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内燃機関超基礎講座 | スクデリエンジン──2気筒なのに1気筒運転。なぜスプリットにするのか。


2011年の東京モーターショー会場に、ひっそりと展示されていた切削加工も生々しいプロトタイプエンジン。これこそが、技術的に困難とされていたスプリットサイクルを実現したスクデリエンジンの実物であった。

火花点火機関を効率良く運転するためには、良い圧縮/点火/混合気が必要だと言われる。危急の課題とされる環境問題においては良質な燃焼が必須とされていて、そのために技術者や研究者たちは良い混合気を作るべく、日夜努力を重ねている。ここに紹介するスクデリエンジンは、4ストロークの吸入/圧縮と、膨張/排気行程をふたつのシリンダーに分配して仕事をさせる構造を持つ。

4ストローク機関を前期/後期に分けたスプリットサイクル構造で、前期行程では空気圧縮に特化していることから小径ボアとしている。空気を圧縮すれば高温化しノッキングには不利だと思われるが、スクデリグループ社は、連通路を通る間に冷却がなされると説明する。後期行程側は実際の軸出力仕事に特化できるため、ストロークは大きくとっているだろう。むしろ、そのためのスプリットサイクル構造と思われる。

通常であれば混合気を吸入して圧縮させ、というプロセスを経る4ストロークについて、高速流入する圧縮空気を膨張/排気行程のシリンダーに送ることで、より良質の混合気を得、火炎伝播速度も向上させた。




日産・セントラをベンチマークとして各種のシミュレーションを行なった結果、最大で35%もの燃料削減データが得られたとしている(スクデリエンジンをミラーサイクル運転、エアハイブリッドを併用時)。

通常着火モード:4ストローク/サイクルをふたつのシリンダーで分けたモード。前期行程でつくられた圧縮空気は連通路を伝って直接後期行程シリンダーに流入する。流速が高いため、混合気生成は通常サイクルよりはかどるという。

エアコンプレッサーモード:減速時など、積極的な駆動力が必要とされないときは、後期行程のバルブトレーンを停止、前期行程で生じた圧縮空気をエアタンクに一時貯蔵する。いわゆる、エネルギー回生システムの一種である。

エア拡張&着火モード:エアタンクに充分な圧が望める場合には、前期行程のバルブトレーンを停止し、エアタンクから直接後期行程シリンダーに圧縮空気を吐出する。前期行程のポンプ損失を回復できるのもメリットのひとつ。

点火&チャージモード:最初に紹介した通常着火モードに加え、圧縮空気の一部をエアタンクに貯蔵するモード。軽負荷域での運転で用いるのだろう。エアタンクの圧が充分になれば、先述のエア拡張&着火モードに移行するという。

エア拡張モード:非常にユニークなモード。圧縮空気の圧力のみで後期行程シリンダーを動作させる。つまり、点火もせず、燃料も噴射しない。どれだけ走れるかはエアタンクの容量と吐出圧によるだろうが、おもしろい着眼だ。

上で説明するのが、5つの運転モード。構造はふたつのシリンダー/エアタンクだが、内容はエンジンとモーター/バッテリーと似通っているのがおわかりいただけるだろう。大きなエキストラコストを発生させることなく、使い慣れたエンジン/高圧タンクというデバイスで同等の効果を得る。




空気を用いるというと突拍子もない話に思えるが、ドイツ・ボッシュが油圧を用いるハイブリッドシステムを打ち出してきた。ついこの間までは荒唐無稽だったシステムが、今日からは当たり前となる。可能性として、ない話ではない。

2011年の東京モーターショーに突如あらわれたスクデリエンジンのプロトタイプ。それまでは画面上でしか見られなかったシステム(内部構造)だっただけに、外殻をまとうと、スクデリグループに置いていなければこれがスプリットサイクルだとわかる人も少なかったであろう。直列2気筒構造で、もちろんふたつのシリンダーを両方用いてワンサイクルを実現する。つまり、通常のサイクルで言えば単気筒エンジンに相当する。

左右のシリンダーを正面から見たところ。向かって左側が初期2行程(吸入/圧縮)、右側が後期2行程(膨張/排気)シリンダー。よって、点火プラグは右にしか備わらない。左右間をつなぐ奥の赤い部分が連通管である。

後側シリンダーヘッドのカット部分。ご覧のように、インジェクターは圧縮空気が筒内に流入する直前に備わる。バルブレイアウトはディーゼルのように直立していて、スプリングやシートが見当たらないが、試作エンジン故か。

このプロトタイプはバランスシャフトを装備。クランクピン配置は少し特殊に見える。エネルギー効率を高めるために後期行程は前期よりもストロークを伸ばしているであろうから、それも含めての対応策であろう。

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