
王者に試練が訪れた。ソフトバンクは3月31日、近藤健介外野手(31)の出場選手登録を抹消した。シーズン前に訴えていた腰の張りが再発したとみられる。代わって、2軍で打率3割7分の柳町達外野手(27)が緊急昇格。35年ぶりの開幕3連敗とチームが苦しむ中で、昨季のパ・リーグ首位打者とMVPを獲得した主軸がまさかの離脱となった。開幕直後に「泣きっ面に蜂」状態も、チーム一丸で暗雲を振り払う。
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ソフトバンクに衝撃が走った。打線の中核だった近藤が登録抹消。腰の張りを訴えてオープン戦の最終3試合を欠場したが、懸命な治療の末に開幕には間に合った。シーズン直前には「143試合に出られるように。その中でできる範囲でやっていきたい」と意気込み、3月29日ロッテ戦では3安打。好調と思われたが一転、患部の痛みが再発した可能性が高い。同30日の同戦では、9回に中前打を放った後に代走が送られていた。
「痛い」の言葉では足りない。近藤は22年オフに海外FA権を行使してソフトバンク入り。移籍1年目の23年は26本塁打、87打点で本塁打王と打点王の2冠を獲得。移籍2年目の24年は打率3割1分4厘、出塁率4割3分9厘で首位打者と最高出塁率賞に輝き、同時にリーグMVPに選出されるなど獅子奮迅の活躍を見せてきた。
今季、チームは90年以来35年ぶりの開幕3連敗を喫した。近藤不在は「泣きっ面に蜂」状態だが、レギュラーシーズンは進んでいく。小久保監督は故障者が出るたびに「いるメンバーで戦うしかない」と話してきた。近藤の抹消により、柳町が緊急昇格する。柳町は開幕2軍スタートもウエスタン・リーグでは6試合で打率3割7分、1本塁打、6打点と絶好調。直近では3月30日の同リーグオリックス戦で5打数3安打だった。「必ず1軍に帰ってきます」と意気込んでいた男は、この日福岡空港から空路札幌入りした。
昨季は柳田が5月の交流戦で右太もも裏を痛め、長期離脱した。代役の佐藤直や柳町、正木、笹川ら若手のカバーが実り4年ぶりのリーグ優勝。近藤の不在もチーム一丸で乗り切るしかない。4月1日からは開幕3連勝と勢いに乗る日本ハムとの敵地2連戦。連覇を目指す王者にとっては暗雲だが、逆境でこそ真のチーム力が試される。小久保ホークスが、北の大地で今季初勝利を記す。【只松憲】