次第に進むコロナワクチン接種。さまざまな副作用の情報が飛んでいるが、果たしてワクチン接種直後にクルマは運転できるのか? また、クルマの運転にどのような影響が出るのかを緊急レポート!!
TEXT&PHOTO:高橋昌也
徐々に進みつつあるコロナワクチン接種。もう2回目までの接種も済んだという高齢者や医療関係者などの方々もいらっしゃる一方で、「まだまだいつになるかわからない」という方々も少なくないでしょう。いや、「日常的にクルマを運転する」という世代の方々は、ほとんど後者なのではないかと思います。
筆者はワクチン接種券配布などの対応が比較的早い自治体に居住していたことと、数年前に余命宣告を伴う大病を患って(その後、手術・治療の成功により余命宣告は撤回)いくつかの後遺症が残ることから、先日、「基礎疾患を有する者」の枠で幸いにして1回目のワクチン接種を無事に終えましたが、じつはこの時に仕事がら気になっていたのは「ワクチンを接種した後に、どの程度の痛みが生じるのか? また、それはクルマを運転できる程度のものなのか?」という点でした。
そこで今回は、この点に絞ってレポートをお届けしたいと思います。無論、ワクチンに対する痛みなどの反応は個人差があるため、筆者の体験がすべての方々に当てはまるものではないことをあらかじめお断りしておきます。
ワクチン接種の流れをおさらい
すでにさまざまなメディアで紹介されていますが、簡単に接種までの流れをご紹介しておきましょう。
ワクチン接種は基本的に居住自治体から「ワクチン接種クーポン券」が送られてくるところから始まります(現在ではその限りではない接種方法も存在しますが、ここでは特殊な事例とします)。
1:ワクチン接種クーポン券に記された「券番号」をもとに、接種日と時間、接種場所を、各自治体あるいは自衛隊運営の大規模接種会場などのホームページやコールセンターの受付電話などで予約します。
2:接種当日は、この接種クーポン券と、同封されている「新型コロナワクチン接種の予診票」に必要事項を記入し、免許証や健康保険証などの身分証明できる書類を持って会場に向かいます。
筆者は運転に対する接種の影響を検証するため、交通事情を熟知した、有料駐車場のある病院を接種会場に選んで自家用車で向かいましたが、徒歩以外では、基本的には公共交通機関やタクシーなどのご利用をお勧めします。特に「万が一」を考えた場合にはタクシー利用がベストではないかと思います。
さて、ワクチン接種後、会場からすぐには帰れません。アナフィラキシー(薬や食物が体に入ってから、短時間で起こることのあるアレルギー反応)や血管迷走神経反射(緊張や強い痛みをきっかけに、立ちくらみがしたり、血の気が引いて時に気を失うことがある、誰にでも起こる可能性のある体の反応)などを起こす可能性があるため、15分以上は会場内の待機場所で座って様子をみることになります。
過去にアナフィラキシーを含む、重いアレルギー症状を起こしたことがある方や、採血などで気分が悪くなったり、失神などを起こしたことがある方は、30分以上、待機することになります。筆者は大事をとり、会場のスタッフの方に申し出て自主的に30分以上待機しました。
運転に支障が出そうなのは8時間後あたりから?
接種会場での待機を終えて自宅へ向かいます。
筆者は利き腕ではない側、左腕の三角筋上部に注射しましたが、まったく痛みは感じませんでした。これは筆者がほぼ毎月のように採血を行なっており、注射針の痛みに慣れているからかもしれませんが、間違いなくワクチン接種の注射針は採血などの針より細いので、痛覚過敏の方はともかく、一般的にはさしたる痛みは感じないと思います。
接種は会場への入場から注射までは10~15分ほどで終わります。これに注射後の待機時間が15分以上ですから、一般には30分程度で終わります。筆者は30分待機しましたので、小1時間ほどになります。この後、自家用車を運転して接種会場の病院から4kmほど離れた自宅へ、約10分ほどのドライブで戻りましたが、ワクチン注射直後、この程度の運転はまったく問題はありませんでした。
結局、ワクチン接種後、個人的には明確に運転に支障が出るほどの身体的な異常を感じることはありませんでしたが、「ひょっとしたら運転に支障が出るかもしれない」という僅かな違和感は感じました。
それはワクチン接種のレポートや体験談によく見られるように、注射直後ではなく、後から徐々にやってきます。筆者の場合は注射から6時間後ぐらいから、徐々にこの違和感が強まってきました。
それは「痛み」と言うのではなく、どちらかと言えば「筋肉疲労」に近い感覚です。重い物を持ち上げた後の脱力感とでも言えるでしょうか。痛みに敏感な人だと鈍痛に感じるかもしれません。
接種会場で配布される厚労省のチラシには、「接種後、数日以内に現れる可能性のある症状について」がまとめられていますが、50%以上の人にこの「接種部位の痛み、疲労、頭痛」が現れるようです。ちなみに10~50%の人に「筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱、接種部位の腫れ」が、1~10%の人に「吐き気、嘔吐」が現れるようです。
また、注射した点から半径5cm程度の範囲、ほぼ手のひらの大きさの範囲を強めに押すと、若干の鈍痛を感じるようになります。さらに、注射した方の腕を伸ばして内側にひねると違和感が鈍痛になりました。そこで接種直後と8時間後とに実際にクルマのハンドルを握って検証をしてみました。
検証に使用したのは筆者の自家用車、国産軽自動車になります。注射直後は左右に難なくハンドルをきることができました。参考までに1回で回せる角度は左右52度といったところです。
違和感を持ち始めた8時間後にハンドルをきると、注射をしていない右腕が上にくる回し方(左折)では問題はなかったものの、注射した左腕が上にくる回し方(右折)では28度を超えると、注射点を中心に痛みを感じました。これは筋肉が伸びる際に痛みを感じるという事です。
検証に用いたクルマは軽トラックがベースのワンボックス車ですから、ドライビングポジションはミニバンやSUVのようなアップライトな物となります。スポーツカーのような低めのドライビングポジション、あるいは腕を伸ばし気味に運転している方の場合、もっと浅い角度から違和感や痛みを感じるものと予想されます。
筆者の場合は違和感(あるいは鈍痛)は増大してワクチン接種から13時間後ぐらいをピークに、徐々におさまる方向に転じて行きました。24時間後にはほぼ消失し、36時間後には完全に消失しています。
これから考えると、ワクチン接種直後の運転は問題ないものの、時間が経つにつれて違和感(鈍痛)が強まるため、接種日と翌日の運転はなるべく避けた方がよいでしょう。また、ハンドル操作に支障が出ることが考えられますから、縦列駐車や車庫入れなどの際には、いつもより2~3回多くハンドルを切り返すつもりでいた方がよいでしょう。無論、急ハンドルなどもってのほかですから、いつもよりスピードを控えた走りをされることをお勧めします。
なお、一般に「2回目の接種の方が1回目より副反応が強い」と言われています。実際に運転への影響はどうなのか、機会を得てもう一度、接種2回目の影響について検証してみたいと思います。