
<西武7-2日本ハム>◇13日◇エスコンフィールド
6年前の春、花咲徳栄(埼玉)の主砲・野村佑希選手(3年)は「大きいし速いし、すごい投手です」と認めていた。
同県のライバル校でもある浦和学院・渡辺勇太朗投手(3年)のことだ。
6年後、プロ野球の舞台で対戦を重ねるようになってきた。西武渡辺、日本ハム野村として。
この日、初回の第1打席は内角直球で詰まらせ、一飛に封じた。開幕からここまで、渡辺はなかなか右打者の内角を突き切れなかった。「そこをちょっと、練習してきたので」。1週間でしっかり修正した。
そして3点リードの3回裏、連打で2死一、三塁。再び野村を迎えた。本塁打だけは避けなければならない場面だ。
野村の内角さばきのうまさは、もちろん高校時代から「知っています」という渡辺。そんな強打者に対し、古賀悠斗捕手(25)のリードも基本は外だ。
カットボール、スライダー、カットボール、直球…と球種を変えながら投げていく。3球粘られ、1球ボール球で、再び2球ファウル。ここまで内角はない。
着地点のイメージは。古賀悠は振り返る。
「三振が欲しかったところでした。でも結果的にワンヒットで1点はしょうがない、と割り切りもしてました」
古賀悠がみるに「たぶん調子良くないなりに粘って投げていた」という渡辺も、振り返る。
「フォークの手もあったんです。でも今日の感じだと、あまり落ちずに半速球で引っかかってホームランがイヤで」
かといって、外一辺倒ではいつかやられる。ここでようやく内角を使う。7球目、8球目と内角へ。野村を苦しい体勢になりながらも、なんとかファウルにする。ライバル対決はどんどん白熱し、球場のボルテージも上がる。
9球目は外へのスライダー。ここもバットに当ててくる。5球連続ファウル。「あっちも相当集中してましたね」と言う渡辺も、そろそろ決めたかったであろう10球目だ。
バッテリーが選んだのは外角直球。渡辺は「あそこが一番、事故が少ないので」と決めた。投げた。やや真ん中に入り、野村が捉えた。今度はフェアゾーン。適時打になり、1点を返された。普段クールなことも多い野村は、一塁を回って派手に感情を示した。
最後は打たれた。でも、プロの高レベルのぶつかり合いを展開した。1勝目を手にできたこともあってか、渡辺は「僕も楽しかったです」と率直な思いを口にした。
その上で「今日は本当に古賀さんにうまく、ボールを生かしてリードしてもらいました」と感謝し、その古賀悠も「今日は僕じゃないですよ。(渡辺)勇太朗に感謝してます」と返す。
西武が日本ハムに開幕3連敗を喫した後、今度は2勝1敗でやり返した。渡辺対野村も今季、ここまで5打数2安打。暑い埼玉で青春した2人が、これからも熱く18・44メートルをはさむ。【金子真仁】