みなさんは移動図書館を利用したことはありますか?
移動図書館とは、改造したバス、トラック、バンなどに本を搭載して、図書館の利用が難しいエリアに出張し、閲覧や貸し出しを行う「はたらくクルマ」の一種です。広義ではクルマに限らず、かつて瀬戸内海でも活躍し、現在でもスウェーデンなどで稼働を続ける「図書館船」、沖縄などの飛行機を活用した「空飛ぶ図書館」、スイスなどで重要な役割を果たした「鉄道図書館」、果てはケニアの「ラクダ図書館」まで、様々な形態で人々に図書館サービスを提供しています。
移動図書館は、現在のドイツで「重要なインフラのひとつ」とされ、進行形で整備の充実がはかられています。今回は、ドイツの首都ベルリンの移動図書館事情について詳しくレポートします。
平日は毎日運行
移動図書館はドイツ語でFahrbibliothek(ファービブリオテーク)といいます。もっと単純にBücherbus(ビューヒャーブス)、「本のバス」と呼ばれることもありますね。
移動図書館の歴史は古く、その起源は19世紀中頃と言われていますが、はっきりとはしていません。ドイツにおいては1929年にドレスデンで始まったとされており、1960年代半ばには最盛期を迎えました。1990年代以降は数を減少しつつあるも、依然として重要なインフラのひとつとの認識は変わらず、古くなった車両の刷新などが積極的に行われています
ドイツの首都ベルリンは12の区に分けられ、それぞれにStadtbibliothek(シュタットビブリオテーク)、つまり区立図書館が存在します。そして、約半数にあたる5つの区が、それぞれ独自の移動図書館を所有・運用しています。例えばシュテークリッツ・ツェーレンドルフ区の場合、2台の移動図書館を保有し、28箇所の停留所で常時借りられるように整備しています。
常時、と書いたのには理由があります。日本に存在する移動図書館は、月2回の運行だったり、週に1回の運行だったりと、稼働時間に開きがあることも珍しくはありません。ところがベルリンの移動図書館の場合は、どのバスも月曜日から金曜日まで、平日朝9時から夜19時までの間「街のどこか」で必ず稼働しています。この活動頻度の高さも、ベルリンの移動図書館の特徴と言えるでしょう。