
<センバツ高校野球:早実8-2高松商>◇22日◇1回戦
王先輩、勝ったよ!早実(東京)が101年ぶりのリベンジだ。1924年(大13)第1回大会決勝以来となる高松商(香川)との再戦で、8-2と圧勝した。春夏通算3度目の対戦で初勝利。応援に駆けつけたOBのソフトバンク王貞治球団会長兼特別チームアドバイザー(84)が見守る中、主将のエース中村心大(こうだい)が8回1失点に抑え、打っては4安打3打点で勝利へ貢献した。
◇ ◇ ◇
101年の歴史に背中を押された。高松商との対戦が決まった直後のミーティングで、和泉実監督(62)から言われた言葉が中村の心に火を付けた。「プレッシャーに思うことはない。101年前の試合で負けているんだ。ウチは挑戦者のつもりで挑もう」。抽選会で自らが引き当てたカード。覚悟を決めた。
初回から全力で腕を振った。「割と飛ばしました」。ゆったりと力感のないフォームから伸びのある真っすぐを投げ込んだ。新たな武器も披露した。今冬で「精度を増した」というフォークと、カットボール。そして、開会式で隣に並ぶ横浜のエース奥村頼人投手(3年)から教わったチェンジアップをぶっつけ本番で披露し、緩急をつけた。4回には自己最速を1キロ更新する146キロも記録。「(スピード表示を)見ていました。うれしかったんですが、まだ出ると思っているので」。打っては甘い球を逃さず、4打数4安打3打点。エースで主将。力強く勝利に導いた。
中村と香川県は深い縁がある。母由佳さんは、香川県小豆島出身。1年を通じ温暖な気候に恵まれたのどかな島で、幼少時は毎年家族で訪れるのが楽しみだった。海や山を飛び回り、母の実家近くで野球の練習もした。今も香川県の名物「うどん」は大好物。「小さいころから、本当によくうどんを食べていました」と由佳さん。初戦の相手が高松商に決まってからも、母特製のうどんでパワーアップした。
球場には、57年センバツでチームを優勝に導いた早実OBのソフトバンク王球団会長兼特別チームアドバイザーが応援に駆けつけていた。中村は「憧れと言うには本当に失礼なくらい偉大な先輩。とにかく(早実の)恥じないプレーをしていきたい」とし「受け継がれてきた伝統は自分たちも守らないといけない。その意識は持っています」。目標は57年以来の紫紺の大旗だ。【保坂淑子】
◆東京勢アベック勝利 二松学舎大付に次いで早実も初戦突破。センバツで東京勢2校が勝利は10年の日大三、帝京以来15年ぶり。
◆4元号春夏勝利 早実は令和のセンバツで初勝利。これで大正、昭和、平成、令和で春夏ともに勝利を挙げた。甲子園の4元号勝利は松商学園、高松商、広陵、広島商、北海、慶応もマークしているが、春夏ともに4元号勝利は広陵に次ぐ2校目。