
<ソフトバンク11-1西武>◇6日◇みずほペイペイドーム
西武は敵地でのソフトバンク戦3連勝とはいかず、大敗した。
開幕して7試合が終わった。2勝5敗とはいえ、まだシーズン序盤も序盤。西口文也監督(52)の受け答えもいつも通りひょうひょうと穏やかながら、1問だけ強めの口調になった。
「試しません。はい」
言い切った。1番打者を任される長谷川信哉外野手(22)はこの日、3打数無安打。打率は1割3分8厘に下がり、出塁率も2割を割ってしまった。
1番打者に他の選手を試したり、長谷川選手に他の打順を試したりは-。
そんな趣旨の問いかけに「試しません」と断言し、見え方をこう口にした。いつも通り、穏やかに。
「いろいろ試行錯誤しながら、打撃コーチとも話しながらやっているので。今後のことを考えるとね、我慢しないといけない」
尋ねてもいないのに「あと2試合、我慢します」と続け「ウソよ」と笑った。「いつまで我慢するか分からんけど、ある程度は我慢する」と締めた。
監督の言葉を、30分後にロッカールームから出てきた長谷川に伝えた。
「秋からずっとやってきて、思い通りにならないことも多々あるんですけど、やっぱりそう言ってもらってるんで」
言葉尻から、指揮官から直接の言葉があったことも感じさせる。
オープン戦からいい勢いで来て、1番打者の座を勝ち取った。今は迷い、なのだろうか。
「迷いはないです」
そう言い、続ける。
「迷いはないですけど、(渡部)聖弥も(西川)愛也さんも打ってるので、焦りというのはあります」
外野手がなかなか固まらなかったチームで、若手3人が結果を残した上で抜てきされた。
一方でフルシーズンでのレギュラーの座は確約されていない。ファームでは岸潤一郎外野手(27)が好調で、蛭間拓哉外野手(24)の上昇傾向を口にするチーム関係者もいる。
これが競争下のチームの良さであり、当事者たちにはプレッシャーがかかる一面でもある。長谷川も「しっかり結果出さないと、というのはあります」と不安を口にしたことがある。
焦りは確かに心のどこかにあるから「打ち急いでいるかな、というのは最近あります」と振り返る。
ただペナントレースはもう止まらない。止まれない。練習だけに集中できるキャンプは秋までない。
「基本的なところはぶらさずに、結果が出るまでやり続けることをしていきたいと思います」
西口監督の「我慢する」は、長谷川らそういった若手たちの重圧を減らすための“発信”でもあるのだろうか。
スマホの野球ゲームではない。基礎能力は簡単にBからAに上がらない。人間がやることだから、成果までには「我慢」が必要だ。考え方やチーム環境によって、我慢できる指導者も、そうでない指導者に分かれる。
再建を託された西口監督は「我慢」を選んだ。それが過渡期にあるライオンズの、明るい未来を信じる戦い方だ。【金子真仁】