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「退職代行」サービス登場の裏にある、度を超えた退職引き留めとその目的




総務省の調査によれば、2017年の転職者数は311万人で、この数字は年々増加傾向とのことです。現場でも、「そうだろうな」と実感します。



 



そんな中、退職する際の会社との連絡などを本人に代わって行ってくれる「退職代行」というサービスが話題になっているそうです。ニュース記事によれば、料金は退職1回につき正社員5万円、その他の勤務形態では4万円で、退職完了までのやり取りは無制限とのことです。



 



サービス開始から1年と少しを経過した今までで、500件近くの退職を代行しており、最近は相談件数が5000件にのぼるなど、需要の高さがうかがえるとされています。中にはリピーターで何度も依頼する人がいるとのことです。



 



 



■辞めたい人にとっては役立つサービス



 



この話を聞いて、会社側の立場の人間は、たぶん瞬時に眉をひそめるのではないかと思います。あまりにドライに辞めていこうとする態度のみならず、この人手不足の世の中……、辞める手伝いなどという余計なことはしないでほしいと感じてしまうかもしれません。



 



一方で、辞めようとする本人の立場で考えると、こういうサービスを利用したい気持ちもわかる部分はあります。会社よっては過度と思える退職引き留めをしているところもあり、それに対応する時間と労力は、転職を決断した後の本人にとっては、無駄以外の何物でもないからです。



 



私自身は人事として会社側の立場にいた経験も、自分が会社を辞めた経験も、どちらもあります。そこまで過度な引き留めをする会社ではありませんでしたが、会社としては必ず本人から話を聞き、会社に残る選択はないのかを尋ねます。本人としても、それまでの同僚との関係を悪いものにはしたくないでしょうし、円満退職が望ましいと思っていますから、そのやり取りには応じてくれます。人によっては、会社に対して申し訳ないと思う気持ちもあるでしょう。

 



しかし、このやり取りによって退職を翻意した人がどれくらいいるかと言えば、私が20年近く経験した期間の中で、一人か二人いたかどうかという程度のもの。辞めることを迷っている段階であればまだしも、それを決断して転職先まで決まっているような状況で、いろいろ言ってももう手遅れです。



 



 



■度を超えた退職引き留めの目的



 



ただ、この「退職引き留め」を嫌がらせではないかと思うほど、長期に渡って展開する会社があるという話を聞きます。課長と話し、次は部長と話し、いつまでも結論を出そうとせず粘られて、時間ばかりがどんどん経過していくそうです。穏便なやり取りで済んでいるうちは良いですが、中にはいろいろ否定的なことを言ってきたり、脅迫めいた話までする人もいると聞きますから、本人の精神的負担は大きいでしょう。予定通りに辞められないと、転職先にも迷惑がかかりますから、本当に気が気ではありません。



 



なぜそんなことが起こるかと言えば、それは会社から管理職に対して「部下を辞めさせるな」というプレッシャーがあるからです。自身の評価に影響することもあります。翻意させるのは難しいとわかっていても、これだけ時間をかけて引き留め工作をやったという事実だけが欲しい場合もあるようです。そうなってしまうと、お互いにもうただの時間の浪費でしかありません。

 



退職する側がこれを防ごうと考えると、今までは円満退職を放棄して戦うくらいしか方法はありませんでしたが、第三者が間に入って代行してくれるとなれば、これは大きなメリットでしょう。

 



 



恫喝や圧力で人の気持ちを変えられるか



 



ただ、「退職代行」のようなサービスが重宝されるのは、私は「圧力をかけて相手の意志を変えさせる」という発想が、いろいろなところで強まっていることの、一つの表れではないかと感じています。



 



パワハラやクレーマーの増加もそうですが、威圧や恫喝、圧力で態度を変える人がそれほどたくさんいるのか、それとも圧力をかける側の人格や、反対に自信のなさからの行動なのか、明確な理由はわかりません。





いずれにしても、「退職代行」サービスなど不要な環境が、会社と社員の関係では正常な形だと思うのですが、どうもそこから離れつつある傾向が見えます。





恫喝や圧力で人の気持ちを変えようとする行動のデメリットは、もっとよく考えなければなりません。「退職代行」サービスは、そんな世の中の象徴のように見えてしまいます。


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