「ジェネレーションZ(Z世代)」なるワードが、ここ日本でもにわか流通し始めているという。
「日本最大のHRネットワーク」を謳う『日本の人事部』によると、1990年半ばから2010年ごろまでに生まれた世代のことを指すらしい。由来となったのは、アメリカの作家であるダグラス・クープランドの著書『ジェネレーションX-加速された文化のための物語たち』で、同書内では、60〜70年代前半に生まれた世代が「ジェネレーションX」と名付けられ、その後を継いで、80〜90年代前半生まれは「ジェネレーションY」、そして“それ以降”を「ジェネレーションZ」と呼ぶようになったわけである。
初代iPhoneが日本で発売されたのが2007年6月ゆえ、「Z世代」のまわりにはインターネットはもちろん、スマートフォンも幼少期から当たり前に存在していたことになり、こうしたデジタルツールに囲まれ育ってきた環境が、彼ら彼女らの人格形成に大きく影響を及ぼしていく。
「ジェネレーションZ」の主な特徴としては以下のようなものが挙げられる……らしい。
・スマホとともに劇的に普及したSNSでのコミュニケーションを通じて多用な価値観に触れながら育ってきたため、人種や性別、セクシャリティへの偏見を持たず、自分とは異なった存在として割り切って受け入れる傾向がある
・スマホやパソコンを幼いころから使いこなしてきたことで、個人情報の漏洩やSNSの炎上問題など、ITリテラシーを(デジタルが人に与える悪影響も理解した上で)自然と身につけている
・2008年にリーマンショックが起きてから、ニュースでは連日不況が伝えられ、保護者が苦労している姿を目の当たりにしてきたため、「安定」を求めるリスク回避志向が強い
・ブランド志向が強く、物を消費することで承認欲求を満たしてきた親世代とは異なり、SNSで簡単に承認欲求が満たされるため、本質的なものに価値を見いだし、社会のためになにができるかを突き詰める思考回路を持つ
う〜ん……コレって、現社会においては「最強の人間」ってことじゃないですか! このままこの世代がどんどん成人してビジネスの第一線に出てきたら、とてもじゃないけどどれを取っても我々世代は太刀打ちできませんわ……。ある意味「まったく別の人種」とさえ言ってもいい。こんなモンスターみたいな世代に我々オジサン世代は一体なにを伝えられるのだろう?「古いものにも良いものはある」ってことぐらいなのではなかろうか? しかし!「良い」と自信を持ってオススメできる「古いもの」を、残念ながら私はパッと思い浮かべることができない。
いや、たった一つだけ今、思いついた。「昭和歌謡」だ。たとえば、深田恭子と多部未華子と永野芽郁がおもむろにカメラ目線で商品名のみを口にする『UQ』のCMソングは、あのピンクレディの大ヒット曲『UFO』のアレンジで、やたら耳につく「仕事バイト探しはインディード♪」も坂本九の『幸せなら手をたたこう』が元歌になっている。そう! メロディ・リズム・曲構成が複雑化の一途を辿り、歌詞がラップのごとく詰まっていくいっぽうのJ-POPと比べ、シンプルで“間”に重点を置いた昭和歌謡は、圧倒的にメッセージの伝達力の面で優れているのだ。
いわゆる「Z世代」の子たちと一緒にカラオケに行けば、私が昭和歌謡を連続で熱唱しても、歌手の名前をポンポンと言い当てたり、一緒に口ずさんでくれたりもしてくれる。こうやって世代を超えて共感できるコンテンツを模索しながら積極的に共有することこそが、我々オジサン世代に残された数少ない使命なのかもしれない。