
<ソフトバンク11-1西武>◇6日◇みずほペイペイドーム
待望の「どすこい弾」で、みずほペイペイドーム6試合目の初勝利だ。
ソフトバンク山川穂高内野手(33)が、初回に西武先発の渡辺から左翼席中段に運ぶ先制2ラン。開幕8試合30打席目の1号を含む3安打5打点と4番が“開花”し、今季最多の12安打&11得点の快勝を呼び込んだ。新加入した上沢直之投手(31)も6回無失点で移籍2戦目で初勝利を挙げ、投打がっちりで連敗も3でストップ。昨季のリーグ王者が最下位からの逆襲に転じる。
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チームNO・1のヘッドスピードを誇る主砲が、思いっきりバットをかち上げた。初回2死一塁。高めに入ってきた西武渡辺のカーブ。山川に迷いはなかった。打球は速度181キロの弾丸弾が左翼席中段に吸い込まれていった。「自分でも待ちに待ったホームラン。ヒットでは乗っていけないんで」。一塁側ベンチ前で今季初の「どすこいポーズ」を決めるとみずほペイペイドームは沸いた。
新背番号「5」での初アーチ。開幕8試合30打席目で飛び出した先制の豪快2ランは、目覚めの一振りでもあった。3回2死二、三塁の第2打席は143キロのカットボールを右翼に運ぶフェンス直撃の2点適時打。5回1死一、三塁の第3打席は左翼越えに適時二塁打。1号弾を含め広角に3本の快打をマークして計5打点。主砲のバットに呼応して打線も今季チーム最多となる12安打&11得点。連敗も3で止まった。「打撃は自分でもいいと思います。左翼、右翼、左翼と強い打球があっちこっちに行くのはいい時。そうじゃなかったらゴロになっているので」。主砲は独特の言い回しで復調を確信していた。
試合前までの打率は6分9厘。焦りはなかったが「4番」としての責任感が体と気持ちを突き動かした。開幕から波に乗れないチーム状況は、自身の打撃と歩調を合わせていた。前日5日の試合後には、珍しく試合用バットを自宅に持ち帰って振った。「まるで昨日までと世界が違いますね。(本塁打が出ると)気持ちも技術的な余裕も違います」と笑顔で快感に浸った。
納得いくまでとことん突き詰める。春季キャンプ中、訪れた飲食店でサインを頼まれた。書道8段の腕前。差し出された色紙に筆ペンで名前とともに「初志貫徹」の文字を筆圧強く書き込んだが、バランスが気にくわない。約10分ほどかけて色紙3枚ほど書き直し。「今度来たときにまた書きます」と1枚を差しだし、店主に頭を下げた。
豪快なキャラに見え、気持ちは繊細。それだけに、「打てない4番」として2度の3連敗に気をもんでいたはずだ。文字通り、暗いムードを吹き飛ばす1発快勝となった。【佐竹英治】