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米女優スカーレット・ヨハンソン(40)が、人工知能(AI)を使って作成された自身のディープフェイク動画がネットで拡散されていることを受け、米政府に規制を求める声明を発表した。問題となったAI動画は、米ラップ歌手カニエ・ウェストの反ユダヤ主義的発言や自身のファッションブランド「Yeezy(イージー)」でナチスのシンボル「かぎ十字」が描かれたTシャツを販売したことへの抗議メッセージと思われるが、肖像権の使用許可を得ずにAIによって生成されたものだという。
動画はウェストの名前と中指を立てた手にダビデの星が描かれたTシャツを着たユダヤ系の著名セレブたちが登場し、団結して抗議のメッセージを発信する内容となっている。ヨハンソンの他にもスティーブン・スピルバーグ監督や女優ナタリー・ポートマン、俳優アダム・サンドラーらの姿もあり、最後は「もうたくさん」「私たちと一緒に反ユダヤ主義と戦おう」とのメッセージが映し出される。
ヨハンソンは声明で、「私はユダヤ人女性で、いかなるたぐいの反ユダヤ主義やヘイトスピーチも容認しません。しかし、AIによって増大するヘイトスピーチのリスクは、責任を負うひとりの人間よりもはるかに大きな脅威であるとも私は信じて疑いません。メッセージの内容が何であれ、AIの悪用を糾弾しなければなりません。そうしなければ、現実を制御できなくなる危険があります」と述べている。
ヨハンソンは昨年5月にも、生成AI開発を手がける米オープンAIが発表したAI音声が、自身の声に酷似しているとして抗議声明を発表している。
この抗議動画の制作者は不明だが、報道によると生成AIの専門家によって作成されたもので、SNSで共有する際に「このコンテンツは、本物らしく見えるようAIでデジタル的に作成または改変されている」との注意書きが含まれていたという。(ロサンゼルス=千歳香奈子)