軽自動車の直噴といえばワゴンR-RRを思い出すが、ダイハツも直噴の軽自動車を発売していた。果たしてどのようなエンジンなのだろうか。
ライバルのスズキが直噴ターボというフォーマットを軽自動車に搭載してきたのが2003年9月のこと。いっぽうの軽自動車の雄・ダイハツが自然吸気ながら直噴技術を軽自動車に投入したのは2002年12月だった。ミラのフルモデルチェンジにあたり、一部グレードにEF-VD型と称するそのエンジンを開発したのだ。
当時のリリースによれば「軽初、直噴エンジン(自然吸気)と、新開発「DAIHATSU STOP AND GO SYSTEM」との組み合わせにより、ミラVはガソリン車世界最高の低燃費を実現 」「高出力と低燃費を実現する、軽初の直噴エンジン(自然吸気)“トパーズ DIエンジン”と、新開発『DAIHATSU STOP AND GO SYSTEM』を組み合わせることにより、ガソリン車世界最高の低燃費(30.5km/リットル)を実現[ミラV]」としている(2002年12月20日のプレスリリースより)。
2002年末で、リッター30km/ℓ以上@10・15モードを達成していたのだ。
MTで3ドア、アイドルストップシステムを備えていたというアドバンテージは確かにある。しかし参考までに、同時にデビューした他グレードの数値を眺めてみれば最高数値で24.0、最低で19.0km/ℓと、やはりEF-VD@ミラVの燃費値は群を抜いた数字だったのがわかる。燃費スペシャルとして多くの期待が寄せられていたのだ。
EF-VD 44kW/7600rpm 65Nm/4000rpm
EF-VE 43kW/7600rpm 64Nm/4000rpm
EF-VDT 37kW/6400rpm 103Nm/3200rpm
EF-SE 35kW/6400rpm 56Nm/4800rpm
EF-VD型はポート噴射式のEF-VE型に対して、わずかなパフォーマンスアップを果たしている。圧縮比は11.0と高めの設定、当然使用燃料はレギュラーガソリンである。噴射圧力は6〜12MPaと、ポート噴射の0.3MPaに対して20〜40倍の圧力としていた。
バルブ径は吸気は24.5mmとPFI仕様と変わらないが、排気側は23mm(PFIは21mm)と拡大。リフト量/バルブスプリング仕様に違いはないのに、なぜかEF-VD型はステム長が長く取られている。可変バルブタイミング機構を吸気側に備え、開弁:BTDC42〜-8度/閉弁:ABDC8〜58度としていた。排気バルブは開弁:ABDC41〜ATDC9度。すなわち、作用角は吸気カムが230度/排気カムが148度、オーバーラップは51〜1度という数値である。
PFI仕様のEF-VE型のカム作用角は吸気220度/排気142度、オーバーラップ44〜2度という値で、直噴仕様はともに大きく取られていた。オーバーラップを大きく取っても直噴だけに「混合気の吹き抜け」を防ぐことができ、掃気の実現と両立できたのだろう。
しかし2006年の7代目ミラへのフルモデルチェンジにあたってはいずれのグレードにも搭載されず。変速機がステップATからCVTへ移行し、燃費対策が取りやすくなったことが一因にあると思われる。