
世界最速で2026年FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会への出場を決めた日本代表が、次に打つ手は-。連載「通過点」の(中)編は「あそこに未来がある」と、森保一監督(56)が見た景色に迫る。
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今回の最終予選で脚光を浴びたのは攻撃的3バックだった。既に最終予選進出を決めて消化試合となっていた昨年6月、W杯2次予選の敵地ミャンマー戦。センターバック(CB)に伊藤、谷口、橋岡を並べ、ウイングバック(WB)に中村と菅原を配置。5-0の大勝で手応えをつかんだ。
以後、森保監督は最終予選の全7試合で3バックを採用。両WBに三笘、堂安らを配し、攻撃の枚数を増やして日本史上最多の7戦24得点2失点。ところが、指揮官にとっては「アジアプラン」に過ぎなかった。
バーレーン戦の前日、基本的スタンスを説明した。
「アジアではボールを握る時間が多くなる。世界での戦い、より強豪と戦う時には、我々がボールを保持できる時間が短くなるという戦いの違いが出てくる」
日本が強くなり、どの国も圧倒することができれば「世界もアジアもない」。そんな理想はあれど、現実は甘くない。まだ「ワンチャン」に懸けて格上に挑む中で攻撃の枚数を1枚、減らす場面も当然出てくる。
その中で森保監督が希望を見いだした試合がある。
「あそこに未来がある」
進撃の発端となったミャンマー戦の5日後、シリア戦。3バックで入り、後半途中に188センチのDF伊藤を投入した。190センチの町田、188センチの板倉、187センチの冨安と4枚が並び立つ。全員がCBの守備力を持ち、高さも日本人離れ。世界クラスのアタッカーに対して、引いて守って5枚で固めることなく4枚でも対応できる顔ぶれだった。
アジアを卒業した今、その道も模索する。関係者によると、森保監督がW杯優勝へ描くのは3バックと、守備面を強化した4バックの併用だ。18年と22年のW杯は4枚の両サイドバックに長友、酒井宏が君臨したが、ともに16強。まだ見ぬ景色の先、ベスト8以上には「モンスター」(森保監督)が住む。本番まで1年3カ月。世界を止める陣容が必要になる。【佐藤成】
○…世界一へ新戦力の発掘も不可欠だ。W杯出場を決めたバーレーン戦の先発11人中9人が前回大会の経験者。新たな血を入れるため日本協会は、競争を促す最終予選のラスト2試合(6月)に向け、ドイツ1部マインツで全試合に出場しているMF佐野海舟や、同シュツットガルトの187センチDFチェイス・アンリ、パリ五輪で活躍したGK小久保玲央ブライアンらを招集候補に。森保監督も「W杯で(決勝まで)8試合を勝っていくために選手層を厚くしたい」と考えている。