2011年の東京モーターショー会場に、ひっそりと展示されていた切削加工も生々しいプロトタイプエンジン。これこそが、技術的に困難とされていたスプリットサイクルを実現したスクデリエンジンの実物であった。
火花点火機関を効率良く運転するためには、良い圧縮/点火/混合気が必要だと言われる。危急の課題とされる環境問題においては良質な燃焼が必須とされていて、そのために技術者や研究者たちは良い混合気を作るべく、日夜努力を重ねている。ここに紹介するスクデリエンジンは、4ストロークの吸入/圧縮と、膨張/排気行程をふたつのシリンダーに分配して仕事をさせる構造を持つ。
通常であれば混合気を吸入して圧縮させ、というプロセスを経る4ストロークについて、高速流入する圧縮空気を膨張/排気行程のシリンダーに送ることで、より良質の混合気を得、火炎伝播速度も向上させた。
日産・セントラをベンチマークとして各種のシミュレーションを行なった結果、最大で35%もの燃料削減データが得られたとしている(スクデリエンジンをミラーサイクル運転、エアハイブリッドを併用時)。
上で説明するのが、5つの運転モード。構造はふたつのシリンダー/エアタンクだが、内容はエンジンとモーター/バッテリーと似通っているのがおわかりいただけるだろう。大きなエキストラコストを発生させることなく、使い慣れたエンジン/高圧タンクというデバイスで同等の効果を得る。
空気を用いるというと突拍子もない話に思えるが、ドイツ・ボッシュが油圧を用いるハイブリッドシステムを打ち出してきた。ついこの間までは荒唐無稽だったシステムが、今日からは当たり前となる。可能性として、ない話ではない。