史実と違いすぎるということで大炎上、販売元の講談社が回収を行った上で絶版となったゲームの歴史。著者がもしドラで人気となった岩崎夏海さんということもあり、悪い意味で大きな話題となりました。SNS上では間違いを指摘したり、誤った歴史を修正するなどの動きも見られましたが、筆者としてはとある「副読本」をオススメしたいんです!
あまりにずさんな「ゲームの歴史」は回収、絶版に……
2022年11月14日、鳴り物入り講談社より発売された「ゲームの歴史」1~3巻。もしドラの大ヒットやブレイク前のAKB48のAPなどの経験がある岩崎夏海氏の著書(ブックライティングを務めた稲田豊史氏との共著)ということもあり、発売前から注目を集めていました。
しかし蓋を開けてみると、あまりに適当過ぎる内容で大炎上!具体的にどこというよりも、最初から最後まで脳内で思い込んだことを綴るという「歴史本」とは程遠い内容。その後回収され絶版になったことが、朝日新聞や読売新聞でも報じられる騒動となりました。
「ゲームの歴史」販売中止に 講談社は「編集部の事実確認が不十分」 #朝日新聞デジタル https://t.co/jEwms3IeFl
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) April 10, 2023
「ゲームの歴史」を買って読んでみたのですが……
実はこの騒動の前に「ゲームの歴史」をデジタル版で3巻全てまとめて買ってしまいました。筆者のようなゲーム開発経験がないただのゲームオタクでも、読みながらツッコミどころしかないな……と。3巻で4,800円を支払ったことに後悔しかありません。
ちなみにツッコミどころの一つを例にしてみると……
実際、本章ではこれまでのゲーム史に登場してきた名だたる国内メーカー…任天堂、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)、セガ、スクウェア・エニックス、コナミ、ナムコ、カプコンなど…が、携帯電話ゲームの開発メーカーとしては一切登場しませんでした。(ゲームの歴史3 第18章iモードとガラケー)
この手の内容が数ページに1つ以上あるわけですよ……いうまでもありませんが、iモードには「Nintendoモバイル」の存在、ぷよぷよや頭文字D、ドラクエにFFもありました。筆者はファミスタやパックマン、リッジ、ドラス、ワルキューレなどもiモードで遊んでいたのですが……。
これがゲームの歴史とかいわれたら、開発者や歴史の証人でもないゲームファンですら大激怒間違いなしです。実際にクレームが殺到して、回収及び絶版になったことだけは出版社の英断だとは思いました。
有識者たちが続々反論!そして素晴らしい副読本が登場!
この惨状を有識者の方々が指を加えて見ているはずもなく「ゲームの間違った歴史を拡散させるな!」というわけで、様々な反論がされることとなりました。
中でも目立って行動を起こされたのが、筆者の愛読書でもあった「Beep」でライターをされていたり、PCエンジン「イースI・II」や「天外魔境II 卍MARU」のプログラマーでもあった岩崎啓眞さん。筆者にとって神様のような存在の方で、どれほど彼の作ったゲームに時間を費やしたか……。
その岩崎啓眞さんは、web上で「ゲームの歴史」の問題点を指摘されており、そちらに加筆の上で新刊として発売されたのが「ちょっとは正しいゲームの歴史」なのです!
「ゲームの歴史」を訝しげに眺めていた筆者でしたが、こちらの「ちょっとは正しいゲームの歴史」を読むことで、一気に「ゲームの歴史」に意味が出てきました。おそらく「ゲームの歴史」は、多くの方が誤解したり都市伝説的だったものが「歴史」として書かれているのです。
それらを事実無根として、片っ端から訂正を重ねていく「ちょっとは正しいゲームの歴史」という本。これは、妄想で作られた本よりも数倍どころか数十倍手間が必要だし、ある意味メンタルがやられる作業かと……。
既に委託されていたサイトなどではほぼ完売しておりますが、夏コミでの頒布を予定しているということなので、手に入れたい方は「夏コミ」へ行くしかないかも。
コミケ分を除いた余部を全部はいたので、これにて打ち止めでございます。
瞬殺されたら、さすがにまた増刷考えますが…できれば許していただきたい https://t.co/6YMW0BQgx1— 岩崎啓眞@スマホゲーム屋+α (@snapwith) June 24, 2023
実際に読んでみると、本当に面白すぎて手が止まらないという意見に納得しかありません。「ゲームの歴史」を読んでいなくても、丁寧に引用されているので「副読本」とはいえ内容が理解できないということはないでしょう。むしろ「ゲームの歴史」単体で読んでも意味不明ですけれども。
寝付けないので「ちょっとは正しいゲームの歴史」を読み始めたら面白すぎて止まらない。
原本は回収絶版になってしまったのでその全容は知りませんが、ちょっと調べたらすぐに事実が分かる事まで作者の主観で書き散らしてたんだなぁ
BEEP購入特典のおまけペーパーでコーヒーを吹きそうになりました。 pic.twitter.com/kAcTEoIiPX— 猫茶漬け (@nukochazuke) June 26, 2023
講談社という大手が、何をどう間違って世に出してしまったのか理解に苦しむゲームの歴史。それらが史実として扱われないよう、誤解を生まないように尽力された有識者の方々への感謝と共に、じっくり読みたい本でした。
B5版86ページの本ですが、内容は隙間なしにビッシリなので、文庫本換算だと300ページに相当する読み応えがあるように感じます。国会図書館にも納本されたようですので、ゲームの歴史が正しく後世に伝わりますように……。
「ゲームの歴史」の話をしていて思い出したのですが、最近は「名前が書いてあるカセット」って見かけなくなりましたよね。そもそもゲームの貸し借りをしなくなりましたから。