昨年12月に起こった、ソフトバンクとワイモバイルの大規模な通信障害は記憶に新しい。多くのユーザーが被害・不便を被ることとなったこの騒ぎのさなか、ソフトバンク公式Twitter・Facebookアカウントが「ファミチキ」のプレゼントキャンペーンを告知し、あっさり炎上してしまった。
■「ファミチキより電波ください」
「ファミチキより電波ください」といったコメントをはじめ、多くの批判が寄せられた。
スーパーフライデーと銘打たれたこのキャンペーンは、ソフトバンクの携帯電話事業参入10周年を記念してはじまった。実施月の金曜、ソフトバンクのスマホユーザーに有名チェーン店の無料クーポンを配布するという内容だ。
本来ユーザーに歓迎されるはずのキャンペーンだが、なぜ炎上してしまったのか、ソフトバンクはどうすれば炎上を防げたのだろうか。
■通信障害の前に投稿されていたが…
投稿時間は12月6日12時と、通信障害の発生前だった。しかしその後、前代未聞の通信障害の中、公式アカウントはお詫びどころか現状報告さえしていなかった。
つまり、ユーザーは通信障害にまつわる情報を求めて公式サイトや公式アカウントを訪れ、呑気な投稿を目にしてしまったわけだ。本気で困っていたユーザーが腹を立て、抗議するのも無理はない。
その後、公式アカウントは現状報告と謝罪、復旧の報告を立て続けに行った。しかし、タイミングが遅すぎたと言わざるをえない。
■“炎上の芽”を早く刈り取れ
では、どう対応すれば“正解”だったのか。
企業がソーシャルメディアを運用する場合、さまざまな事情で投稿を事前に予約することが多い。ファミチキの投稿もキリのいい投稿時間を見るに、事前に予約していたと考えられる。加えて、予約されていた時間は通信障害の発生前であり、投稿をストップすることはできなかっただろう。
しかし障害発生後、困ったユーザーが電話やメール、SNSなどで一斉に問い合わせてきていたはずだ。実際、公式アカウントには、通信障害にまつわる多くのメンションやコメントがつけられていた。
こうした“炎上の芽”に気づき、すぐフォローしていれば大事にはならなかっただろう。
■運用担当者に権限を与えよ
ソーシャルメディアは、リアルタイムにすばやく情報を発信したり、個々のユーザーと綿密にコミュニケーションしたりできる点で優れている。今回の場合、通信障害の原因がわからなくても、現状報告やお詫び文くらいは投稿できたはずだ。
企業は、運用担当者に緊急時の対応権限を与えるべきではないだろうか。運用担当者が誠心誠意お詫びしたり、「ソフトバンクWi-Fiスポット」を使うよう促したりするなど、ユーザーに寄り添った投稿ができていれば、アカウントのファンを増やせた可能性すらある。
■KDDIが見せた機転
ソフトバンクが炎に包まれているさなか、KDDIは公式Twitterで、「auユーザーの皆さま、もしお近くにお困りの方がいらっしゃいましたら、無料Wi-Fi スポットがある場合がありますのでお伝え頂けるとサポートできるかもしれません」と、スポットの詳細リンクとともにツイートしている。
キャリアの垣根を超えたこの投稿は、KDDIの株を上げることにつながったようだ。
炎上を完全に防ぐのは不可能だと思ったほうがいい。しかし、炎上の“拡大”は防げる。ユーザーに寄り添って真摯に対応すれば、ピンチをチャンスに変えられるかもしれない。
企業アカウントの運用担当者、マネージャーは、ユーザーのコメントやメンションをこまめにチェックし、ユーザーの心情に沿った投稿をするよう心がけたい。