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ラリーレーサー〝CRF450ラリー〟のスタイリングを踏襲し、CRF250Lの派生モデルとして2017年に追加されたのがCRF250ラリーだ。2021年、ベース車のCRF250Lとともにフルモデルチェンジを実施した。ブラッシュアップされたエンジンや大幅に軽量化されたシャシーなどCRF250Lと同様の変更を受け、さらにラリー専用設計だった足回りまで共通化。今回は低シート高モデルのSTDをじっくりと試乗してみた。
REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ホンダ・CRF250 RALLY……74万1400円
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シート高を増やさずにホイールトラベル量を伸張
CRF250Lの試乗インプレッション記事でも触れたが、新型になってこのシリーズのタイプ呼称が変更された。まずはCRF250ラリーのシート高を含めた相関図をご覧いただこう。
・従来型STD:895mm(250/265mm)→新型〈s〉:885mm(260/260mm)
・従来型タイプLD:830mm(200/180mm)→新型STD:830mm(235/230mm)
※( )内は前後のホイールトラベル量
低シート高モデルがSTD(無印)となり、サスストロークの長い方を〈s〉という呼称に。これはCRF1100Lアフリカツインに倣ったものと言える。基本設計は〈s〉をベースに行われたとのことだが、よく見ればSTDもシート高830mmはそのままに前後ともホイールトラベル量をしっかりと増やしている。タイプ呼称を変えた意味がここにあるのでは……、ということから、今回は低シート高のSTDを試乗することにした。
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新型は、タイプ設定されていたABSが標準装備となったが、それでも車重は156kg(タイプLD、ABS仕様)から152kgへと4kgものダイエットに成功している。
先代よりも燃料タンクが高さを増したこともあり、新型CRF250ラリーの存在感は軽二輪の枠を超えている。その印象はまたがっても同様で、ニーグリップエリアの広さや目の前にあるウインドスクリーンの高さ、幅の広いハンドルなどにより、400ccクラスかと思うほどにボリューム感がある。その一方で、足着き性は拍子抜けするほど良好で、身長175cmの私で両かかとが楽に接地する。ベース車のCRF250Lより12kg重いが、足着きの良さと幅の広いハンドルによって直立を保ちやすく、そこまでの車重差は感じない。
エンジンは、低回転域から極めて実用的かつ、そこにシングルらしい蹴り出し感をうまく演出している。最高出力24psを発生するのは9,000rpmだが、街中で使うのはせいぜい5,000rpmまでで、峠道で興が乗ってきてもそこまで引っ張ることは稀だ。同じ水冷シングルながら30psを発揮するKTM・250アドベンチャーほど快活な回り方ではなく、またパワー差も感じられるが、ピックアップが鋭すぎない分だけ疲れにくいという言い方もできる。なお、CRF250Lよりもわずかにメカノイズが大きいように感じたが、おそらくエンジンがカウルに覆われていることの反響音も影響しているようだ。
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ハンドリングは、昨今人気のトラベルエンデューロとして非常に優秀だ。燃料タンクの容量アップなど車重増の主な理由がフロント側にあること、またフレームマウントのウインドスクリーンやヘッドライトなどが慣性ダンパーとして機能していること、さらにカウリングの優れた空力特性などにより、倒し込みや切り返しが重くならない範囲でフロントの接地感が増しているのだ。よって、舗装されたワインディングロードでは水を得た魚のようにキビキビと向きを変える。そして、コーナリング中に予期せぬギャップに出くわし、抜重できずに通過したとしても、リヤサスが底付きするような感触はなし。残念ながら先代のタイプLDに試乗したことはないのだが、少しの段差でもバンプラバーに当たるという話を各方面から聞いていたので、開発陣はかなり注力したと思われる。そして、彼らは自信を持てたからこそ、この低シート高モデルをSTDと呼ぶことにしたのではないだろうか。
未舗装路も走ってみた。何よりうれしいのは視点が低いことと、すぐに足が着けるという安心感だ。オフロード走行が得意な人は、ホイールトラベル量や最低地上高を優先して〈s〉タイプを選ぶだろうが、一般的に林道でリヤタイヤを空転させて走ることがマナー違反とされている以上(それによってできた轍に雨水が流れ、地形が変わったり道が崩壊するため)、両足を着いてパタパタと進めることの方がメリットは大きい。付け加えると、リヤタイヤをパワースライドさせたり大きくジャンプできるようなコースなら、より軽量なCRF250Lの方が走りやすいので、なおさらCRF250ラリーは低シート高のSTDが合っているということになろう。
スタイリングはラリーレイドイメージだが、高速道路でのウインドプロテクション性能の高さや優れた安定性、乗り心地の良さなど、走りの方向性はロングライドで真価を発揮するトラベルエンデューロと言っていいだろう。同じくCRFの名を冠するアフリカツイン・アドベンチャースポーツの小排気量版と言っても過言ではない。CRF250Lとの差額は14万1900円と大きな開きがあるが、この派生モデルはツーリング好きを中心に人気が出そうな予感がする。
ライディングポジション&足着き性(175cm/64kg)
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ディテール解説
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CRF250ラリー 主要諸元
車名・型式 ホンダ・2BK-MD47
全長(mm) 2,200〔2,230〕
全幅(mm) 920
全高(mm) 1,355〔1,415〕
軸距(mm) 1,435〔1,455〕
最低地上高(mm) 220〔275〕
シート高(mm) 830〔885〕
車両重量(kg) 152
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L)
国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 46.0(60)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(クラス) 34.8(クラス 2-2)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 2.3
エンジン型式 MD47E
エンジン種類 水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
総排気量(cm3) 249
内径×行程(mm) 76.0×55.0
圧縮比 10.7:1
最高出力(kW[PS]/rpm) 18[24]/9,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 23[2.3]/6,500
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 12
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比
1速 3.538
2速 2.250
3速 1.650
4速 1.346
5速 1.115
6速 0.925
減速比(1次/2次) 2.807/2.857
キャスター角(度) 27° 30′
トレール量(mm) 109
タイヤ
前 80/100-21M/C 51P
後 120/80-18M/C 62P
ブレーキ形式
前 油圧式ディスク(ABS)
後 油圧式ディスク(ABS リアキャンセル機能付き)
懸架方式
前 テレスコピック式(倒立サス)
後 スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式 セミダブルクレードル
製造国 タイ
※〔 〕内は〈s〉