日産東HD Research Memo(2):総合モビリティ事業のフロントランナー
日産東京販売ホールディングスは、日産自動車系の大手ディーラーとして、EV市場の拡大を牽引する役割を果たしています。同社はEVやハイブリッドユニットであるe-POWERの普及に取り組み、プロパイロット技術を活用した自動運転の推進も行っています。自動車業界の転換期となる"CASE"(Connected, Autonomous, Shared &Service, Electric)と"MaaS"(Mobility as a Service)の潮流に対応し、EV需要の増加時には先行者利益を得るための体制を整えています。車両整備や中古車販売を含む総合的なサービスを提供し、国内市場での存在感を強めています。
1. 会社概要
日産東京販売ホールディングス<8291>は、日産自動車系の自動車ディーラー(日産東京販売)など連結子会社4社と非連結子会社3社を傘下に持つ持株会社である。主力の日産東京販売は、日本の中心で人口が集中する東京を地盤に、日産及びルノーブランドの自動車を販売する事業を展開しており、全国のディーラーのなかでも最大級の規模である。同社は主に日産自動車とそのグループ会社からEVなど先端的な自動車や部用品を仕入れて販売するほか、中古車の買取・販売や車体整備・車検整備などの事業も行っており、総合モビリティ事業のフロントランナーとして、顧客に対しカーライフに関わるすべてのサービスをワンストップで提供している。
同社は、1942年の商工省通牒「自動車および同部分品配給機構整備要綱」に基づき、東京府自動車配給(株)として東京市で発足した。戦後の1946年に東京日産自動車販売(株)に商号を変更した後、徐々に業容を拡大し、1961年に東京証券取引所市場第1部に上場した。1989年に東京日産コンピュータシステムを設立してシステム事業に参入、2002年には(株)車検館を設立し車検整備を強化するなど事業の多角化を図ってきた。2004年に会社分割により持株会社体制に移行して(株)東日カーライフグループへと商号を変更、2008年には日産自動車子会社の日産ネットワークホールディングス(株)に対し第三者割当増資を実施し、日産自動車の持分法適用関連会社となった。2011年には東京を地盤とする東京日産自動車販売、日産プリンス東京販売(株)、日産プリンス西東京販売(株)の3社をグループ化し、東京における日産自動車の販売をほぼ一手に引き受けることになり、商号も現在の日産東京販売ホールディングスへと変更した。グループ化が軌道に乗った2021年7月、さらなる効率化とスケールメリットを目指し、日産系自動車販売会社3社を統合して日産東京販売を設立、名実ともに国内最大級の自動車ディーラーとなった。また、グループ内の経営資源を自動車関連事業に集中させるため、2023年10月に東京日産コンピュータシステムの全株式をキヤノンマーケティングジャパン<8060>に譲渡した。
新潮流や全固体電池をテコにEV市場拡大に期待
2. 自動車業界の動向
コロナ禍やウクライナ情勢などによる生産や流通の混乱が落ち着きを見せても、自動車業界は先端技術化やCO2排出削減など課題は尽きない。こうした状況のなか、「CASE」と「MaaS」という潮流が、自動車業界に100年に1度の大変革をもたらすと注目されている。「CASE」とは、自動車のIoT化(C:Connected)、自動運転(A:Autonomous)、所有から共有へ(S:Shared & Service)、電動化(E:Electric)のことで、自動車業界に大変革を引き起こす一連の技術進化を指す。一方「MaaS(Mobility as a Service)」は、移動自体をサービスとして捉えた「モビリティ」という考え方に基づき、様々な交通手段を最適に組み合わせて検索・予約・決済などをワンストップで提供、個人単位の移動ニーズにまで対応したサービスである。
こうした大変革の波に乗ってEVを急速に普及させたのが欧米や中国で、日本では話題が先行するばかりで必ずしも普及しているとは言い難い。EVに本格的に参入している国内メーカーが日産自動車くらいで、国内の新車販売台数に占めるEVの構成比が非常に小さいからだ。このため、業界全体で急速充電器を増やすというモチベーションが働かず、消費者にEV購入の二の足を踏ませているともいえる。こうした環境ではあるが、同社は早い段階からEVやe-POWER※1といった電動車※2の普及に取り組み、電動車と相性が良いと言われるIoTには先端技術で、自動運転にはプロパイロット(ProPILOT:運転支援技術)などの技術進化で対応してきた。他社メーカーのEVでも利用可能な急速充電器を各店舗に設置し、また、リースやレンタカーなどモビリティ事業の強化も行っている。このように同社は、「CASE」や「MaaS」といった潮流に即して事業体制を構築しているため、本来肥沃な市場といえる日本でEV需要が急拡大する際には、先行者メリットを享受することができると思われる。現在、欧米ではEVの普及が頭打ちになっているが、「CASE」や「MaaS」に加え、遠からず予想される全固体電池の実用化や、自動車業界トップのトヨタ自動車<7203>の本格参入などをきっかけに、EV市場が大きく広がる日もそう遠くないことと思われる。
※1 e-POWER:日産自動車独自のハイブリッドユニット。発電のみにエンジンを使用するため、EVと同様のドライビングフィールを味わえる。
※2 電動車:電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV、PHV)、ハイブリッド車(HEV、HV)、燃料電池車(FCEV、FCV)などの総称。同社の場合はEVとe-POWER、ハイブリッド車を指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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