CEDEC 2016のセッション、「VR体験向上チャレンジ –VRの体験を上げるためのテクニックとチャレンジ -」の様子を紹介する。
VRを制作している人はもちろん、これからVRを制作しようとしている人にもなセッションだった。
講師は、ソニー・インタラクティブエンターテインメントの秋山賢成氏。
VRを制作する際の注意点とテクニック
VRを作成する上で、プレゼンスを壊さないための必要最低条件として
- レイテンシーは極力減らす
- フレームレートは60fps以上必達
の2つが挙げられる。
VRコンテンツには両目それぞれのレンダリングを必要とする、レイテンシーを下げるために処理の配分を最適化をするなど、技術的な苦労や困難があるが、CPU・GPUの処理の最適化、パフォーマンスチューニングはかなり重要になる。
パフォーマンスチューニングでは、パフォーマンスを解析し、ボトルネックになっている部分を見つけてチューニングを行っていくと良い。
その中でも、効果が高そうな処理に狙いを定めて最適化していくことが重要になる。
レンダリングの負荷を削減する方法
VRのレンダリングでは、左右の目の画像を作りVRシステムに渡し、歪み補正や画像結合などの処理が行なわれている。
画像の周辺の黒い部分は歪み補正で消えてしまうため描画が無駄になる。そのため、レンダリング処理からは外すことで負荷を削減することが可能になる。
その1つに、固定のステンシルバッファで型抜きするという方法がある。マスク用のジオメトリを投入することで画像に黒い部分ができ、それがデプステストにより除外される。
この方法は、マスク用の素材を追加するだけで済むという利点がある。
また、フルスクリーン描画時に有効領域のみをカバーするジオメトリを投入するという方法もある。
見た目をより綺麗にしたい、しかし処理負荷を大きくしたくないという場合は、レンズ特性を考慮したレンダリングが有効になる。
VRヘッドセットを着けている場合、視点は画面に映っている部分全てでなく、中央部分に集中するので、それを利用して、視野の中心部分にだけ高解像度のレンダリングをし、周辺はそのままという処理を行うという手法だ。
リプロジェクションが最重要
PSVRでは、ゲームの処理・トラッキング処理・リプロジェクション処理が連携して動作している。
リプロジェクションとは、アプリケーションの描画とは別に将来のフレームをヘッドセットの動きから予測して描画する処理。これにより60FPSのレンダリングでも約120Hzで出力することが可能となり、VR体験のさらなる向上が見込める。
そのため、リプロジェクション処理スレッドの優先度を上げることが非常に重要となる。
VRの体験を向上するためのチャレンジ
ソニーでは、VR体験向上のための四天王として、以下の4つを挙げている。
- VR空間を活かした表現
- 3Dオーディオ
- VR UI
- VRコンテンツデザイン
矩形枠にとらわれない表現の広がりや、上下左右だけでなく、前後の距離を利用することで、VR空間を活かした表現が可能となる。
その中で、距離感を出しやすいCGの世界を作るノウハウはたくさんあるが、実写の世界をVRに持ち込んで距離感を出すためにはどうすればいいのか、実写映像・VR空間内の距離・VR表現演出、これら3つの良さを全て生かすにはどうしたらよいのかを考える必要がある。
VRのUIでは、文字や2Dといった既存の手法が本当に必要なのか?全画面ポップアップのような距離がわからないUIは本当に必要か?悪手になりうる可能性はないか?などを検討する必要がある。
また、UIで何よりも大切なのは気持ち良さ・直感的・楽しさとワクワク感であるということを念頭に入れる必要がある。
VRコンテンツデザインとして、VRにしかできないこと、VRだから拡張されるものを考える必要がある。
その中で、映像が投射されていりう未来の空間に自分がいる感覚を演出として、面白法人カヤックと協力し、デモ動画を作成した。
この動画の中で、VR UIという観点では、誰もがVRに期待するようなSF的なUI表現を用いている。
VR空間を活かした表現という点では、VR空間へのプロジェクションマッピングや見ている映像のシーンに合わせた空間の変化、風景の変化による時間を飛び越えるような体験といったものを表現した。
VRの演出に迷ったら、一度立ち止まって体験の向上を再検討すると、答えが出てくるかもしれない。
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現在勢いを増しているVRだが、成熟していった先にはさらなるコンテンツの進化が求められるだろう。
ユーザーがVRに慣れた時に、どのようにして次の体験を与えられるかどうかが重要だということを考えさせられる内容のセッションだった。
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