
春夏通じて53度の甲子園出場を誇る広陵(広島)が10日、第107回全国高校野球選手権大会(甲子園)の2回戦以降の出場辞退を発表した。大会直前に、1月に起きた野球部内の暴力事案がSNS上で公にされ、新たな事案もあったと広まった。同校への誹謗(ひぼう)中傷にまで発展。堀正和校長がこの日、大会本部に出場辞退を申し入れ、了承された。代表校が甲子園期間中に不祥事によって出場を辞退するのは高校野球史上初。中井哲之監督(63)は、同校による調査期間中は指導から外れる。
◇ ◇ ◇
大会直前からSNS上で拡散された広陵の暴力事案。初戦を突破しながら、結果的には甲子園で春夏通じて初となる大会中の不祥事による出場辞退となった。初動対応の重要性とSNSのあり方を考えさせられる一件となった。
暴力行為は決して許されない。今回は被害生徒が転校する事態を招いており、学校として初動対応に誤りはなかったか。堀正和校長は「1つ1つの事象を両者が納得して終える形を取ることが何より最優先。そこを校長として深く反省をしております。職員に指導できなかったことは、校長としての責任」と謝罪。被害生徒のケアが不十分だったと指摘されても仕方ない。学校、部活動関係なく、全国の教育者への教訓にしないといけない。
もう1つは、SNSのあり方だ。今年3月の審議委員会により、日本高野連から同校野球部への厳重注意、加害部員には1カ月の対外試合出場禁止の指導がなされた。学校は、被害生徒の保護者からの要望に応じて今年6月に第三者委員会を設置して調査中と公表。それでも、SNS上での広がりは収まらなかった。
SNSは匿名性が高く、実話なのかフェイクニュースなのか、見分けがつきにくい。被害者側の訴えと学校側の認識に違いがある以上、まずは本当に起きたことは何だったのかを明確にする必要がある。第三者による調査結果が待たれる。それまでは、臆測での言動は慎むべき。暴力行為が許されないのと同様、生徒への誹謗(ひぼう)中傷や寮への爆破予告は論外だ。
まず、部活動における暴力行為をなくすこと。起きてしまった後は被害者のケアとともに、再発防止に努めること。そして、SNSのあり方。前代未聞の出場辞退は多くの課題を突きつけた。【アマチュア野球キャップ=林亮佑】