
地方自治体もVRに手を伸ばす
VR技術はそこに投資した企業や個人に大きな見返りをもたらしてくれることが期待されている。
今年の前半にはVR関連企業の得ている利益が投資家によって投資先として選ばれるに足るものではないとする報告もあったが、2017年を通してVRデバイスの利用者は増え続けている。多くの業界でVRの採用が進められており、活用範囲が広がることでデバイスのメーカーやコンテンツのデベロッパーも従来より大きな利益を得ることができるようになっているはずだ。
この流れに乗っているのは、新興の業界でトップに立つことを狙うスタートアップ企業やテクノロジーへの積極的な投資を特徴とするファンドばかりではない。政府や地方自治体でも、この技術を使って経済を刺激しようという動きが広がっている。
観光客を呼び込むVR映像

Googleストリートビューで海中へ
国や自治体によるVR技術利用の一例としては、土地の魅力をアピールする360度映像の公開がある。特に観光に力を入れている国や地域では、単なる360度映像だけでなくその土地を訪れたような体験ができるバーチャルツアーコンテンツを公開していることもあるほどだ。
VRを使ったハワイ州の取り組み
VR技術を利用したコンテンツの開発に特に積極的な地域としては、ハワイ州が挙げられる。観光が主要産業となっている地域とあって、新しい技術を活かしてその魅力を発信することにも前向きだ。VRInsideではこれまでにも、ハワイ州の取り組みをいくつか紹介している。
旅行先として人気があるオアフ島、ハワイ島、マウイ島などで可能なアクティビティをまとめた360度映像の公開、本当の旅行へのきっかけにしてもらうことを狙った体験施設でのバーチャルトリップの提供、屋外VRドームを引っさげて日本で行われたイベントに参加したこともある。
他の観光地もVRを活用し始めているが、ハワイ州観光局はその中でも特に動き出しが早い。さらに、継続的にVRを使った試みを行っている。
他の地域の例
ハワイ以外の地域としては、同じくアメリカのルイジアナ州も地域の美しさを伝えるための道具としてVRを活用している。
自然を売り物にする地域ばかりではない。フィラデルフィアでは市庁舎やショッピングモールといった街の施設を疑似体験できるVRツアーを公開している。
また、自治体ではなく航空会社や旅行会社、その土地のスタートアップ企業が地域の魅力を発信するVRコンテンツを開発する例も多い。日本の都道府県でも、北海道や長崎、沖縄を訪れることのできるVRコンテンツが存在している。
VR映像を制作するための機材やソフトウェアが充実してきたこと、制作サービスを提供する企業が増えてきたことでコンテンツ制作に必要なコストは小さくなっている。同時にVR映像を視聴可能なデバイスを所有するユーザの数も増え続けているので、今後ますますこうしたコンテンツを公開する地域は増えるはずだ。
取り入れられる最新技術

カリフォルニア州の図書館にOculus Riftが設置
観光客向けのVR映像コンテンツは分かりやすい利用例だ。だが、自治体によるVR技術の利用はVR映像だけにとどまらない。これはほんの始まりに過ぎないようだ。
ハイテク研究・教育への投資
特に大きな投資の例としては、ニューヨーク市のVR/AR研究施設に対するものがある。
ニューヨーク市では、VRとARを扱うラボに対して600万ドル(6.8億円)の資金を投じることが計画されているという。この施設はNYUタンドン・スクール・オブ・エンジニアリングの一部として、新技術を開発し、スタートアップ企業が育つ場となることを期待されている。
この施設自体が雇用を生み出すだけでなく、市が行う他のVR事業に従事する人材を育てることも施設の役割だ。ニューヨーク市は、市内でハイテクを扱う「良い仕事」を増やすことを狙っている。
図書館や学校で使われるVR技術
ニューヨーク市がVRに対して大胆な投資計画を発表していることは事実だが、他の地域でもこの技術の採用を進めているところがある。
アーカンソー州は、公立学校の教育にVRデバイスを取り入れる計画だ。州内の学生にコンピュータスキルを磨く意欲を与え、STEM分野の仕事を考えるきっかけになることがその理由である。
公立学校でVRの導入を進めている例は多くないが、アーカンソー州以外にも事例はある。導入費用は必要だが、離れた地域のことを学ぶためには非常に有効なツールになっているようだ。
また、カリフォルニア州では学校ではなく図書館にOculus Riftを導入する試みが行われている。図書館への設置により、デバイスを購入するお金がなくてもVRを体験できる。今までコンピュータと無縁だった子供たちの中から天才プログラマーやIT起業家が育っていくのかもしれない。
参照元サイト:State Tech Magazine
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