
<センバツ高校野球:智弁和歌山5-0浦和実>◇28日◇準決勝
センバツにその名を刻んで、浦和実(埼玉)・石戸颯汰投手(3年)の春は終わった。9回2死二塁の打席。代打を送られたが、投げては9回5失点完投。「智弁和歌山のような打線を抑えられるようになって、また帰ってきたいです」。今大会最大の旋風を巻き起こした初陣校のエースは、もう次を見ていた。
1回戦で昨夏甲子園8強の滋賀学園を完封し、ここまで3試合、通算18イニングを無失点で投げ抜いてきた左腕に異変が起きた。「試合が始まる前に、右脇腹に張りがあると部長から聞きました」と辻川正彦監督(59)は明かした。本来の投球が望めないことも覚悟の上で「行けるところまで石戸で行こう」と決めた。
エースも応えた。初回に2点を失い無失点イニングは途切れても、チーム打率3割7分の強力打線にビッグイニングを許さなかった。右足をあごの高さまで上げる独特の投球フォームで最後まで投げ抜き、登板全4試合、計347球で奪った78アウトのうち半数以上の41個はフライアウトだった。
総監督時代も含めて35年以上も浦和実の指導に携わる辻川監督が、現役生徒や卒業生、教員ら関わる人たちに「学校に誇りを持ってもらいたい。その1つの手段として野球が強くなれば」と思いを込めて育てたチームだ。進撃の象徴が、石戸だった。浦和学院や花咲徳栄らライバル校にマークされる夏が来る。「対策はされると思う。その対策を上回る成長で強豪を倒していきたい」と、夏の帰還を目指す。【堀まどか】