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ウサギは「自分の歯」を食べてカルシウムを摂取していた!


スイス・チューリッヒ大学の研究チームは、ウサギが自らの歯を粉末として摂取し、カルシウムを効率的に再吸収していることを発見しました。この研究は、ウサギの歯が無限に伸び続ける特性に基づくもので、歯を磨耗させた後にその粉末を摂取することで、標準的なカルシウム補助剤よりも高い吸収率を示したことが確認されました。実験では、ウサギに2種類の餌を与え、異なるカルシウム吸収率を測定したところ、歯の粉末を含む餌を食べた方が高い吸収率を示しました。この発見はウサギの栄養マネジメントに新たな視点を提供し、飼育ウサギのカルシウム摂取方法に見直しを提案しています。この自然のリサイクルシステムは、他の動物にも存在する可能性があり、さらなる詳細調査が期待されています。

ウサギは常に何かをかじっている印象があるかもしれません。

これは単に食欲旺盛なだけではなく、生きるために欠かせない「歯の管理」に理由があります。

ウサギの歯は一生伸び続けるため、頻繁に咀嚼することで、どんどん伸びてくる歯を磨耗させているのです。

そんなウサギの歯に関して、スイス・チューリッヒ大学(University of Zurich)の研究チームが驚きの発見をしました。

なんとウサギは自分の歯を食べることで、効率的にカルシウムを吸収していたのです。

研究の詳細は2024年11月25日付で学術誌『The Veterinary Journal』に掲載されています。

目次

  • ウサギは自分の歯を食べる?
  • ウサギは歯を食べて歯を生やしている可能性

ウサギは自分の歯を食べる?

ウサギの歯は私たち人間の歯と異なり、一生涯伸び続けます。

この特殊な性質はウサギが草や木の皮などの硬いものを常にかじる習性を持ち、それによって歯が摩耗することから進化したと考えられています。

これまで、ウサギが歯の成長を維持するためにはカルシウムを豊富に含む食事が必要だと考えられていました。

実際、野生のウサギはカルシウムが多く含まれる草や葉を好んで食べていることが確認されています。

しかし飼育されているウサギでは、過剰なカルシウム摂取が腎臓や尿路に負担をかける可能性があることが指摘されています。

そのため、ペット用ウサギの餌には適量のカルシウムが含まれており、栄養バランスが考慮されています。

ところが今回の研究では、ウサギが自らの歯の粉末を摂取し、それによってカルシウムを補給している可能性があることが示されました。

この発見は、ウサギのカルシウム摂取の仕組みを根本から見直すきっかけになるかもしれません。

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アナウサギ/ Credit: ja.wikipedia

研究チームは今回、8匹のメスのアナウサギ(学名:Oryctolagus cuniculus)を対象に、2週間にわたる給餌実験を行いました。

実験では、ウサギに対して次の2種類の餌を与えました。

  1. 標準的なカルシウム補助剤を含む餌
  2. 粉砕したウサギの歯を含む餌

その後、ウサギの糞を分析し、どの程度のカルシウムが体内に吸収されたかを測定しました。

結果として、歯の粉末を含む餌を食べたウサギは、摂取したカルシウムの33%を消化・吸収していたのに対し、標準的なカルシウム補助剤を摂取したウサギはわずか20%しか吸収できていませんでした。

この結果は、ウサギが咀嚼の度に生じる歯の粉末を摂取することで、より効率的にカルシウムを取り込める可能性を示しています。

しかも、これによりカルシウムの過剰摂取による健康リスクを低減できるとも考えられています。

ウサギは歯を食べて歯を生やしている可能性

この研究によると、ウサギの歯の摩耗によって生じた微細な粉末は、そのまま飲み込まれ、消化管を通じて再び吸収されている可能性があります。

つまり、ウサギの体内では「自分の歯を食べることで歯を成長させる」というリサイクルシステムが働いていると考えられるのです。

これまで、ウサギのカルシウム摂取については、主に食事からの供給が前提とされていました。

しかし今回の研究によって、ウサギは自らの歯を再利用することで、効率的にカルシウムを補給している可能性が示されました。

さらに、この知見はペットウサギの飼育方法にも影響を与えると思われます。

ペットのウサギにはカルシウムを多く含む餌が与えられることが一般的ですが、それが本当に必要なのか、改めて検討する必要があるかもしれません。

そもそもウサギがすり減った歯の粉末を食べているのだとしたら、追加でカルシウムを与える必要はないかもしれないのです。

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Credit: canva

ウサギが自らの歯を食べることでカルシウムを補給しているという発見は、まさに自然が生み出した驚異の仕組みです。

この研究はまだ初期段階であり、今後さらに詳細な調査が必要とされていますが、ウサギの生理学や栄養学に関する理解を深めるうえで重要な一歩となるでしょう。

もしかすると、私たちが知らないだけで、他の動物たちも同様の「リサイクルシステム」を持っているかもしれません。

自然界には、まだまだ驚きの発見が隠されていそうですね。

全ての画像を見る

参考文献

Rabbits may have a surprising source of calcium — eating their own teeth
https://www.livescience.com/animals/land-mammals/rabbits-may-have-a-surprising-source-of-calcium-eating-their-own-teeth

元論文

Rabbit teeth serve as a calcium source for rabbits (Oryctolagus cuniculus)
https://doi.org/10.1016/j.tvjl.2024.106268

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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