はじめに
台湾の人々が“一度は行かねば!”と口を揃える阿里山。嘉義県にある阿里山山脈を中心とした山岳地帯のことで、その一部に「阿里山國家森林遊樂區」が整備されています。特に、日本統治時代にヒノキの運搬のために作られた阿里山森林鉄道は、海外からの注目度も大! 自然の雄大さに触れる旅をぜひ。
ご来光、ご神木、森林鉄道、高山茶。唯一無二と出合う旅。
「阿里山國家森林遊樂區」での見どころは、標高2000mを超える高地から見る日の出、夕陽、雲海、森林、鉄道の五大絶景。特に終点駅近くにある展望台から望む“ご来光”は、阿里山訪問のメインイベントといえるでしょう。天候の影響を受けやすいため、完全な姿を拝むべく、何度も足を運ぶリピーターが国内外に多数!
日の出の時間に合わせて運行する鉄道で、ご来光スポットへ。
ご来光を拝むには、日の出の1時間前に発車する、阿里山森林鉄道の祝山線に沼平駅から乗車し、終点の祝山駅で下車。阿里山植物園方面へ15分ほど歩くと、星空と朝焼けが混ざり合う空を見渡せる小笠原山觀景台へ到着。ここで感動の瞬間を待ちます。
満点の星空、朝焼け、日の出、早朝の山景……何もかもが幻想的!
展望台から東の景色を望むと、隣県の南投県東埔エリアや台湾最高峰の玉山山脈を眺めることができ、登山客を肉眼で確認することも。彼らが携帯している灯りが樹々の間でゆらめく様子もまた幻想的です。西側を望むと、朝の光を浴びる雲嘉南平原が広がっていて、天気が良ければ、西の離島・澎湖群島が見られるなど、まるで台湾の中心に立って、四方八方に広がる景色を見渡すような感覚が味わえます。
ご来光を見終えた後は、徒歩または環境に配慮した電動遊覧車で、對高岳駅へ。木造のプラットホームは素朴な風情が魅力で、祝山駅に劣らぬ人気です。隣接する對高岳歩道は、往復約1時間半の気軽に挑めるハイキングコース。7月以降は、駅や線路周りに鮮やかなオレンジ色のヒメオウギスイセンが開花。秋冬シーズンには、台湾特有の赤カエデの紅葉、うっすら霜が降りた線路といった情緒ある景色が広がっていて、どの季節もフォトジェニックな自然の姿を見せてくれます。
ヒノキが香る森を歩き、ご神木を仰ぐ。特別感あるハイキング。
「阿里山國家森林遊樂區」には、木材運搬のために敷かれた線路が数多く残されており、観光鉄道として使われていない支線は、遊歩道として整備されています。そのなかのひとつ、水山線は、終点まで歩くと樹齢2700年超の台湾ヒノキ“水山紅檜神木”を仰げることで知られるコース。景観台に座って、フィトンチッドに満ちた涼やかで神聖な空気を胸いっぱいに吸い込んで、心身のリフレッシュをはかりましょう。
国宝級の美しいキジがそこここに。珍しい野生動物が多数。
動動物の生態観察に興味があるなら、小笠原山觀景台の隣にある「高山植物園」へ。全く人見知りをしないキジたちが日の出と共に活動をはじめ、運が良ければ、至近距離でタイワンカモシカやキョンといった野生動物に遭遇することも。
また、沼平公園近くには、2つの資料館を開設。「臺灣一葉蘭生態故事館」では、台湾の高山に原生するラン“タイリントキソウ”について詳細に解説。「阿里山山椒魚故事館」では、生ける氷河期の化石とも呼ばれる山椒魚に関する知識が学べます。台湾は、山椒魚が生息する最南端の地。こうした取り組みは、生態を守る重要な役割を担っています。
阿里山の恵み、高山烏龍茶を産地で味わうという贅沢。
そして、阿里山の名産といえば、烏龍茶。雲霧帯にあり、昼夜の気温差が大きい阿里山で採れる高山烏龍茶は、繊細な香りと柔らかな甘みが特徴。小笠原山觀景台近くにあるティーハウス「茶田35號」では、特富野地区で採れた茶葉を使ったお茶がいただけます。茶文化体験のほか、食事にも力を入れていて、ブランチメニューは日の出を見に訪れた人々に大好評。原住民の手作りマントウと季節の野菜、淹れたてのお茶は、深夜から日の出を目指して準備してきた登山客の疲れた体に沁みる味わいです。
また、アートの発信地としての役割も担っていて、店内での展覧やアーティストとコラボした商品の制作などに取り組んでいます。なかでも茶葉のパッケージデザインは、ドイツのレッド・ドット・デザイン賞を受賞。最注目の阿里山土産といえるでしょう。
阿里山の絶景は、台湾の文学者のインスピレーション源でもあり、過去100年の間に多くの詩を生み出してきました。その代表が鄒(ツォウ)族出身の村長・高一生氏。沼平公園の脇のお花見コース“櫻之道”には、高氏をはじめとした阿里山関連の詩が書かれていて、詩人たちの感性に触れながら、格調高い山歩きを楽しめます。
おわりに
唯一無二の自然と歴史を五感で体験できる阿里山でのひととき。たっぷり時間をとって、見どころを余さず回るのがオススメです。
・阿里山國家森林遊樂區
住所:嘉義県阿里山鄉中正村59号