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賃貸併用住宅とは、1つの建物に自宅部分と賃貸部分を併せ持つ住宅のことで、一般的な住宅の大きさに比べて土地が大きい場合など、土地活用の一環として近年注目を集めています。賃貸部分には居住用の住宅だけでなく、店舗やオフィスも含みます。
本コラムでは、賃貸併用住宅の概要や、メリット・デメリットを詳しく紹介します。賃貸併用住宅は、通常の賃貸物件にはないリスク・デメリットも多いため、しっかりと基本的な知識を確認しましょう。
賃貸併用住宅とは
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賃貸併用住宅とは、1つの建物に自宅部分と賃貸部分を併せ持つ住宅のことです。例えば、1階部分を自宅、2階と3階を賃貸住宅とするような物件です。
自宅と賃貸住宅をひとつの建物とすることで、土地を有効的に活用することができます。また、賃貸併用物件には住宅ローンや税制面でのメリットも多く、近年では不動産投資の選択肢として人気が高まっています。
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賃貸併用住宅のメリット
ここでは、賃貸併用住宅のメリットを5つ紹介します。賃貸併用住宅には複数のメリットがあり、どのメリットを受けられるかは状況によって異なるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
- 住宅ローンを利用できる場合がある
- 家賃収入を住宅ローンの返済に充てられる
- 土地を有効活用できる
- 固定資産税の支払いを減らせる
- 相続税の支払いを減らせる
住宅ローンを利用できる場合がある
通常、賃貸物件を購入する際には、アパートローンを利用します。
しかし、住宅の面積のうち自宅部分が建物全体の50%以上の場合、賃貸併用住宅では通常の住宅ローンを利用できます。住宅ローンは、アパートローンと比べて金利が2〜3%ほど低く、最長35年といった長期のローン設定が可能です。なお、金利や返済期間や借入条件は金融機関によって異なるため、あくまで一例になります。
金利 | 返済期間 | |
---|---|---|
住宅ローン | 変動金利で年0.3~0.8%程度 固定金利で年1%~2%程度 | 最長35年 |
アパートローン | 年1.5~4%程度 | 最長30年 |
また、自宅部分が建物全体の50%を超えている場合には、住宅ローン控除の適用も受けられます。住宅ローン控除とは、一定の要件のもと、年末時点での住宅ローンの残額のうち1%にあたる金額を、その年の所得税額から控除できる制度のことです。
不動産投資には多額の資金が必要となるため、金利や税金の負担を抑えられる点は、賃貸併用住宅のメリットといえるでしょう。
家賃収入を住宅ローンの返済に充てられる
賃貸併用住宅の大きな魅力として、家賃収入を住宅ローンの返済に充てることで、実質的な支出を抑えられる点が挙げられます。
安定した家賃収入があれば、ローン返済の一部または全部を家賃収入でカバーできる可能性もあり、住宅ローンの負担を軽減しつつ家を建てられるようになります。
ただし後述するように、賃貸物件には常に空室リスクがあるため、自力でも返済可能な限度でローンを組むことをおすすめします。
土地を有効活用できる
賃貸併用住宅は、土地を効率的に活用する手段としても有効です。
例えば、所有している土地が一般的な住宅サイズと比較して広い場合や住宅を相続したがうまく活用できていない場合、余剰部分を賃貸用住宅として活用することで土地の有効活用ができます。
特に、都市部など土地価格が高い地域において、賃貸併用住宅による土地活用は効果的な戦略となるでしょう。
固定資産税の支払いを減らせる
賃貸併用住宅とすることで、土地の固定資産税の負担を軽減することが可能です。固定資産税とは、毎年1月1日時点で不動産などを所有している人に対して課せられる税金で、土地と建物のそれぞれが課税対象となります。
固定資産税は、土地の上に建物があるとき、建物1戸あたりの大きさに応じて軽減措置を受けられます。1戸あたりの敷地面積が200㎡以下であるときは「小規模住宅用地の特例」が、200㎡を超えるときは「一般住宅用地の特例」が適用されます。なお、小規模住宅用地の特例が使用できるのは土地のみが対象です。
