どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
厳罰化されても続く飲酒運転での悲惨な事故。罪なき犠牲者を生み出す犯罪ですが、飲酒運転をして逮捕されたときにはいったいどのような刑罰を受けるのでしょうか?
酒を飲んで、帰るのが面倒だから車を運転して帰る……それで人の命を奪ってしまう。今回は、実際に飲酒運転の罪を犯して、刑罰を受けたU氏(46歳)に実際に受ける様々な処分について聞いてみました。
罪を償った彼は現在も後悔している話し、現在はボランティア活動を行っているといいます。彼が話す刑罰の内容とは?
刑事処分と行政処分の両方が科される
丸野(以下、丸)「飲酒運転には、《酒気帯び運転》と《酒酔い運転》がありますが、Uさんはどちらで逮捕されましたか?」
U氏「僕は、《酒気帯び運転》ですね。この犯罪には刑事処分と行政処分がついて回ります。どちらもそうなのですが、事故を起こして検挙されるか、取り締まりで検挙されるかで罰則内容が変わってくるところは同じですね」
丸「同乗者や居酒屋、バーなどの飲食店も、運転すると知っていて酒を提供すると罰則を受けることになると聞いたことがありますが……」
U氏「そうですね。飲酒運転の罪で検挙されるのは運転しているものだけではありません。道路交通法第65条(酒気帯び運転等の禁止)では、運転する者だと知りつつ、同乗者、酒類提供する、一緒にお酒を飲んだ人間、そして飲酒を勧めた者も罰則対象です。さらに、道路交通法第103条(免許の取消し、停止等)免許取り消しや停止処分が科されるんです」
飲酒運転でグループ全員が免許取り消しになることもある
丸「ほほう」
U氏「そういう判例もあり、居酒屋などの飲食店で飲んでいた何人かのグループがいて、そのうち1人が警察に飲酒運転で検挙。その後にグループ全員が免取になったというケースもあります。飲酒で検挙されたグループの1人は代行で帰ると友人には話していたようですが」
丸「勾留はされるものなんですか?」
U氏「僕は48時間ほどの勾留でした。留置場の中で反省しろというわけですね。一度飲酒運転で検挙された人が同じ舎房の中にいましたが、その人は酒気帯び運転だったようで、後日警察署と検査庁から呼び出しがあったらしいです」
丸「在宅で処分を待っていたわけですね」
U氏「はい。僕は勾留を終えて身柄拘束が終わったあとは、逃亡の恐れなしと判断されて、在宅起訴になりました。でも、悪質な場合は23日間勾留されて、そのまま起訴になるようですね」
酒気帯び運転での逮捕されたあとどうなる
丸「そのあとの流れは?」
U氏「酒気帯び運転での逮捕は、刑事事件にあたって犯罪者としての逮捕になります。ということは、つまり逮捕後には傷害など普通の刑事事件と同じ流れになります。まず、警察に逮捕されると《事情聴取》を受けます。そして逮捕されてから《48時間以内に被疑者は警察から検察庁へ書類送検》。《最大20日間の勾留延長になるどうかの決定》になります。粗暴犯や単身者など逃亡の可能性があり、勾留が必要と判断されれば、検察は勾留請求を行って最後に裁判官が決定するという流れになります」
丸「勾留が決定されてしまうと、まずは10日の身柄拘束になりますよね。起訴・不起訴の判断というのはどんなものなんでしょう?」
U氏「悪質性ですね。検察庁はその事例を起訴や不起訴にする判断します。起訴となれば、起訴準備期間を経てから裁判。判決が下されるとわけです。何度も繰り返していたりすると、交通刑務所や一般刑務所に収監されることになります」
丸「懲役や禁錮などの実刑判決というわけですね」
U氏「でも、初犯であれば執行猶予付きの実刑判決にもならないことも……。簡単に罰金で済むこともあります。しかし、初犯でも、飲酒運転をして人身事故を起こしたときには、さらに厳しい判決が待っているそうです」
酒酔い運転での危険運転致死傷など罪状の重い交通違反での罰則
酒気帯び運転に関する罰金は、交通事故を起こした場合、取り締まり検挙の場合の2種類で異なります。さらには前科の有無も影響し、罰金の金額はまちまちで罰金ではなく、懲役刑に処される場合があります。
1.取り締まりで逮捕:50万円以下
刑事処分での罰金科料は50万円を超えません。しかし、実際の罰金は違反者の前科で変わります。悪質な場合の懲役刑では、3年以下となります。
2.人身事故を起こしての酒気帯び運転発覚で逮捕
飲酒運転で人身事故を起こした場合は厳格な処罰になります。3つの罪(《過失運転致死傷罪》、《過失運転致死傷罪アルコール等影響発覚免脱罪》、《危険運転致死傷罪》)があり、どの罪に問われるかは検察庁の判断です。
・過失運転致死罪に問われると……7年以下の懲役または禁錮、もしくは100万円以下の罰金
・過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪に問われると……12年以下の懲役
・危険運転致死傷罪……1年以上20年以下の懲役または15年以下の懲役
弁護士費用、懲役刑……あまりにも代償が大きすぎる
酒気帯び運転などで人身事故を起こすと、被害者への損害賠償や慰謝料の支払い額が数千万円になった判例もあります。
U氏は最後にこう締めくくりました。
U氏「私は一度の酒気帯び運転で他人に大きな迷惑をかけ、家族も失い、仕事も失い、賠償金や弁護士費用などの金、免許も失いました。ですから、ドライバーのみなさん、飲酒運転は絶対にしないでください。社会的な信用を失うことはもちろん、他人の命を奪いかねない愚かな行為は決してしないようにしてください」
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)