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尿に極微量含まれる子宮頸がんウイルスタンパク質の検出に成功


子宮頸がん検診のハードルが大きく下がり、子宮頸がん撲滅の糸口に

2024年6月25日
早稲田大学

尿に極微量含まれる子宮頸がんウイルスタンパク質の検出に成功 子宮頸がん検診のハードルが大きく下がり、子宮頸がん撲滅の糸口に

詳細は早稲田大学HPをご覧ください。

発表のポイント
●日本では年間に約1.1万人が子宮頸がんにかかり、約2,900人が亡くなっています。子宮頸がんは検診とワクチンで予防できる一方で、さまざまな理由により検診受診率が向上していません。
 ● 本研究グループは、自身らが開発した超高感度タンパク質測定法(TN-cyclonTM)により、子宮頸がんの前段階の患者の尿から、最大の病因となるヒトパピローマウイルスのタンパク質を検出できることを示しました。
 ● 本成果により、子宮頸がんの初期検診ができる可能性が示され、将来的には、自身で採取した尿を医療機関や検査センターに送付すれば診断を受けられる道が拓かれました。このように、検診を受けるハードルが下がれば、子宮頸がん撲滅の糸口となると考えています。

早稲田大学教育・総合科学学術院の伊藤悦朗(いとうえつろう)教授、金沢医科大学の笹川寿之(ささがわとしゆき)教授、ドイツがん研究センターのMartin Müller教授らの研究グループは、子宮頸がんの前段階の患者の尿から、最大の病因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のタンパク質の検出に成功しました。日本では年間に約1.1万人が子宮頸がんにかかり、約2,900人が亡くなっています。子宮頸がんは性交渉を経験するほとんどの女性が感染し、がん前段階で多くは自然治癒しますが、なによりもワクチン接種と定期検診によりがん発症を予防できます。しかし若い女性にとって検診はハードルが高く、検診受診率の向上が見られていません。本研究成果により、尿を用いることで子宮頸がんの検診が受けられる可能性が示され、将来的には、自身で採取した尿を医療機関や検査センターに送付すれば検診可能となる道が拓かれました。
以上は、スイスの国際学術誌『Microorganisms』に2024年6月14日(現地時間)に掲載されました。
論文名:Quantification of HPV16 E7 Oncoproteins in Urine Specimens from Women with Cervical Intraepithelial Neoplasia
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406242627-O2-6z9p4kF1】 図1.本研究成果の概要

(1)これまでの研究で分かっていたこと
 日本では年間に約1.1万人が子宮頸がん※1にかかり、約2,900人が亡くなっています。子宮頸がんの最大病因はヒトパピローマウイルス(HPV)※2の感染であり、すなわちこのがんは性感染症です。感染機会が多いのは性体験を始めた直後です。子宮頸がんに移行する前の状態(前がん病変)※3では、多くの場合は自然治癒するため、感染した自覚がありません。また、子宮頸がんの前がん状態は検診とワクチンとで予防できることが分かっているものの、20代・30代の女性にとって、検診は、恥ずかしい、時間がない、病院に行くのが大変、性行為が監視されているようだといったさまざまな理由でハードルが高く、テレビなどを通した検診の啓蒙があっても、なかなか検診受診率の向上が見られていないのが現状です。

 子宮頸がん、または前がん状態の患者の子宮頸部細胞診では、DNAウイルスであるHPVのDNAまたはmRNAが含まれることは分かっていました。DNAやmRNAなどの核酸はPCR法の普及により簡単に高感度で測定できます。しかし、実際にウイルスが存在してもがんの悪化のために働くのはそれがタンパク質に翻訳されてからであるため、タンパク質の量的変化を調べることが望まれていました。さらには、患者の尿中にもHPV mRNAが混入していることも最近注目され始めていましたが、尿中のHPVタンパク質は極めて微量であり、ほぼその検出は不可能でした。

(2)今回の研究で実現したこと
 早稲田大学の伊藤らは、これまでに極微量のタンパク質を超高感度で簡易に測定する方法を開発してきました。これは超高感度タンパク質測定法(TN-cyclonTM)と呼ばれており(図2)※4、従来のサンドイッチELISAと酵素サイクリング法※5とを組み合わせたもので、標的タンパク質を検出するシグナルを増幅して、その結果、極微量の標的タンパク質を検出・定量しようとするものです。今回、この方法を患者尿中のタンパク質の検出に適用しました。

