
<全日本大学野球選手権:東北福祉大8-3西南学院大>◇13日◇準々決勝◇神宮
寝不足もお構いなし。東北福祉大(仙台6大学)が、3本塁打含む、計11安打で、西南学院大(九州6大学)を8-3で退け、7年ぶりの4強入りを果たした。2回、新保茉良内野手(4年=瀬戸内)の先制2ランが打線の口火を切った。前夜には東日本国際大(南東北)との2回戦を戦い、終了は午後10時16分。この日は正午過ぎに試合開始と、19時間あまりで2試合をこなした。
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照明に照らされた神宮での歓喜から、16時間35分後の午後2時51分。日の下で再び4強入りを喜んだ。前日の2回戦では、試合開始が3時間以上も押し、終了は午後10時16分。帰宿後、選手らは洗濯などに追われ、睡眠時間は5時間程度だった。それでも、試合前の打撃練習は欠かさなかった。先制2ランの新保は「『眠い』と言っている場合じゃない」とひたすらバットを振った。これが実を結んだ。
新保は挫折を乗り越え、この時を迎えていた。「3年春までは、野球とまともに付き合って来なかったです」と話す。その理由は高すぎる壁にあった。野球を始めた頃から遊撃手一筋。だが、昨年までのレギュラーは、ドラフト候補にも名を連ねた大阪ガス・島袋皓平がいた。「島袋さんのレベルの高さを超えられるかと言ったら、そうではないと思いました」と無力さに打ちひしがれていた。「腐りかけていて、練習に出なかったり、途中で帰ったりしていてました」。2年時には退部も考えた。
だが、それを変えたのは弟の存在だった。3年春、弟玖和がライバル仙台大に入学し、すぐさまレギュラーを取った。「自分もやらなあかんな」と茉良。さらに、同春は仙台大がリーグ優勝し、一足先に弟が全国デビューを果たした。「正直、悔しさもありました」と吐露。それが、茉良の闘志に火をつけた。
最後の春。レギュラーをつかみ、仙台大との優勝を懸けた最終戦では、自らのバットで決勝点を決めた。そして、この試合では弟も成し遂げられなかった4強入りと、本塁打も放った。「周りに助けられた3年間でした」。これまでの恩は「日本一」に導くことで返すつもりだ。【木村有優】
○…大森幹大投手(4年=東海大相模)が5回まで無安打無失点で全国初先発デビューを飾った。6回に四球と安打を許して降板し、5回0/3を1失点。睡眠時間4時間半のハンデを乗り越えた。普段は中継ぎがメイン。「長いイニングはあまり投げませんが、今日はとりあえず3回は全力でいこうと思いました」。準決勝の相手は3連覇を狙う青学大。「いつでも投げられるように、しっかりと準備をして臨みたいです」と意気込んだ。