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関西を走る大手私鉄の阪急電鉄がユニークな車両を発表した。すでに好評を博している観光特急「京とれいん」の2編成目となる「京とれいん 雅洛(がらく)」で、乗ったときから京都気分を味わえるというキャッチコピーにあるとおりインテリアに凝ったものだ。京の和室をイメージしていて、クロスシートあり、窓を向いたロングシートありで、6両編成の車両毎にインテリアや雰囲気を変えるといった凝りようだ。それでいて、特別料金不要、乗車券のみで乗れるという太っ腹ぶりである。高額な豪華列車が相次いでデビューする中、これはこれで面白い取り組みだ。
京とれいんが走る阪急京都線と同じく大阪と京都を結ぶ鉄道には、JR京都線(東海道本線)と京阪電車があり、競争が激しい。いずれも、JRの新幹線や特急列車をのぞいて、追加料金不要の伝統がある。京とれいんも、その伝統にのっとって運賃のみで乗れるという大判振る舞いなのだ。
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もっとも、京阪は2017年夏よりプレミアムカーという有料座席指定車両の連結を始めたし、JR西日本でも有料座席指定席を導入する予定だ。無料というのはオトク感がある半面、混雑していて座れないリスクもあるため、疲れている時や荷物が多い時などは追加料金がかかっても座りたい人はいるだろう。高齢化が進めば、その傾向は強まると思われる。京とれいんも途中駅から乗車すると座れないこともあるという。座席のユニークな通勤電車と割り切れば問題ないのであろうが、遠方からの観光客の中には不満に思う人が出てくるかもしれない。
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■京都の「追加料金不要」列車は衝撃的!?
ところで、ユニークな観光用車両のうち乗車券のみで利用できるものは、ほかにあるだろうか? 同じ関西、それも京都を走る叡山電車に度肝を抜く電車があった。
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まずは、2018年3月にデビューしたばかりの「ひえい」がある。一度見たら忘れられない前面の風貌は衝撃的でさえある。車内も楕円形の窓が並び、オールロングシートとは言え、快適な座席だ。私が乗車した時は、平日にもかかわらず満員であった。もっとも起点である出町柳から終点の八瀬比叡山口まで15分ほどなので許容範囲であろう。
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叡山電車には、もうひとつ「きらら」という展望列車もある。こちらは、出町柳から鞍馬へ向かうもので2両編成。窓を向いたペアシートやクロスシートもある。「ひえい」よりは観光車両にふさわしい車内だが、やはり運賃のみで乗車できる。
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紅葉シーズンには「もみじのトンネル」を通るとあって大人気で満員のことも多い。こちらは、全区間乗車すると30分ほど。秋の京都は寺社も電車も超満員覚悟で臨まなければならない。
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■利用客側もある程度の鉄道知識が必要か
東日本に目を移すと、JR日光線を走る観光用車両「いろは」が、乗車券だけで利用できる列車だ。
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JR日光線は、近年、首都圏で走っていたオールロングシートの通勤型車両が都落ちして使われていたのだが、JR全線のみ乗り放題のジャパンレールパスを使う訪日外国人観光客対策として、スーツケース置場を確保し、クロスシートを配置した和風の車両を導入した。通勤型車両を大改造したものとしては、よくできていると思う。
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各駅停車として使われているので、観光客以外に通勤通学客や地元の人も乗ってきて、何とも言えない雰囲気を醸し出している。発車間際だと始発駅の宇都宮や日光からも座れないことがあり、残念なこともある。かといって、指定席にするほどの快適さではなく、乗車券のみで利用するときだけオトク感があると言ったら言い過ぎだろうか?
このように、ユニークな工夫された車両は楽しいけれど、遠方から訪れる観光客の中には、確実に座りたいと思う人も多いのではないだろうか?様々な観光列車が登場するなか、利用者側にもどう利用するか(指定席でなければ、いかにすれば座れるか)、鉄道のことを熟知する賢さが求められている。