国内累計発行部数が1億2000万部以上という、驚異的な記録を打ち立てているスポーツマンガの金字塔『スラムダンク』。不良だった赤髪のバスケ初心者・桜木花道が、湘北高校バスケットボール部に入部し、強豪校のライバルらと対戦しながらメキメキと頭角を現していく物語に、多くのファンが魅了されたものです。

 

 

■井上先生が“才能がものをいうダンク”を選ばなかった

 

今回は作中で描かれた最後の試合である、全国大会2回戦・山王工業戦のラストシーンにスポットを当ててみたいと思います。『スラムダンク』ファンには言わずもがなの情報でしょうが、山王といえば3年以上連続で全国大会を制してきた日本高校界の頂点に君臨する高校。絶対王者です。

 

そんな山王との試合の最終局面。山王リードの1点差、試合終了まで残り1、2秒。背中のケガの激痛に耐えながらも、「左手はそえるだけ…」とどこか達観した表情の花道に、花道と反目し合っていた1年生エース・流川楓がラストパスを送ります。

 

花道は1週間で2万本という過酷なシュート練習で会得したきれいなフォームでジャンプシュート。放たれたボールは見事な放物線を描き、スウィッシュ(リングに触れずにゴールするノータッチシュート)。ゴールに吸い込まれていくのでした…。

 

花道の放ったシュートがブザービーターとなり、山王に湘北が勝利…!!

 

このシーンについて、検証・考察しましょう。

 

まず、そもそも1週間で2万本のシュートを打って、ジャンプシュートをものにすることは可能なのか? 2万本、徹底的に練習すれば、きれいなフォームが身に付き、一定のクオリティーで身に付けることはできるようです。が、問題は“1週間に2万本”という恐るべき数字。

 

1日平均で3000本近いシュートを打つことになるわけですが、バスケ経験者であればこれがどれほど激烈なものか、おわかりになるでしょう。1日500本でも相当キツイそうですから、本当に一日中、ずっとシュートを打ち続けるような状態を1週間続けたということでしょうね。常人ならば当然のように腕が上がらなくなりそうですが、そこは驚異的な身体能力を備えた花道ならでは…! さらに言うなら1週間、初心者の花道のシュート練習に根気よく付き合ってくれた安西監督、桜木軍団の面々、赤木晴子の献身的な協力がなければ、きっと成し遂げられなかったはず…!

 

その2万本シュート特訓の成果が、山王戦の最後の最後で発揮されたわけです。

 

……けれど、ぶっちゃけ最後はダンクで決めて欲しかった、というファンもいることでしょう。だって本作のタイトルは『スラムダンク』ですからね。確かに冷静に考えると、『スラムダンク』というタイトルのマンガで、主人公が最後に決めたのがダンクシュートではなくジャンプシュートだったということに、違和感を覚えても不思議ではありません。

 

ここからはあくまで推察ですが、作者の井上雄彦先生のこだわりで、ダンクではなくジャンプシュートにしたのではないでしょうか。

 

井上先生がバスケットボールというスポーツを、リアルに描写することに強いこだわりを持っていることは有名な話。それはゲーム中のプレイの描写に限ったことではなく、そのプレイに至るまでの過程なども大事にしているほどです。

 

花道は作中で、今回の2万本のジャンプシュートだけでなく、リバウンドやレイアップシュートの練習風景が描かれたこともありますが、実はダンクを本格的に練習しているシーンが描かれたことはありません。というか、高い運動神経を誇る花道は、ダンクに関してはあまり練習せずとも、いきなりできていましたよね。

 

そのため井上先生は、派手で絵的に映えるダンクシュートよりも、過酷な特訓で会得したジャンプシュートを花道のラストシュートにすることで、バスケットボールの真髄を伝えようとしていたのかも…と考えられなくもないんです。

 

タイトルは『スラムダンク』でも、主人公が最後に見せたのは才能がものをいうダンクシュートではなく、地道な練習で身に付けられるジャンプシュートだった――ここに井上先生のバスケ愛が凝縮されているように感じませんか?

情報提供元:citrus
記事名:「【涙腺崩壊】『スラムダンク』花道が最後にダンクではなくジャンプシュート…そのワケは?