8月に入り夏休みもいよいよ本番。旅行やレジャー などで家をあける機会も増えますね。なにかと慌ただしい時でも、ストレスなく実践できる重曹生活。前回は重曹をシンプルに取り入れる方法をご紹介しました。今回は、重曹にプラスしてベストパートナーであるビネガーとともに、毎日の生活シーンに欠かせなくなる便利な活用術をご紹介します。
自然の原理を生活に取り入れる
海や川、温泉やわき水など、自然のよい水には重曹は溶けていて、生きものが出す汚れをきれいにしています。重曹を掃除や洗濯、お風呂に使うと、私たち人間が出した汚れを中和して分解し、その先の排水パイプや川もきれいにして海に戻っていくのです。環境に対して害のあるものを出さない生活は、ちょっと気分がいいものですね。
重曹でお掃除、ビネガーでリンス(ふき取り)が基本の使い方。また、汚れがひどい場合は石けんと組み合わせて使うと効果的です。重曹とビネガーの特徴を知って、かしこく役立てましょう!
「重曹」の使い方と特徴とは?
重曹は、海や地中の鉱床、人間をはじめ生物の体のなかにも存在する天然ミネラル。化学名を「炭酸水素ナトリウム」といい、食塩と同じナトリウム化合物のひとつです。
私たちの体のバランスを整えたり、地球が安定した状態を保つための大きな助けになっている重曹。一般的に広く使用されるようなったのは1830年代と比較的最近で、今なお新しい利用方法が次々と発見され広まっている「魔法の粉」なのです。
重曹の基本的な使い方をおさらいしましょう。
重曹を粉のまま直接ふりかける方法と、水に溶かしてスプレーボトルに入れて「重曹水(カップ1杯の水に小さじ2〜3杯が目安)」として使う方法がメイン。がんこな汚れには、水を加えて「重曹ペースト」にして汚れに塗って使います。
◆「重曹」の5つの特徴と活用法
1.おだやかな研磨作用
塩よりやわらかい結晶で、とてもソフトなクレンザーのような研磨作用をもっています。プラスチックのようなやわらかいものでも表面を傷つけずに汚れだけを取り除いてくれます。
【活用法】茶渋や鍋のこげつき、ガスコンロ、シンクの汚れに重曹水をスプレー。その後、ビネガー水でふきとる。
2.弱アルカリの中和作用
水に溶けると弱アルカリ性に安定する性質をもつため、ほとんどの汚れ(酸性物質)を中和します。そのため汚れは簡単にふき取れる状態になります。
【活用法】換気扇の油汚れを力を入れずに落とす。汚れがひどい時はペーストを塗る。食器や衣類を重曹水に浸けておくと、汚れと臭いを中和する。
3.おだやかな軟水化(キレート)作用
水のなかの金属イオンを封じる「キレート」というはたらきがあります。キレートは、水をやわらかくして「超軟水」の状態に近づけてくれます。
【活用法】お風呂に入浴剤として入れると水がやわらかくなる。出汁をひく時やお茶やコーヒーを入れる水にプラスすると美味しくなる。
4.広い消臭・吸湿作用
湿気を取り除き、悪臭を消すはたらきがあります。腐敗臭や体臭など、ほとんどの悪臭は酸性なので臭いを中和分解します。
【活用法】トイレ、下駄箱、冷蔵庫、クローゼットに、消臭吸湿剤として広口の瓶などに入れておく。
5.自然の発砲・膨張作用
重曹と酸が中和すると、水と二酸化炭素が発生します。二酸化炭素の細かい泡を利用してパンを膨らませたりします。また、その気泡が弾ける時の超音波を利用して、人の手の届かないところの汚れを浮かせることができます。
【活用法】重曹とビネガーで排水口の奥や洗濯機の裏などの掃除をする。
「ビネガー」の使い方と特徴とは?
ビネガーとは、お酢やクエン酸のこと。ビネガーの酸味は、水素イオンを含みます。水素イオンは、水を酸性にし、酸性の水の雑菌が増えるのを防いだり、ものを溶かしたり、はがしたりするはたらきをもつのです。
ビネガーは、水で2倍に薄めて「ビネガー水」としてスプレーボトルに入れて使用します。排水口やがんこな水アカなどには原液のまま使います。主な作用を知って、さまざまな用途に活用してみましょう。
◆「ビネガー」の5つの特徴と活用法
1.浸透・剥離・溶解作用
ビネガーに含まれる水素イオンが、物質に素早く浸透したり、はがしたり、溶かしたりする力を発揮します。手軽なナチュラルクリーナーとして活躍します。
【活用法】水アカ、トイレの黄ばみなど結晶性のがんこな汚れに、濃いめのビネガー水をしみこませて磨き洗いする。浴室の水アカ、電気ポットの水アカを落とす。
2.抗菌作用
微生物の繁殖をおさえてそれ以上に増えないようにする「静菌」というはたらきがあり、衛生状態を改善することができます。
【活用法】保存食品の入っているビンや冷蔵庫内を拭く。ビネガー水を吹きかけて床の拭き掃除をする。
3.消臭作用
水素イオンのはたらきで、トイレのアンモニア臭、魚の生臭いにおい、タバコの副流煙といったアルカリ性の悪臭を中和します。
【活用法】魚を切った後のまな板や包丁は、きれいに洗った後にビネガー水をスプレーする。トイレや部屋の消臭にビネガー水をスプレーする。
4.リンス作用
髪やウール、絹などの動物性繊維のキューティクルを引きしめるはたらきはあります。
【活用法】洗濯の仕上げにリンス剤として使用する。石けん洗顔やシャンプーの後のお手入れに。
5.還元作用
金属類のサビやくもりといった酸化物の汚れをとることができます。この作用は、私たちの身体のなかのサビ(酸化物)も還元し、弱アルカリに保つはたらきをしてくれます。
【活用法】金属の鍋(銅製など)、包丁、シンク、カトラリーなどのくすみ、黒ずみをきれいにする。切ったフルーツや野菜をビネガー水に浸ける。疲労回復にクエン酸水や梅干しを食べる。
汚れや臭いには「酸性」と「アルカリ性」のものがあります。
酸性の汚れの代表は、油(脂)。食品や皮脂など、一般的な汚れの全般が該当します。臭いでは、汗、靴や枕、吐いたもの、生ゴミなど。これにはアルカリ性の重曹が中和を行い威力を発揮します。一方、アルカリ性の汚れには、反対の性質をもつ酸性のビネガーが対応。アルカリ性の汚れは、水アカ、石けんカス、尿石など。臭いは魚の生臭さ、納豆、タバコの煙などがあります。
重曹とビネガーの特徴、さらに汚れや臭いの性質を知れば、どんな状況にも瞬時に対応できるように。汚れを発見したら、シュッとひと吹き!重曹とビネガーを活用して、クリーンで快適な夏を過ごしましょう。
参考文献
岩尾明子『重曹生活のススメ』飛鳥新社 2004