
アルファロメオが久しぶりに開発した後輪駆動の4ドアスポーティセダン、ジュリア(Giulia)。プラットフォームはSUVのステルヴィオも使う「ジョルジョ・アーキテクチャー」。ジュリアのトップグレードであるクワドリフォリオは、フェラーリ譲りの510psという高出力2.9ℓ 90度V型6気筒ツインターボを搭載する。果たして、ジュリア・クワドリフォリオの快足FRセダンとしての実力や如何に?
TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

アルファロメオ・ジュリア・クアドリフォリオのスピードメーターは「330」km/hまで目盛ってある。「またまた、盛っちゃって。ま、気分を高める役には立つからいいけど」と、などと決めつけてしまったのだが、念のために調べて驚いた(調べてから乗れって話だが)。
ジュリア・クアドリフォリオの最高速は307km/hなのだ。330の数字はまったくもって盛っておらず、妥当である。恐れ入った。調べついでに確認してみると、ZF製8速ATと組み合わせる2.9ℓV6ツインターボエンジンは、510ps(375kW)の最高出力と、600Nmの最大トルクを発生する。リッターあたり出力は175ps。BMEP(正味平均有効圧)は26.1barになる。



ガソリンエンジンとしては高い部類に入るが、欧州系ハイパフォーマンスカーが搭載するエンジンにはBMEPが30barを超えるユニットも存在するので、「突き抜けてんなぁ」という感じでもない。しかし、ハイパフォーマンスエンジンであることに変わりはなく、0-100km/h加速はわずか3.9秒でクリアする。

330の数字を疑った言い訳をさせていただくと、日常走行域ではこのクルマ、極めてジェントルなのだ。ステアリングホイールのセンターパッド脇にある赤いスタート/ストップボタンを押すと、雄叫びを上げるでもなく、510psの高性能エンジンは静かに目覚める。オルガン式のアクセルペダルを踏んで走りはじめても、ヴォォォォン、バンバンバンといった勇ましいエキゾーストサウンドを発したりはしない。
しかし、「なんだか違うゾ」という感覚はすぐに湧いて出る。アクセルペダルに軽く足を載せるだけで、スムーズにかつ静かに加速し、気づいたら結構な車速に達しているのだ。「えっ、もう100km/h」という具合に。高速道路が主体のロングクルーズは力のあるクルマに限るという真理を、ジュリア・クアドリフォリオで再確認した。



低く構えたいかついフロントバンパーや、カーボンのインサートが入ったサイドスポイラーに、高い性能を誇示するかのような大径ブレーキディスクとキャリパー。リヤに回れば、ディフューザーの両脇に2本ずつテールパイプが覗いて、ただ者ではない感は全身で、しかし押しつけがましくない程度に主張している。それを考えると、ジェントルな振る舞いはミスマッチな気がしないでもない。

ジェントルなのはあくまでも仮の姿なのだ。「DNAドライブモードシステム」を操作すると、ジュリア・クアドリフォリオのキャラクターは一変する。モード切り替えのダイヤルは、シフトレバーの右手前にある。デフォルトはNで、NATURALの意味だ。アルファロメオの説明によると、「快適性と燃費性能を追求した、市街地や高速道路に最適なモード」ということになる。
大人しいほうから先に説明すると、AはADVANCED EFFICIENCYモードだ。自動的にエンジンとタイヤの接続を切るコースティング機能や気筒休止機能により、燃料消費を最適化する。Aを選択するとエンジン回転はN選択時より低めになり、その状態で状況に応じて3気筒をカットし、V6の片バンク3気筒で燃料消費率の良好なゾーンで運転するようになる。低速走行時はときにゴロゴロと、3気筒に特有の振動を感じることもあるが、「燃費を頑張っている証拠だな」と好意的に受け止めることができる。Aモードを選択し50〜60km/hで巡航した区間では16km/ℓの燃費を確認した。


DはDYNAMICモードだ。エンジン回転は高めの制御になり、アクセルペダルに対するレスポンスも強めになる。同時に、ダンパーの減衰力は「変わったな」とはっきりわかるくらいハードになる。ジュリア・クアドリフォリオは「ALFAアクティブサスペンション」を備えており、ドライブモードの選択に応じてダンパーの減衰力を切り換える(ようだ)。12:1のステアリングギヤ比はどのモードを選択しても変わらないが、クイックな設定のおかげで、コーナーへのアプローチが待ち遠しくなる。軽く手を添えて気持ち動かすだけで、スムーズに向きを変え、コーナーをなめるようにクリアしていく。病みつきなる気持ち良さだ。


ジュリア・クアドリフォリオの楽しさはこの程度ではない。真骨頂はRACEモードだ。アルファロメオは「サーキットでのスポーツ走行向けモード」としているが、ストリートでも選択する価値は充分にある。気分が激上がりすること間違いなしだ。RACEモードに切り換えた途端、エキゾーストサウンドは一変する。ヴォォォォン、バンバンバンの世界だ。
RACEモードに切り換えるとステアリング前方のディスプレイに「マニュアルモードでの運転を推奨する」旨のメッセージが表示されるが、推奨に従ってシフトレバーを左側に倒してマニュアル変速モードにし、ステアリングホイールの裏にある大ぶりなパドルでアップシフトとダウンシフトを行ないながら運転すると、気分はもうレーシングカーを操るドライバーである。2.9ℓV6ツインターボエンジンは「待ってました」とばかりに覚醒し、アクセルペダルとパドル操作を合図に官能的なサウンドを奏でるようになる。サーキットで転がしたらさぞかし楽しいだろうなと思いながら、真骨頂の片鱗だけを垣間見た。本気出すと、滅法速い!

ジュリア・クアドリフォリオの価値は、鋭い猛獣の爪を持ちながら、普段はそんなことおくびも出さずに袖の下に隠し、紳士然と振る舞うことだ。DモードかAモードを選択している限り、大人4名と相応の荷物を難なく飲み込んで快適に運ぶ、格好いいサルーンである。普段は本性を隠しているところがニクイ。
しかしRACEモード、ヤバイです。




アルファロメオ ジュリア・クワドリフォリオ
全長×全幅×全高:4635mm×1865mm×1435mm
ホイールベース:2820mm
車重:1710kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式
エンジン形式:V型6気筒DOHCターボ
エンジン型式:670050436
排気量:2891cc
ボア×ストローク:86.5mm×82.0mm
圧縮比:9.3
最高出力:510ps(375kW)/6500rpm
最大トルク:600Nm/2550rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:燃料筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:58ℓ
車両価格○1153万円