
<センバツ高校野球:早実8-2高松商>◇22日◇1回戦
早実(東京)が高松商(香川)との第1回大会(1924年)以来、101年ぶりの決勝カード再現を「三度目の正直」で制した。
投打で勝利に貢献した主将の中村心大投手(3年)は「このカードで再戦ができて、結果的にリベンジという形で勝ててうれしいです。自分たちも初戦からいい相手と試合ができました」と笑みをこぼした。
101年の歴史に背中を押された。学校関係者約200人を含め、多くの応援が一塁側アルプスを埋め尽くした。中村は「応援がうれしかったので全力で腕を振れた。割と飛ばしました」と初回から全力投球。ゆったりと力感のないフォームから糸をひくような伸びのある真っすぐを投げ込んだ。
新たな武器も披露した。今冬で「精度が増した」というフォークとカットボール。そして、開会式で隣に並んだ横浜のエース・奥村頼人投手(3年)から教わったというチェンジアップをぶっつけ本番で多投。緩急をつけた投球で打ち取った。
4回には自己最速を1キロ更新する146キロも記録。「(スピード表示を)見ていました。うれしかったんですが、まだ出ると思っているので」と淡々と振り返った。打っては甘い球を逃さず、4打数4安打2打点。エースで主将。頼もしくチームを勝利に導いた。
初戦の相手が高松商に決まってから、ミーティングで和泉実監督(62)から「プレッシャーに思うことはない。101年前の試合で負けているんだ。ウチは挑戦者のつもりで挑もう」と言葉をかけられたという。中村も「自分が完投するという思いは全くなかった。1イニング1イニングをしっかり抑えるように心がけた」と目の前の1球に集中し、結果につなげた。
スタンドでは早実OBのソフトバンク王貞治球団会長兼特別チームアドバイザーが観戦。中村は「憧れと言うには本当に失礼なくらい偉大な先輩。とにかく(早大の)恥にならないプレーをしたい」と話した一方で、「受け継がれてきた伝統は自分たちもしっかり守らないといけない。その意識は持ってました」と主将としての自覚ものぞかせた。
春101年ぶりとなった伝統校対決。この試合もまたセンバツの歴史の1ページに刻まれるはずだ。【保坂淑子】
◆中村心大(なかむら・こうだい)2007年(平19)7月17日生まれ、京都市出身。小学時代に西陣中央スポーツ少年団で野球を始め、中学時代は京都ベアーズ。目標とする選手は中日ドラフト1位金丸、カブス今永。趣味はスポーツ観戦。好きな言葉は竜驤虎視(りゅうじょうこし)。177センチ、83キロ。左投げ左打ち。
◆早実-高松商 過去は1924年(大13)春と翌25年夏、ともに決勝で対戦し高松商が連勝していた。24年春は名古屋市の山本球場で行われたセンバツ第1回大会。高松商は4回に3番村川克己の2試合連続本塁打で先制し、松本善高が7安打完封勝ち。25年夏は宮武三郎(元阪急)がエースで4番を打ち、2回に5点を挙げ逃げ切った。