 尿中に存在する、標的であるHPVタンパク質は極めて微量であると予想されたため、その測定方法に磨きをかけました。具体的には、感染後がん化するリスクの高いHPV16型のE7タンパク質※6に標的を絞ったところ、市販のELISAキットと比較して、約100倍の高感度である、0.13 pg /mLという極めて高感度での検出が可能であるところまで追い込めました(図3)。すなわち、これまでに例を見ない超高感度タンパク質測定系を確立し、E7タンパク質を見逃さないレベルになっています。ちなみにHPVのE7タンパク質はHPV DNAの複製を可能にしており、がんの悪化に関与しています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406242627-O3-x2r0Q310】 図2.超高感度タンパク質測定法(TN-cyclonTM) 上部のサンドイッチELISA法と下部の酵素サイクリング法とが組み合わさっています。サンドイッチELISA法は2種類の抗体で標的タンパク質であるE7タンパク質を挟み込んで検出します。そこに基質Aを加えて、酵素Aと反応させます。これだけですと、超高感度というには感度不足です。そこで、酵素Aと反応した基質Bは、酵素サイクリング法で増幅されるために利用します。今度は酵素Bが基質Bに対して酸化還元反応繰り返し(サイクリングし)、補酵素の一つとして入れてある発色基質が発色していきます。つまり、検出するシグナルを増幅しています。この発色を吸光度測定することで、もとの標的タンパク質であるE7タンパク質を超高感度で検出することが可能となります。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406242627-O4-3U9BzI2U】 図3.HPV16 E7タンパク質の超高感度測定。検出限界は0.13 pg /mLを得ました。
ここに示されているのは検量線と呼ばれるものです。E7タンパク質を含まないときのシグナル値(これはブランク値と呼ばれます)との差をどこで認めることが出来るかを統計的に計算すると、0.13 pg/mLという検出限界が得られます。

 さて、がん化する前の前がん状態で、HPVに感染している患者を発見することが重要です。そこで前がん状態の患者(45名)に着目して尿を収集しました。子宮頸がんの状態か、前がん状態なのかは、細胞診の情報を元に決めました。さらにはDNA検査を行い、HPVの型を決めました。この型には高リスク型のHPV16が含まれており、今回の実験ではHPV16とその関連型に特に着目しています。

 このように、細胞診による細胞の形の異常とDNA検査によるHPVの型の決定を行ってから、前がん状態の患者尿からのE7タンパク質検出を試みました。興味深い結果として、細胞の形の異常と、DNA型の検出と、さらにTN-cyclonTMによるE7タンパク質の検出との3者には、きれいな相関があるわけではないことが分かりました。これは、HPVが存在するかしないか(つまりDNAの有る無し)と、子宮頸部の細胞に異形が現れるか現れないか、さらには、HPVのタンパク質の存在の有無とが、必ずしも一致しないということです。タンパク質はウイルスそのものががんを悪化させるために必要ですので、タンパク質の存在はウイルスのいわば活性度を表しています。それが発見できないということは、ウイルスが活動を休止している、すなわち潜伏感染などの発がん活性の変動を見ている、と考えています。これはとても重要で、ウイルスは存在そのものも大事ではありますが、同時にその働きを注視すべきなのです。まさにタンパク質の測定がそれを表しています。

 本研究グループの結果では、E7タンパク質の存在を、HPV16陽性で前がん状態が初期のCIN1患者の尿検体では80%で、CIN2患者の尿検体では71%で、およびCIN3患者の尿検体では38%で、確認できました。CINが上がる、すなわちがん状態に近くなると、なぜE7タンパク質が減るのかは、今後の研究課題となっています。

 またもう一つのポイントは、尿を検体として使うことで、非侵襲的※7な検診への道を拓くことも重要でした。細胞診はブラシなどで、子宮の入り口を擦って、細胞を採取し、その後、細胞の形を観察するものです。個人的な差はありますが、痛みが伴います。何よりも恥ずかしさがあります。従って、尿で検診が受けられるのであれば、女性にとって大きな助けとなります。

(3)研究の波及効果や社会的影響
 今回の検出方法の開発によって、子宮頸がんの前がん段階での診断の可能性が示されました。将来的には、自身で尿を採取し、医療機関や検査センターに送付すれば、検診を受けられる道が拓かれたと言えます。女性にとって、病院に行って医師に診てもらう検診よりも、自身で尿を採取し提出することのほうが抵抗は少なく、このように検診のハードルが下がれば、子宮頸がん撲滅の糸口となると期待しています。

(4)課題、今後の展望
 なぜHPVに感染した細胞が尿に含まれるのかは、まだ多くの謎が残されています。我々は膣口から出てきたおりものが、尿に混入するものと考えており、従って、ある確率で、尿からHPVのタンパク質が検出されない検体もあるものと考えています。

 さらには上述した通り、前がん状態ががん状態に近くなるとE7タンパク質の発見率が減ります。これはE7タンパク質の働きの観点から今後解明すべき問題点です。そのような意味でも、今回の研究では、HPV16型のE7タンパク質のみの測定を行いましたが、今後は、やはり子宮頸がんの悪化に影響を及ぼす、E6タンパク質の測定も試みる予定です。しかしながら、このE6タンパク質を測定するためには、それに対する良い抗体を作製するところから始めなければなりません。さらには、患者検体数を増やすことにも努めます。これら両方のことを、金沢医科大学の笹川寿之教授とともに進めてまいります。

