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<AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE):川崎F2-0CCマリナーズ>◇18日◇東地区1次リーグ第8戦◇U等々力◇観衆1万1013人
川崎フロンターレの34歳ベテランGK安藤駿介が、16年5月25日のナビスコ杯・仙台戦以来、実に9年、3191日ぶりの公式戦出場を果たし、無失点で飾った。
「長かった。ほかの選手からしたら1試合かもしれないですけど、待ち望んだ瞬間だった。どんな形であれチャンスをもらえて、勝って戻ってこられたので良かった」
そう言って感慨に浸った。
試合前日に先発起用を伝えられた。この日の試合では相手の枠内シュートはゼロ。セーブをする場面はなかったが、その分、コーチングで声を張り上げて選手を動かした。
長谷部茂利監督も「リーダーシップが取れる人間。練習を見ていてもいつでもいけるという準備と、ゼロ失点で抑えられるという技術的な部分でも、いけるんじゃないかと思っていた。よくやってくれました」と称えた。
川崎Fのアカデミーで育ち、2009年にトップ昇格してプロ17年目。13年に湘南で1シーズンだけ過ごしたが、昨季まで15シーズンは川崎F。ほぼ一筋である。チョン・ソンリョンの陰に隠れ続けた。試合に出られなくても、愚直に練習に励んできた。
「僕みたいな選手はいつチームから切られてもおかしくない選手だとは思っていますけど、こうやっていろんな期待を込めてか、毎年契約をいただいている。その自分も仕事を全うできる環境にあるので、そこに甘えることなくやってこれて良かったなと思います」
なぜフロンターレにこだわり続けるのか?
「このチームが心の底から好きですし、こうやって契約をしてくれるのであれば別に僕は無理して外に行く気はないです。ここでいい競争ができれば、今回みたいにチャンスをもらって、また勝つことができたので。それも1つの僕の生きる道だと思うので。プロの世界では珍しい方だと思いますけど、こういう選手もいるよということで、また広まってくれればいいと思います」
チーム最年長で選手会長。フロンターレのお兄さんであり、お父さんだ。気遣いの人。被災地・陸前高田市でサッカー教室をする際は自らマーカーやゴールを運ぶ。「アンちゃん」と親しまれる。
「日数で3000何日という数字を言われてびっくりしたんですけど、他のチームでもなかなか出場機会をもらえていないキーパーもいると思うので、いい希望になったんじゃないかな」
サッカーを通して、さまざまな人生や生き様を知る。9年という気の遠くなるようなブランクを乗り越え、安藤が等々力劇場の主役となった。