マツダ車ラインナップのど真ん中に位置するCセグメント5ドアハッチバック「マツダ3ファストバック」には4種類ものエンジンが設定されている。その中で最も小排気量かつロースペックなP5-VPS型1.5L直4ガソリンエンジンを搭載する「15Sツーリング」の6速AT・FF車に、ワインディングと市街地を中心として総計約300km試乗した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、マツダ
クルージング&トラフィックサポート(=渋滞時加減速操舵アシスト)*
前側方接近車両検知(FCTA)
アダプティブ・LED・ヘッドライト
前後シグネチャーLEDランプ
デイタイム・ランニング・ライト(DRL)
自動防眩ルームミラー
リバース連動ドアミラー機能*
ドアミラー自動防眩機能(運転席側)
ステアリングヒーター*
ステアリングシフトスイッチ
フロントカップホルダーリッド
運転席10Wayパワーシート&ドライビングポジションメモリー機能*
運転席&助手席シートヒーター*
車載通信機
*は「20Sプロアクティブ」にオプション設定
なお、「15Sツーリング」と「15S」の違いは以下の通りとなっている。
・スーパーUVカットガラス(フロントドア)+IRカットガラス(フロントガラス/フロントドア)がオプション
・加飾パネルがプラチナサテン→シルバーに
・エアコンがフルオート式→マニュアル式に
・CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)がオプションに
・タイヤサイズが215/45R18 89W→205/60R16 92Vに
・キーレスエントリーシステムがアドバンスト(=スマートキー)→電波式に
こうした価格や仕様の違いを知ってもなお、このマツダ3ファストバック15Sツーリングの内外装は、マツダがターゲットとするフォルクスワーゲンはもちろん、それ以上のプレミアムブランドと比較しても遜色ないかそれ以上に質感が高く、そして美しい。仕事柄見慣れている筆者でも、特にソウルレッドのマツダ3ファストバックを町中で見かけると、絶世の美女とすれ違った時によく似た感覚にとらわれるのだ。
実際にマツダR&Dセンターのある横浜市内を走り始めると、早くも「クルマとはかくあるべし」というマツダの主張が右足に伝わってくる。端的に言って、アクセルペダルもブレーキペダルも、重い。より正確には、しっかり強く奥まで踏み込まなければ、加速も減速も充分に得られないのだ。
これは、単純にエンジンのトルクが細く、ブレーキの初期制動力が低いことも大きいのだが、ペダル自体も昔のドイツ車ほどではないにせよ、現代のクルマとしては強めの踏力を要求するセッティングになっている。
踏力に対し加減速度はリニアなため、慣れてしまえばコントロールしやすいのだが、逆に慣れるまでは思うように加減速してくれず、特に減速側では少なからず恐怖感を覚えてしまう。それ以前に、常に強めの踏力を要求されるのは、長距離長時間乗るほど疲労感が増すので考え物だ。
そして、箱根のワインディングへ持ち込むと、マツダ3本来のリニアなハンドリングが、1.5Lパワートレインとの相対関係で、より一層際立っているのを感じることができた。
装着されているタイヤは決してドライグリップ一辺倒のものではないが、絶対的な限界は高く、また大きなギャップを乗り越えてもそう簡単には破綻しない、懐の深さも兼ね備えている。つまりはそれだけボディ・シャシーとも剛性が高くバランスも取れていて、タイヤのグリップを有効に使えるものになっているのだろう。
だが筆者なら、今回のテスト車両そのままの仕様は選ばない。タイヤが205/60R16 92Vとなり乗り心地の改善とイニシャル・ランニングコストの低減が期待できる「15S」の6速MT車こそ、最高のコストパフォーマンスで美しい内外装と「人馬一体」を堪能できるはずなのだから。
■マツダ3ファストバック15Sツーリング(FF)
全長×全幅×全高:4460×1795×1440mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1340kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC
総排気量:1496cc
最高出力:82kW(111ps)/6000rpm
最大トルク:146Nm/3500rpm
トランスミッション:6速AT
サスペンション形式 前/後:ストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:215/45R18 89W
乗車定員:5名
WLTCモード燃費:16.6km/L
市街地モード燃費:13.7km/L
郊外モード燃費:16.5km/L
高速道路モード燃費:18.4km/L
車両価格:231万5989円