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【神技】接近してるのに「近づいてない」ように見せるコウイカの新カモフラージュ!


英ブリストル大学の研究チームが、コウイカの一種「コブシメ」が行う革新的なカモフラージュ技術を発見しました。この技術は「パッシングストライプ」と呼ばれ、縞模様を体全体に流すことで獲物が迫っていることを認識しにくくするものです。このカモフラージュは、獲物となるカニに実験された結果、動く縞模様が獲物の逃避反応を最も抑制することが明らかになりました。研究ではさらに、コブシメは自身の接近スピードに応じて縞模様のリズムを調整し、獲物の視覚を巧みに欺いていることも示されています。この発見は、従来の“動くとバレる”という常識を覆すものであり、自然界にはまだ多くの未知のカモフラージュ戦略が隠されていることを示唆しています。

コウイカの神がかったカモフラージュが新たに発見されました。


このカモフラージュを行っていたのは、コウイカの一種「コブシメ(学名:Ascarosepion latimanus)」です。


英ブリストル大学(University of Bristol)の研究チームは、コブシメが狩りの接近段階で、まるで催眠術のように縞模様を動かすことで、獲物に「近づいていない」と勘違いさせていることを発見しました。


獲物からすれば「近づいていないと思ったら、実はもう目の前にいた」という恐怖の状況に陥ります。


研究の詳細は2025年3月26日付で科学誌『Science Advances』に掲載されました。




目次



  • 動くのにバレない新カモフラージュ⁈
  • 近づいているのに近づいていないように見える神技

動くのにバレない新カモフラージュ⁈


カモフラージュと聞くと、体色を背景と同じ色に変えて微動だにしない生き物の姿が思い浮かぶでしょう。


実際、昆虫やカエル、魚類など、多くの生物がこの能力を備えています。


しかし、そうしたカモフラージュは基本的に「動かない」ことが前提です。


なぜなら、動けば背景との違いが生まれて姿が露見し、敵にバレてしまうからです。


この”動いた瞬間にバレる”という宿命は、天敵から身を隠すためのカモフラージュならまだしも、狩りのためにカモフラージュを使う捕食者にとっては大きな悩みでした。


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胴体から足先にかけてゆっくりと縞模様を流すコブシメの図解/ Credit: Matteo Santon et al., Science Advances(2025)

獲物に気づかれずに接近するためには、音も立てず、姿も見せずに近づく必要があります。


それでも自然界では、巧みにこの壁を乗り越えてきた生き物たちが存在します。


例えば、木の葉のように揺れるナナフシや、風にそよぐツタに似た動きをするヘビなどは、動きながらでもカモフラージュを成立させています。


そして今回注目されたコウイカの一種「コブシメ」は、狩りのための“動きながら隠れる”戦略を独自に進化させていることがわかりました。


それが暗い縞模様を頭と腕にゆっくりと流れるように走らせる「パッシングストライプ(passing stripe)」という特殊な狩りの技法です。


上の画像はそのプロセスを図解したものになります。


では、その神技を実際の映像で見てみましょう。


近づいているのに近づいていないように見える神技


コブシメのパッシングストライプは、単なるカモフラージュではありません。


縞模様が一定のリズムで胴体から下方に向かって流れることで、視覚的には動いているけれど、迫ってきているようには見えない錯覚を獲物に与えられるのです。


この研究では、コブシメの獲物となるカニを対象にした実験が行われました。


ディスプレイ画面に捕食者を思わせる視覚刺激を表示し、その動き方によってカニがどのように反応するかを観察したのです。


実験では、カニに対し「無地・動かない縞模様・動く縞模様」の3つの捕食者刺激を与えています。


その結果、コブシメのように縞模様が動いているときに、カニの逃避反応が最も少なくなることが明らかになったのです。


画像
Credit: Matteo Santon et al., Science Advances(2025)

さらに野外では実際に狩りを行うコブシメの映像を多視点カメラで撮影し、縞模様の動きと接近速度の関係も分析されました。


興味深いことに、コブシメは獲物に近づくほどスピードを落とし、それに伴って縞模様の動きの頻度も変化させていたのです。


つまり、泳ぐスピードに応じて縞のリズムも調整していることになります。


上の映像で泳ぐスピードと縞模様のリズムも同期が確認できます。


また、カニの視覚モデルに基づいたシミュレーションによって、縞模様の動きが「捕食者の接近を示す典型的な視覚的手がかり(拡大する影など)をかき消す」ように働いていることも示されました。


こうしたコブシメのパッシングストライプと同じカモフラージュは、自然界に前例がないとのことです。


こちらはパッシングストライプでこっそり近づいて、最終的に獲物を捕獲するシーン。


画像
Credit: Matteo Santon et al., Science Advances(2025)

これまでの常識では、動くとバレるからこそカモフラージュが難しいとされてきました。


しかしコブシメは、あえて目立つ動き=「縞模様のリズム」で別の動きを上書きすることで、獲物が受け取る視覚情報を巧みに欺いていたのです。


この研究は、動きがカモフラージュを破るという従来の常識に一石を投じるものです。


自然界には、私たちがまだ知らない「カモフラージュの戦略」が数多く隠されているのかもしれません。


全ての画像を見る

参考文献

Cuttlefish ‘mesmerise’ their prey with a moving skin pattern, study finds
https://www.bristol.ac.uk/news/2025/march/cuttlefish-camouflage.html

元論文

Stealth and deception: Adaptive motion camouflage in hunting broadclub cuttlefish
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adr3686

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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