住宅用地の区分 | 固定資産税の軽減率 |
---|---|
小規模住宅用地 (1戸あたりの面積が200㎡以下の部分) | 固定資産税の課税標準額を土地評価額の 6分の1 |
一般住宅用地の特例 (1戸あたりの面積が200㎡超の部分) | 固定資産税の課税標準額を土地評価額の 3分の1 |
小規模住宅用地とは、専用住宅(居住のみを目的として建てられた住宅)の敷地に供されている面積が200㎡以下の敷地(200㎡を超える場合は200㎡までの部分)のことをいいます。賃貸併用住宅では、居住部分の割合によって、住宅用地の面積を判断します。下表の敷地面積に住宅用地率を乗じて求めます。
家屋の種類 | 居住用部分の割合 | 住宅用地率 |
---|---|---|
併用住宅 | 1/4以上1/2未満 | 0.5 |
併用住宅 | 1/2以上 | 1.0 |
地上5階以上の耐火建築物である併用住宅 | 1/4以上1/2未満 | 0.5 |
地上5階以上の耐火建築物である併用住宅 | 1/2以上3/4未満 | 0.75 |
地上5階以上の耐火建築物である併用住宅 | 3/4以上 | 1.0 |
例えば、敷地面積300㎡の土地に、3階建ての賃貸併用住宅(1階2階部分が店舗、3階部分が居住用部分)が建っていて、居住部分の割合は3分の1とします。
300㎡×0.5(住宅用地率)=150㎡
200㎡以下なので小規模住宅用地に区分され、固定資産税の課税標準額は土地評価額に対して、6分の1の額になります。
土地面積が200㎡を超える場合、200㎡以下の部分には「小規模住宅用地の特例」が適用され、200㎡超の部分には「一般住宅用地の特例」が適用されます。小規模住宅用地は「住戸1戸につき200㎡以内」であれば適用されるため、複数戸からなる賃貸併用住宅を建てた場合、土地の全体を小規模住宅用地とすることができ、固定資産税の軽減につながります。
相続税の支払いを減らせる
賃貸併用住宅とすることで、相続時に賃貸用不動産について、評価額が30%減額されます。これは、自宅用の不動産は自由に処分できるのに対し、賃貸用不動産は、賃借人がいるために自由な処分が難しく、不動産としての価値が低いと考えられているからです。
建物が建っていれば「小規模宅地等の特例」という制度を利用することができます。
「小規模宅地等の特例」とは、通常の取引価格を基準に計算した評価額をそのまま相続税の計算に適用するのではなく、一定の要件を満たす宅地等については最大80%まで評価額を下げて相続税の負担を軽減する制度になります。
評価額は「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で計算します。
なお、小規模宅地等の特例を受けるための適用条件や減額される割合は「住宅のために使用している土地(特定住居用宅地)」「事業のために使用している土地(特定事業用宅地)」「賃貸のために使用している土地(貸付事業用宅地)」で内容が異なります。
相続開始直前の利用区分 | 要件 | 限度面積 | 減額割合 |
---|---|---|---|
居住用 | 特定住居用宅地 | 330㎡ | 80% |
事業用 特定事業用宅地等 | 特定事業用宅地 | 400㎡ | 80% |
事業用 貸付事業用 | 貸付事業用宅地 | 200㎡ | 50% |
上図のように、賃貸併用住宅では自宅部分の評価額を80%、賃貸部分の評価額を50%減額できます。もっとも、この特例を利用するためには土地面積の上限や相続人の居住状況など、厳しい要件を満たす必要があります。
そのため、単に自宅を相続する場合と比べて、賃貸併用住宅を相続するときのほうが不動産の評価額が低くなり、相続税の負担を抑えられるのです。
「賃貸併用住宅はやめとけ」と言われる理由・デメリット
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賃貸併用住宅にはさまざまなメリットがある一方、留意すべきデメリットもあります。以下からは、賃貸併用住宅が抱えるリスクやデメリットを9個紹介します。
- 住宅ローンを利用できないことがある
- 通常の賃貸物件よりも利回りが低い
- 設計が難しい
- 空室リスクがある
- 入居者トラブルのリスクがある
- 管理に時間をとられる
- 売却・相続が難しい
- 建物の建設費用が高額になる
- プライバシーの確保が難しい
