛性・乗り心地重視のものとなっている。そのため乗り心地も、極上のフラットライド感を味わわせてくれるハッチバックよりもさらにまろやかだ。

シビックセダンのパッケージング図

そうした快適性のレベルアップと引き替えに、ロールが少なく正確無比なハンドリング、そして絶対的なグリップは、ハッチバックに対し1ランクダウンしている。とはいえハッチバックよりも全長が130mm、リヤオーバーハングが140mm長く、全高は20mm低いセダンが、並外れた重心の低さと操縦安定性、乗り心地を兼ね備えており、充分以上に快適かつ軽快な走りを楽しめることに変わりはない。

シビックセダンに搭載されるL15B型エンジン
シビックセダン用L15B型エンジンの性能曲線図


セダンが搭載するレギュラーガソリン仕様のL15B型1.5L直4直噴ターボエンジンの最高出力は、ハッチバックに対し9ps低い173psで、発生回転数も500rpm低い5500rpm。最大トルクは220Nm/1700-5500rpmと同一だ。




ハッチバックより50kg軽い1300kgの車重が効いているのか、それともスロットル開度やCVTの変速特性がハッチバックよりマイルドになっているのかは不明だが、ハッチバックで見られた低速・低回転域で見られたやや神経質な性格はノーマルモードでも影を潜めており、扱いやすさはセダンの方が上。




9psの差は車重の軽さも相まって全く体感することはできず、しかもJC08モード燃費はハッチバックCVT車の18.0km/Lに対し19.4km/L、そして安価なレギュラーガソリンを使用できるとなれば、ハッチバックCVT車もセダンと同じ仕様に統一した方が良いと考えるのは、筆者だけではあるまい。

ユーティリティと居住性、デザインの違いは?

シビックハッチバックのラゲッジルーム
シビックセダンのラゲッジルーム


ファミリーカーにとって重要な荷室のユーティリティについては、ハッチバックが420L、セダンが519Lの大容量。前者は最大開口幅1120mm/最大開口高960mm、後者は最大開口幅1100mm/最大開口高450mmと大きく、さらに双方とも後席が6:4分割可倒式となっているため、使い勝手も良好だ。

シビックハッチバックの横引きカーゴエリアカバー

さらにハッチバックは、世界初となる横引きカーゴエリアカバーを標準装備。しかも左右どちらからでも引き出し・巻き取りできるよう両サイドに設置可能としているのは“技あり”というべきもの。後席を倒した際にバーやパネルが邪魔になる従来型のトノカバーを採用しているハッチバック車は、全てこのタイプに変更してほしいと願わずにはいられない。

シビックハッチバックの後席
シビックセダンの後席


このように、荷室はCセグメント車でトップレベルの容量と使い勝手を備える一方、後席の居住性は決して優れているとは言い難い。身長174cmの筆者でもシートサイズは大きく、ニークリアランスはハッチバックは約20cm、セダンは約30cmと充分に感じられるのだが、低重心化のため1415~35mmに設定された全高と、車体後方の負圧低減とクーペ的なフォルム実現のため後ろ下がりとされたルーフラインの影響で、後頭部がリヤウィンドウ周辺の骨格に当たり、頭が前のめりになってしまう。横方向の絞り込みも強いため側頭部がルーフレールに当たり、首を傾げる格好になってしまうのも、率直に言って不快だ。

シビックセダンのインパネ

水平基調の運転席まわりは、インパネ加飾がハッチバックはカーボン調、セダンがメタル調となり、メーターがハッチバックは赤、セダンは青を基調とする以外は両車共通。2012年発表のフォルクスワーゲン・ゴルフや2013年誕生のマツダ・アクセラに対し、最初の北米では2015年にデビューしたシビックの質感が明らかに低くデザインも無骨なのは失望を禁じ得ない。




だが、ボンネット後端が35mm下がり、Aピラーも15%細径化された効果で視界は広く、ガラス部の傾斜が少なくドアパネル・トリムも薄いうえインパネ中央部も細いため、左右方向の絶対的な空間も広い。しかしそのおかげで、1800mmという全幅以上に車幅が広く感じられ、狭い場所のすり抜けに気を遣いがちなのは玉に瑕だ。

シビックハッチバックのリヤまわり
シビックセダンのリヤまわり


フロントシートは見た目よりも幅方向に余裕がありサイズも充分だが、座面前端の落とし込みが緩やかで膝裏のサポートが弱いのは改善が必要だろう。

シビックハッチバックのリヤまわり

シビックセダンのリヤまわり

そして、好き嫌いが明確に分かれるエクステリアは、極力要素を減らしシンプルにした中で美しく存在感のあるフォルムを形成したデザインを最上とする筆者にとって、セダンがギリギリ許容範囲で、ハッチバックは完全にアウト、というのが正直な所。だが、分かりやすく力強さが表現されたハッチバックを「格好良い」と評する男性の心理は、筆者にも理解できる。

渋滞追従機能付きACCを備えたホンダセンシングの完成度は? そしてCVT車のベストは?

