一定期間雇用保険に加入後に離職した場合には、失業保険や再就職手当を受給できる場合があります。
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雇用保険からの給付と老後の年金は調整対象になるケースがあることから、一定の習熟が求められます。
今回は雇用保険からの給付と老後の年金の調整について解説します。
雇用保険からの給付とは
雇用保険からの給付は、さまざまなライフイベントに応じて給付体系が設計されています。
一般的には、離職や出産、介護などが挙げられますが、割合的には離職が最も多いと思われます。
離職時の典型的な給付としては「失業保険」が挙げられます。
失業保険は老後の年金と調整対象ではあるものの、誤解があるのも事実です。
あくまで失業保険が老後の年金と調整対象となるのは、65歳前から受給開始となる「特別支給の老齢厚生年金」であり、65歳以降に支給される。
いわゆる本来支給の老齢厚生年金は、失業保険との調整対象ではありません。また、特別支給の老齢厚生年金は、原則として、男性であれば昭和36年4月2日後生まれ(女性であれば昭和41年4月2日以降生まれ)の方については、65歳から受給開始となるため、理論上調整がないということになります。
再就職手当との調整は?
再就職手当と老後の年金の調整については法律上規定がないため、結論としては調整される事はありません。
まず再就職手当とは失業保険を受給しながらも、早期に再就職が決まった場合にお祝い金と言う支給趣旨で支給されることがあります。
制度上は一定期間以上失業保険の給付日数が残っていた場合に支給対象となります。
理屈としては、ある程度早期に再就職した場合、その後は失業保険は受給できないこととなります。
そのためにあえて失業保険を受給し、給付が終わってから再就職をするとなると、制度があるが故に、再就職活動の足枷となることから、より早期に再就職した場合には、再就職手当の支給対象となるという制度設計になっています。
少子高齢化社会によって、働き盛りとなる現役世代の労働市場への参加は国の喫緊の課題でもあります。
他の給付との調整
育児休業給付金や介護休業給付金も老後の年金との調整規定はありません。
よって同じ時期に受給をしたとしても、年金がカットされるという事はありません。
理論上、育児休業給付金であっても、養子縁組をした場合などは、高年齢期であったとしても、受給対象となることがあり得るため、おさえておきたい論点ではあります。
再就職手当の支給要件等
再就職手当は、一定以上、失業保険の残日数があった場合でも、必ず支給されると言う事はありません。
例えば、離職前の会社に再就職したような場合は必ずしも再就職にあたっての労力を要したとは言えず、支給対象となりません。
他方、非正規雇用であったとしても1年を超えて雇用されることが確実な場合対象となります。
ただし、再就職手当の受給よりもより長期的な視点を持ち、ある程度今後、自身が継続的に労務提供をする企業を見定める視点も必要でしょう。
再就職手当だけに目が行き、焦って再就職先を決めることがないよう注意が必要である事は言うまでもありません。
再就職手当を受給後、早期に退職となった場合でも、再就職手当の返金は必要ありません。
また、再就職手当を受給した場合には、あくまで失業保険の残日数を再就職手当として受給することになるため、これまで受給していた失業保険は当然受給することはできません。
併給調整にも注意
雇用保険と年金との調整は60から65歳の間で起こり得ることであり、その時期に退職し、かつ年金の受給を予定している場合には、併給調整が発生するため、注意が必要です。
また、雇用保険からの給付は、年金と調整となる手当と調整とはならない手当がある点もおさえておきましょう。