(5)研究者のコメント
 子宮頸がんは、若いうちからの検診とワクチン接種で予防できます。しかし若い女性にとって、検診のハードルは非常に高く、そのハードルを下げることが切に望まれています。本研究がそのハードルの低下に一役買えると信じています。

(6)キーワード
子宮頸がん、尿による診断、ヒトパピロ-マウイルス、超高感度タンパク質測定法、検診のハードルの低下

(7)用語解説等
※1子宮頸がん
子宮頸がんは主にヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされる子宮の入り口にできるがんのことです。多くのケースで性交を始めたときから感染が始まりますが、初期状態では症状がほとんどないため、自覚症状が現れることなく進行していくという特徴があります。性交を始める前のワクチン接種、ならびに性交後の検診によって、がんを予防できます。早期に発見すれば比較的治療しやすく予後の良いがんですが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要です。
子宮頸がんは、子宮頸部異形成という前がん状態を経て進行します。多くの場合、子宮頸部異形成、子宮頸がんの初期の段階では無症状であり、体調の変化から異常に気付くことはほぼ不可能です。一方で、がんが進行すると不正出血、性交時の出血、おりものの異変や増加、下腹部痛などの症状がみられることがあります。

※2 ヒトパピローマウイルス(HPV)
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんの主原因となるウイルスです。性交渉によって性器やその周囲に感染します。ヒトパピローマウイルスはありふれたウイルスで、性生活のある人の多くが生涯に1度は感染します。ほとんどの場合、感染してもウイルスが自然に排除されますが、排除されずに感染した状態が続くと子宮頸がんになっていきます。がんの発生に大きく関わるHPVの型はハイリスク型と呼ばれ、特に16型はがんでの検出頻度が高く、注意を要する型となっています。

※3前がん状態
子宮頸がんには前がん状態が存在し、CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)と呼ばれています。CIN3の場合には治療が行われ、CIN1、CIN2の場合には、自然治癒の可能性もあるので、定期的に検査を行って進行していないことを確かめます。

※4超高感度タンパク質測定法(TN-cyclonTM法)
タンパク質を定量する最適で簡易な方法はサンドイッチELISA法です。ただし、この方法では感度が不足す る場合がしばしばあります。そこで早稲田大学の伊藤らは、サンドイッチELISA法から得られるシグナルを増幅することを考えました。この増幅に酵素サイクリング法を用いています。そして、2つの方法を組み合わせたのが超高感度タンパク質測定法(TN-cyclonTM法)です。多くのタンパク質で1 pg/mLを下回る超高感度測定に成功しています。

※5 サンドイッチELISAと酵素サイクリング法
サンドイッチELISA法は、抗体でタンパク質を挟み、酵素を介した発色シグナルを検出します。また、酵素サイクリング法は、2種類の酵素による反応を利用してシグナルそのものを増加させます。どちらもシグナルに対する感度に限界があることが課題でした。

※6 E7タンパク質
HPVにはE7ならびにE6というタンパク質が存在し、高リスク型においてがんを引き起こすがん遺伝子
として働きます。これらは異常な細胞成長を促し、通常であれば働く防御を効かなくしてしまいます。
とくにE7タンパク質は細胞周期の調節に関与します。

※7 非侵襲
身体に負担を与えないことを意味します。採血や細胞診は身体に多少なりともなんらかの負担をかけます。
しかし尿の採取であれば身体に負担をかけません。

(8)論文情報
雑誌名: Microorganisms
論文名:Quantification of HPV16 E7 Oncoproteins in Urine Specimens from Women with Cervical
Intraepithelial Neoplasia
執筆者名:Daiki Makioka牧岡大樹1、Mikio Inada稲田幹雄1、Masayuki Awano粟野雅之1、
Ema Saito齊藤絵麻1、Takuya Shinoda篠田拓弥1、Satoko Abe阿部聡子1、Teruki Yoshimura
吉村昭毅2、Martin Müllerマーティンミューラー3、Toshiyuki Sasagawa笹川寿之4、Etsuro Ito
伊藤悦朗1
1早稲田大学、2北海道医療大学、3ドイツがん研究センター、4金沢医科大学
掲載日(現地時間):2024年6月14日
掲載URL:https://www.mdpi.com/2076-2607/12/6/1205
DOI: 10.3390/microorganisms12061205

(9)研究助成(外部資金による助成を受けた研究実施の場合)
研究費名:公益財団法人 鈴木謙三記念医科学応用研究財団
研究課題名:尿の利用による非侵襲的子宮頸がん診断法の開発
研究代表者名(所属機関名):伊藤悦朗(早稲田大学)

研究費名:コパンジャパン株式会社
研究課題名:尿利用による子宮頸がんタンパク質測定
研究代表者名(所属機関名):伊藤悦朗(早稲田大学)

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