住宅ローンを利用できないことがある
賃貸併用住宅を新築する際、住宅ローンを利用するためには、ほとんどの金融機関において「自宅部分の面積が建物全体の50%以上であること」が条件となっていることがあります。賃貸部分の面積が自宅部分を上回る場合には、投資用不動産とみなされ、アパートローンを利用することとなります。
住宅ローンとアパートローンとでは金利や返済期間が異なり、どちらを利用できるかで収益性に影響が及ぶため、建物の設計段階から金融機関へ相談し綿密な計画とシミュレーションが必要です。
通常の賃貸物件よりも利回りが低い
賃貸併用住宅は、自宅部分の面積分だけ家賃収入を得られないため、通常の賃貸物件と比較して利回りが低くなります。
例えば、購入価格8千万円の物件を、4世帯の賃貸物件とし、各部屋の家賃を10万円とする場合、「10万円×4世帯×12カ月」で年間の家賃収入は480万円となり、物件の利回りは6%となります。一方で、この建物の半分を自宅部分とし、2世帯の賃貸物件とした場合には、年間の家賃収入は240万円となり、利回りは3%となります。
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設計が難しい
賃貸併用住宅では、建物設計段階において、建築プランに制約が生じます。
住宅ローンを利用する場合には自宅部分の面積を50%以上とする必要があること、および入居者とのプライバシーを確立する必要があることから、賃貸併用住宅の設計には専門的なノウハウが求められます。
そのうえで、出入り口や窓、各種生活設備など、両方のエリアを効率的かつ快適に配置するためには、通常の賃貸物件にはない専門的な設計技術が必要です。
これらの点から、設計を依頼する際には、賃貸併用住宅に関するノウハウがある設計事務所に依頼することをおすすめします。
空室リスクがある
賃貸物件を運用する以上、空室リスクは避けられない問題です。
特に賃貸併用住宅の場合、「オーナーが同じ建物に住んでいる」ことを敬遠する入居希望者も多いため、一般的な賃貸物件よりも空室リスクが高いといわれています。もっとも、「大家とコミュニケーションがとりやすい」として、賃貸併用住宅を好む入居者もいます。
いずれにせよ、空室リスクは収益性を大きく左右する要因となるため、立地条件や間取り、設備、賃料設定など、さまざまな要因を慎重に検討し、空室リスクを最小限に抑える戦略が必要となります。
入居者トラブルのリスクがある
通常の賃貸物件では、オーナーは離れた場所に居住しており、入居者トラブル等の解決には管理会社が対応することが一般的です。
しかし賃貸併用住宅では、オーナーが同じ建物に入居していることから、入居者トラブルの解決やクレーム対応について、オーナーに直接連絡がくることがあります。
また、騒音問題や生活習慣の違いなど、オーナー自身がトラブルの被害者になる可能性もあります。
このようなリスクを避けるためには、通常の賃貸物件よりも入念な入居者選定とルール設定、そして柔軟かつ冷静な対応力が求められます。
管理に時間をとられる
賃貸併用住宅のうち、特に戸数が少ない住宅では、不動産オーナー自身で建物の管理業務を行うことが一般的です。
自主管理物件とすることで、管理費用が生じない分だけ収益性を高められる反面、入居者対応は24時間発生する可能性があり、清掃やメンテナンスには多大な時間と労力が必要となります。そのため、副業や資産運用の目的で賃貸併用住宅を管理する場合には、本業の時間を圧迫され、管理業務自体もないがしろになってしまう可能性があります。
建物の美観は入居者の満足度に直結するため、状況に応じて専門の管理会社への委託も検討しましょう。
売却・相続が難しい
賃貸併用住宅は、住宅としても賃貸物件としても中途半端な物件となるため、売却が困難な傾向にあります。
また相続に際しても、すでに相続人が別の場所に住んでいる場合には自宅部分が不要であり、遺産分割の障壁となる可能性があります。
そのため賃貸併用住宅を建てる際には、自宅部分をアパート部分に転用しやすい設計としておくなど、将来的な柔軟性を考慮した設計とするようにしましょう。
建物の建設費用が高額になる
賃貸併用住宅は、賃貸部分の分だけ建設費用が通常の住宅よりも高額となります。
特に賃貸部分の戸数が多い場合には、ユニットバスやユニットキッチンなどの設備費用がかかり、定期的な付け替え・メンテナンスのコストもかかります。
