
片岡仁左衛門(81)が17日、菅原道真をまつる京都・北野天満宮で、「秀山祭九月大歌舞伎」(9月2~24日、東京・歌舞伎座)の「通し狂言 菅原伝授手習鑑」の成功祈願を行った。昼の部Aプロ「筆法伝授」「道明寺」で、道真(菅丞相)をつとめる。
菅丞相をつとめるのは、「筆法-」で6回目、「道明寺」では7回目。成功祈願を終え「またこの役をつとめさせていただける感謝の気持ちしかないです」と話し「お芝居ですけど、天神様ってあんな人か…というお気持ちを持たれないようにしたい」と気を引き締めた。
これまでは福岡・太宰府天満宮にお参りしていたが、北野天満宮での同演目成功祈願は初めて。大阪で生まれ育ち、関西での公演時に訪れるなじみの場所とあって「温かみがあってホッとする」と笑みを見せた。
政争に敗れ太宰府に左遷される菅丞相。演じるたびに気づきがあり、思いも深まる。「演技という演技がない。台本を読み込んで、気持ちになりきるしかない。演技をしてしまうと、そこに意識がいきますから。持っているものでだけで、自然体でやらせていただく」とした。
Bプロで菅丞相をつとめる松本幸四郎とお参りに来たかったが、現在公演中のためかなわなかったことを残念がり、気持ちの大切さについて「幸四郎君にも伝えたいと思います」と話した。
牛は道真の使者であるため、稽古から千秋楽まで牛肉を断つ習わしもこれまで通り行う。「初演から約30年、祖父も父も大事にしていたお役。汚さないようつとめられるよう頑張ります」と話した。
「菅原伝授手習鑑」は、「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」と並ぶ歌舞伎3大名作の1つ。物語全体を上演する「通し」と呼ばれる上演は、歌舞伎座では10年ぶり。昼の部は、「加茂堤」「筆法伝授」「道明寺」、夜の部は「車引」「賀の祝」「寺子屋」を、いずれもA、Bプロで上演する。
○…菅原道真は梅を愛したことで知られ、北野天満宮にも境内のさまざまな場所に梅が植えられている。太宰府に左遷された道真が、都の梅を懐かしむ歌を詠んだことで、梅が道真の意を汲んで一夜のうちに太宰府に飛んでいったという「飛梅伝説」がある。北野天満宮の本殿前には「飛梅」が植えられており、太宰府天満宮にも「飛梅」があり、いずれもご神木となっている。