スバルのスポーツモデルの頂点にあるのは、WRXシリーズである。その次期型がどうなるのか、新型レヴォーグから予想してみよう。
WRXシリーズはどうなるか?
WRXシリーズ(S4とSTI)は、ひと言で言えばスポーツワゴンであるレヴォーグの「セダン版」である。スポーツセダンとして生まれたのがS4、それを「STI」の名前でさらにチューンしたホットモデルがWRX STIだ。
AWDシステムはWRX S4が「VTD-AWD」。VTDとはバリアブル・トルク・ディストリビューションの頭字語。WRX STIがDCCD方式AWDを採る。いわゆる「センターデフ式」のAWDシステムだ。
WRXシリーズの主要マーケットは、スバルの他のモデル(レヴォーグを除く)と同じく北米である。次期WRXを予想する前に、北米でのWRXの販売状況を見てみよう。
ちなみに、BRZの北米販売台数は2019年に2334台、18年に3834台となっており、スバルにとって重要度は明らかにWRXシリーズの方が上だ。
WRXシリーズは、レヴォーグのセダン版である、と書いたが、前型レヴォーグと現行WRXシリーズのサイドビューを比較してみよう。
ホイールベースはもちろん同一。フロントドア以前のパネルも共通。全長がWRXの方が短いが、短い分はリヤオーバーハングで調整している。ワゴンボディとしてラゲッジ容量を稼ぐ必要があるレヴォーグが少し長いのだ。
では、次期WRXシリーズはどうなるか?
まずはボディサイズから予想してみよう。
これは、次期WRXのコンセプトモデルある、VIZIV PERFORMANCE CONCEPT(上)とVIZIV PERFORMANCE STI CONCEPT(下)だ。上が次期S4、下が次期WRX STIと考えるのが自然だ。
次に、新型レヴォーグとVIZIV PERFORMANCE STI CONCEPTを並べてみよう。
今回もレヴォーグとWRXの関係は変わらない。ホイールベース(前型から20mm延びて2670mm)で、全長の違いはリヤのオーバーハングで決まる。新型レヴォーグの全長が4755mmだから、次期WRXは110mmほど短縮された4645mmと予想する。全幅は、フロント/リヤのブリスター状のフェンダーとブラックのクラッディングも併せて80mmほど拡幅されると予想する。全幅1875mmは、シビックタイプRと同じ。この程度なら日本でも許容されると踏む。
ということで次期WRXシリーズは
全長×全幅×全高:4645mm×1875mm×1475mm
ホイールベース:2670mm
と予想する。
現行から全長で50mm、全幅で80mm拡大する格好だ。
FA24型搭載か パワートレーンはどうなる?
次は注目のパワートレーンだ。
次期WRXシリーズは
WRX S4で300ps/400Nm
WRX STIで308ps/422Nm
を上回ることが要求される。
新型レヴォーグSTIスポーツの車重が1580kg
前型レヴォーグSTIスポーツの車重が1570kg
WRX S4の車重が1540kg
WRX STIの車重が1490kg
である。
次期型でも劇的に軽くなるとは考えにくいから、出力/トルクは現行モデル+αが必要になるだろう。
次期WRXが積むエンジンは、現在北米のアセント、レガシィ、アウトバックが搭載する2.4ℓ水平対向4気筒ターボであるFA24型と予想する。
新型レヴォーグが搭載する新開発1.8ℓ水平対向4気筒リーンバーンターボCB18型のスペックは177ps/300Nmだ。トルク・効率・レスポンスを重視したコンセプトの新エンジンをチューンして300ps/400Nmにするのは、不可能ではないだろうが、おそらくそうはならない。
現行のFA20ターボに改良を加えてさらなるパワーアップを図ることも可能だろうが、だとしたら、新型レヴォーグにもFA20ターボのグレードを残したはずだ。レヴォーグの2.0ℓモデルとWRX S4のためだけにあったFA20ターボは新型に切り替わる時点で生産終了となると予想する。
同じくBRZ/86のためにだけ存在するFA20自然吸気も、BRZ/86が新型に切り替わる時点で消滅すると予想する。
FA24型は、ボアピッチ113.0mmのF系でボア×ストロークは、94.0mm×86.0mm、S/B比(ストロークをボアで割った数字)が0.915と、いわゆるショートストローク型のエンジンだ。
WRXシリーズ、BRZ/86が新型に切り替わる時点で、スポーツ系エンジンは、FA24に統一されると予想する。
次期86/BRZ:FA24自然吸気
アセントetc.:FA24ターボ(現行アセント搭載スペック 264ps/376Nm)
次期WRX S4:FA24ターボ(300ps/400Nm)
次期WRX STI:FA24ターボ(330ps/440Nm)
と予想する。
次期S4のスペックは現行S4と同じ。これは組み合わせるトランスミッション(リニアトロニック大容量タイプ)のトルク容量も問題で、これ以上大トルクにできない(もちろんリニアトロニックにさらなる改良を加えればいいのだが)からだ。
次期STIのスペックを330ps/440Nmとしたのは、これならシビックタイプR
2.0ℓ直4ターボ(320ps/400Nm)、ルノー・メガーヌR.S.1.8ℓ直4ターボ(300ps/400Nm)、トヨタGRヤリス1.6ℓ直4ターボ(272ps/370Nm)、VWゴルフGTI2.0ℓ直4ターボ(245ps/370Nm)といったライバルを上回れるから、である。
排気量が2.4ℓなのだから、もちろん「モア・パワー」も過給圧を上げることで可能になる。2.4ℓへの排気量アップは燃費とドライバビティの改善という目的もあるだろうから、むやみにパワーアップはしてこない、と読む。それにスバルには「S208」「S209」といったスペシャルモデルの伝統もある。400ps/500Nmというようなモンスタースペックはそこに残しておく、と予想する。
AWDシステムは、WRX STIはさらに進化したDCCD式を踏襲しするが、S4は新型レヴォーグと同じくカップリング式(湿式多板クラッチを使うアクティブトルクスプリット式)となる可能性もあると予想しておく。
最後に、個人的希望を言えば、新型レヴォーグのるCB18型(177ps/300Nm)を搭載するWRX S4のベーシックグレードを追加してほしい。車重1550kgで全長4650mm程度のセダンであれば、そのスペックがスタンダードだ。
アウディA4 40TFSI
2.0ℓ直4ターボ(190ps/320Nm)
BMW320i
2.0ℓ直4ターボ(184ps/300Nm)
どちらも次期WRX S4(予想)よりやや大きくパワーがあるが、価格はおそらく200万円以上高い。スバルが作るスポーティセダンとして1.8ℓモデルの登場も(個人的に)期待したい。