フロントガラス上部中央に装着される「ホンダセンシング」の単眼カメラ
フロントバンパー左下に装着される「ホンダセンシング」のミリ波レーダー


新型シビックではタイプR以外の全車に標準装備されている、ミリ波レーダーと単眼カメラによる予防安全パッケージ「ホンダセンシング」にも言及しておきたい。




ハッチバック、セダンともCVT車はACC(アダプティブクルーズコントロール)が渋滞追従機能付きとなるが、これのおかげで高速道路で渋滞に遭っても、操舵以外は発進時にアクセルペダルを軽く踏むだけで済むようになり、疲労軽減と居眠りによる事故防止に大いに役立ってくれる。




だが、驚くべきか残念と言うべきか、前走車の挙動を忠実にトレースする傾向が強い。そのため前走車の加減速が粗いと自車の加減速も粗くなり、同乗者がいれば車酔いを誘発すること請け合いだ。




通常巡航時(30~135km/hの1km/h単位で設定可能)のACCは、新型N-BOXのものと同様、違和感をほとんど感じさせない優れもの。「ホンダセンシング」は2015年1月の一部改良でオデッセイに設定されたのが最初となるが、その当時は車間を取り過ぎで加速も遅く、一方で衝突被害軽減ブレーキは反応が遅いという違和感だらけのものだったことを知る筆者にとっては隔世の感がある。




なお、事実上の同一車線自動操舵機能となっているLKAS(車線維持支援システム)は、新型N-BOXと同じくアシストが過剰で、横風が弱い時はかえって直進を維持しにくくなる傾向にある。ただし猛烈な横風に見舞われた時は、新型シビック本来の低重心・シャシー性能の高さ、優れた空力特性と相まって、盤石の直進安定性による絶大な安心感をドライバーにもたらしてくれる。




一方で大いに不満なのは、N-BOXに実装されている前方・後方誤発進抑制機能、歩行者事故低減ステアリング、先行車発進お知らせ機能が、シビックには備わっていないこと。ホンダだけではないがこの手の予防安全パッケージは車種によって実装される機能が異なり、しかもホンダの場合はN-BOXがレジェンドの次に機能が充実しているという逆転現象も起きている。




政府の「サポカー/同S」や、かつての「トヨタセーフティセンスC/同P」のように、最低限これだけの機能を備えているものにはこの呼称を適用する、というルールを厳格に定めたうえで、可能な限り実装機能を全車種で統一してもらえると、ユーザーもディーラーの営業スタッフやメカニックも理解しやすいと思うのだが。

結論:スポーティさではハッチバック、快適性ではセダン16インチ。セダン17インチは両車の良いところ取り!?

そろそろ結論に入ろう。ハッチバックCVT、セダン16インチとも、異次元とも言える走りのポテンシャルを備えており、その点においてはいずれを選んでも後悔することはない。だが、普段どのように使うかで、どちらがよりマッチするかが変わってくる。






ファミリーカーとして家族や友人を乗せることが多い人は、快適さで1ランク上回り、比較的デザインもスマートなセダン16インチを選ぶべきだ。




一方、1人乗車がほとんどで、正確無比なハンドリングとフラットライドな乗り心地をイージーに楽しみたい、あるいは大量の荷物を載せる機会が多いのであれば、よりスポーティかつ荷室のユーティリティに優れるハッチバックCVTの方が良いだろう。

ホンダ・シビックセダン17インチタイヤ装着車

しかしながら、セダンには本革&パワーシートとのセットオプション(232,200円)で、215/50R17 91Vタイヤ&ノイズリデューシングアルミホイールが設定されている。こちらのタイヤ銘柄はミシュラン・プライマシー3よりスポーティな性格のブリヂストン・トランザER33で、さらに液封コンプライアンスブッシュがリヤサスペンションにも装着されるようになる。




まだ実際には試乗していないため断言はできないが、これがハッチバックCVTとセダン16インチの良いところ取りをした走りを持つ可能性は高い。もし試乗する機会に恵まれれば、追ってその走りをご報告したい。




ともあれ、これほど高い走りのポテンシャルを持つCセグメント車が、ハッチバックで2,800,440円、セダンで2,650,320円から購入できるという事実は驚愕に値する。“永遠のベンチマーク”フォルクスワーゲン・ゴルフが君臨するCセグメントにおいて、それ以外の選択肢が日本から、マツダに続いてホンダからも現れたことを、心から歓迎する。

【Specifications】


<ホンダ・シビックハッチバック 本革&パワーシート装着車(FF・CVT)>


全長×全幅×全高:4520×1800×1435mm ホイールベース:2700mm 車両重量:1360kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ターボ 排気量:1496cc ボア×ストローク:73.0×89.4mm 圧縮比:10.6 最高出力:134kW(182ps)/6000rpm 最大トルク:220Nm(22.4kgm)/1700-5500rpm JC08モード燃費:18.0km/L 車両価格:3,011,040円




<ホンダ・シビックセダン 16インチタイヤ装着車(FF・CVT)>


全長×全幅×全高:4650×1800×1415mm ホイールベース:2700mm 車両重量:1300kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ターボ 排気量:1496cc ボア×ストローク:73.0×89.4mm 圧縮比:10.6 最高出力:127kW(173ps)/6000rpm 最大トルク:220Nm(22.4kgm)/1700-5500rpm JC08モード燃費:19.4km/L 車両価格:2,650,320円
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.