今回は岩崎啓眞さんのブログ『Colorful Pieces of Game』からご寄稿いただきました。
『萌え』の登場についての覚書(Colorful Pieces of Game)
「萌え」に最初からエロが含まれていたとかなんとか、よくわからない話が流れているらしく、自分が覚えていることをメモとして残しておきたいと思った。
ところで、これはあくまで94年ごろ、NiftyServe、PC-VAN、東京BBS他をウロウロしていた人間の記憶でしかなく、かつ別に他の資料やログをちゃんと参照したものでもない。
だいたい当時生息していた東Bとかニフのchatのログがあるわけもない。
ただ「自分の記憶としてはこうである」、そして、他の人間と記憶を校正すると、まあまあ大間違いではなさそうだという記録として残しておきたい。
「萌え」という言葉がいつ頃登場したのかというと、これは自分の記憶では、ほぼ間違いなく1994年のPCエンジン版『ときめきメモリアル』の前後だ。
当時、隆盛を誇っていたniftyのRT(チャット)で、最初のうちは「XXちゃん燃え燃えだあ!」って言ってたヤツ(なんとなくYMG君あたりだった気がするが、これは全く自信はない)が、ある日「XXちゃん萌え萌えだあ!」と言ったのが、自分が記憶している一番最初の「萌え」だ。
これが最初なのかどうかは知らないが、少なくともこれより前には「萌え」という表現を聞かず、これより後には聞くようになったのだから、このあたりが一般化する寸前であったのは間違いない。
だから萌えという言葉は、94年から始まるギャルゲーの隆盛とパソコン通信で一般化したのはほぼ間違いないというのが自分の認識だ。
次に当時の「萌え」という表現は、どんなことを意味していたのか?
「自分がグっときて、心を掴まれるようなキャラ(ギャルゲーだったので女の子)に対する感情」を萌えと表現したと思っている。
だからゲームの中に含まれているそのキャラのイベント(ストーリー)や、キャラのセリフまで含めての総体で「萌える」と表現するもので、外見だけはなかった。
外見での「萌え」が出てきたのは、1995年にPS版の『ときめきメモリアル』が発売されたとき、PCエンジンからの移植なのでイベントもなにも全部バレてしまっているので、当時のキャラ人気を逆用して、僕がカタログ方式と表現する「女の子をズラっと並べておいて、プレイヤーは誰がお気に入りだい?」って方式のマーケが大成功して、以降のギャルゲーが踏襲するようになってからだ。
では次に「エロと萌えは関係があったのか?」
上で書いたとおりでエロであろうとなかろうと「萌え」というものはあったのだからエロゲーであろうと「萌え」は存在した。
ただし、当時のエロゲーで「萌える」というところまで来ているゲームは、エルフの『同級生』および『同級生2』ぐらいというところだったと思う。
これはノベルゲーム系の登場前夜(リーフの『雫』・『痕』は1996年)で、グラフィックの質であったり、シナリオの質であったりがまだ微妙な時代だったからだろうと思う。
だから「萌え」の初期はPS版『ときめきメモリアル』で爆発したギャルゲーブームを背景にコンソールで最初は広がった言葉で、結果としてエロの要素は薄かった、ということだろうと思っている。
と、まあ思い出話でしかないが、少なくとも当時のパソコン通信をやり、ライターをやり、ゲームの作り手をやっていた人間には「萌え」というのは、こんな風に登場したものだったのだ。
執筆: この記事は岩崎啓眞さんのブログ『Colorful Pieces of Game』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年10月11日時点のものです。
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