また、プライバシーへの配慮など、賃貸併用住宅ならではの特殊設計とすることで、建物の設計費用も高額となります。
このように、賃貸併用住宅は初期費用が高額となる傾向にあるため、高額な初期投資を正当化できるだけの収益性が見込めるかどうか、綿密に計算することが重要です。
プライバシーの確保が難しい
賃貸併用住宅では、オーナーと入居者、または入居者同士のプライバシー確保が大きな課題です。プライバシーと快適性を確保することは、入居者の満足を高め、長期的な入居につながる重要な要素となります。
この問題を軽減するためには、設計段階から綿密な配慮が必要です。例えば防音壁の設置や、完全に分離された出入り口の設置、導線の工夫など、複数の施策を組み合わせるようにしましょう。
賃貸併用住宅で失敗しないためのポイント
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賃貸併用住宅には賃貸物件全般に共通するリスクだけではなく、賃貸併用住宅独自のリスクも加わるため、より慎重な判断が求められます。そのため、以下に紹介するポイントをしっかりと押さえ、リスクを最小化するよう心がけましょう。
- 戸数を増やす
- 入念に収支シミュレーションをする
- 賃貸併用住宅のノウハウがある不動産会社に相談する
戸数を増やす
賃貸併用住宅において、税負担も含めたコスト・ベネフィットのバランスを保つために効果的な戦略は、賃貸戸数を増やすことです。戸数を増やすことで、一部の部屋が空室になったとしても、全体の収益に与える影響を相対的に軽減できます。
特に、ファミリータイプだけではなく単身者向けのワンルームを複数設置することで、空室リスクの影響を相対的に下げることが可能です。具体的には、1K〜2LDKなどの間取りを検討するといいでしょう。
単身者向けの物件は需要が高く、比較的安定した入居率が期待できるため、リスク分散の観点からも有効な選択肢となります。
ただし、戸数が多くなることで、ユニットバスなどの初期費用がかさむ点や、入居者募集・契約管理などの手間が増える点、また、建物全体のうち自宅部分の割合が50%を下回ってしまうと、住宅ローンを利用できない点に注意が必要です。
そのため、どの程度戸数を増やすべきか所有している土地の面積の大きさや、具体的な収支シミュレーションを通じて慎重に検討するようにしましょう。
入念に収支シミュレーションをする
賃貸併用住宅の運用リスクを下げるためには、徹底的な収支シミュレーションが不可欠です。
建設にかかるコストのほか、ローンの返済額・管理費などのランニングコストについて、空室時の減収などリスク要因も踏まえ、あらゆる側面を慎重に検討する必要があります。
主な検討項目は次の通りです。ただし、実際に検討すべき項目は状況に応じて変動するため、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
収入に関する項目 | ・賃料収入 ・空室リスク ・その他の収入(駐車場など) |
---|---|
支出に関する項目 | ・建設費 ・住宅ローン返済額 ・建物維持管理 ・固定資産税および都市計画税 ・相続税 ・保険料 ・仲介手数料・広告費 ・空室対策費(家賃交渉による値下げ幅を含む) |
投資効果に関する項目 | ・キャッシュフロー ・利回り ・将来的な資産価値 ・税制上のメリット |
不動産運用のシミュレーションに必要な項目や具体的な計算方法、シミュレーションを行う際の注意点については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
【関連記事】不動産投資を成功させるためにはシミュレーションが重要!必要な情報、注意点とは?
賃貸併用住宅のノウハウがある不動産会社に相談する
賃貸併用住宅は特殊な形態であるため、一般的な不動産会社では十分なノウハウをもっていない場合があります。そのため、収支シミュレーションや運用を依頼する際には、賃貸併用住宅について実績のある不動産会社に依頼することをおすすめします。
特に、税制上の優遇面や、賃貸需要の市場調査等については、建物を作ってしまった後では取り返しがつかない可能性もあるため、「そもそも賃貸併用住宅に適した地域なのか」という観点も含めて、早い段階で相談するようにしましょう。
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