日本オムニチャネル協会が主催する「グローバルアカデミー」では、「日本の働き方と学び方、世界との展望にみるDXの視点」というテーマのもと、活発な議論が行われた。登壇者は、米ロサンゼルスで自身のマーケティング会社「MIW Marketing and Consulting Group」のCEOとして活躍する岩瀬昌美氏と、日本オムニチャネル協会会長の鈴木康弘氏である。
グローバル化とデジタル化が加速する今、日本は大きな岐路に立たされている
議論の中心となったのは、「日本の常識は世界の非常識ではないか?」という問いだった。かつては高度経済成長を牽引し、世界を驚かせた日本経済だが、現在では一人当たりGDPの順位は先進国の中でも低迷しており、国民の約8割が将来に不安を感じているという調査結果もある。この経済的停滞の背景には、「働き方」と「学び方」の硬直化があると指摘された。
特に深刻なのは、働き方改革に対する誤解だ。日本では労働時間の削減こそ進んだものの、給与水準は伸び悩んでいる。一方、欧米諸国ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進し、IT導入による業務効率化を通じて生産性を高め、その結果として賃金も上昇している。日本では「働き方を変えずに労働時間だけを減らす」という不完全な改革が、生産性の低下を招いている可能性がある。
もう一つの大きな課題は、「学ばない社会人」の存在である。グローバル就業実態・成長意識調査によると、「自己啓発を何もしていない」と答えた社会人は52%。1日あたりの平均学習時間はわずか6分にとどまり、先進国の中でも最低水準となっている。このままでは、変化の激しい現代において新たなスキルや知識を身につけることができず、企業の競争力も低下する一方だ。
こうした現状に対し、米国在住歴34年の岩瀬氏からは、働き方に対する新しいアプローチが紹介された。日本では「オンとオフを明確に分ける」ことが理想とされるが、アメリカではその発想自体が主流ではないという。仕事とプライベートを明確に切り分けることが、かえってストレスの要因となり、生産性を下げることもある。代わりにアメリカでは、「ライフワークインテグレーション(統合)」という考え方が浸透しており、仕事と生活を一体化・補完し合うスタイルが支持されている。これは、働く人の幸福度を高めるだけでなく、創造力や集中力を引き出す効果もある。
DX、AI、グローバル人材――これからの日本が直面する課題は多岐にわたる。しかし、時代の流れに取り残されるのではなく、柔軟に世界から学び直す姿勢こそが、今まさに求められている。グローバルアカデミーは、そうした変革への「気づき」と「実践」の場として、今後ますます重要な役割を果たしていくだろう。
詳しくは「日本オムニチャネル協会」公式サイトまで。
https://omniassociation.com/