ワークス系チューナーの取材機会も多い、自動車研究家の山本シンヤさんが筆頭に挙げてくれたのは、トヨタのスポーツカーブランド「GR」の名を冠したGRヤリス。そしてBMWアルピナ・D3 SとホンダNSXと、どれも走りに一家言のあるモデルがそろった。
TEXT●山本シンヤ(YAMAMOTO Shin-ya)
1台目:トヨタ・GRヤリス RZハイパフォーマンス
2007年に“元祖”GAZOO Racingを立ち上げたモリゾウこと豊田章男社長の「もっといいクルマづくり」の想いが色濃く反映されたモデルであり、270ps/370Nmを誇る1.6ℓの高出力ターボエンジン+6速MT、空力的に優れた軽量ボディ+専用シャシー+AWDシステムで武装したモータースポーツ直系スーパーハッチ。
電動化の波が押し寄せるこの時代に、「次期WRCホモロゲモデル」、「素のままでローカルモータースポーツに参戦可能なパフォーマンス」、「誰でも買えるスポーツカー」と言うピュアなコンセプトは何とも痛快である。偉大なる先輩...WRX STIやランエボが生産終了となった今、個人的にはスポーツAWDのDNAを受け継いだ「令和のラストサムライ」と呼んでもいいと思っている。
2台目:BMWアルピナ・D3 Sアルラッド
BMWをベースにした高性能モデルだが、サブブランドでモータースポーツ直系の「M」と全く異なる独自の世界観を備えたモデルで、世界のコンプリートカーが見習うべきお手本だ。
その中でも最新の「D3 S」をセレクト。普段はプレミアムセダンも顔負けの上質かつ繊細な乗り味を備えるも、一たび鞭を入れるとスポーツカーに変貌する「アルピナマジック」と呼ばれる乗り味と、高性能とエコを高次元でバランスさせた直6-3.0Lディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッドの組み合わせは、未試乗ながらも「究極の大人スポーツ」と断言できる。
3シリーズベースで1000万円オーバーの価格はたまげるが、それに見合う価値は間違いなくある。
3台目:ホンダ・NSX
偉大なる初代の影に隠れてしまった2代目。シンプルで軽量だった初代とのギャップに否定的な意見が多いが、NSXの意味は「New SportsCar eXperiexce(新しいスポーツカーの経験)」。つまり、2代目は初代とは違う新しいスポーツカーの挑戦を行なったわけであり、そこは素直に褒めるべきだろう。
とはいえ、初期モデルは複雑な制御がドライバーの操作とリンクせず、予期せぬ動きにドキッとする怖さがあったが、最新モデルはその辺りが改善されクルマとの一体感や操作に対するクルマの動きの連続性は高められている。現状課題がないわけではないが、次世代スーパースポーツの先駆者として記憶に残しておきたい一台だ。
■山本シンヤ(やまもと・しんや)
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し「自動車研究家」を名乗る。ジャンルは「広く深く」だが、中でもエンジニアの心を開き「本音」を引き出す能力に長ける。
あとどれだけクルマに乗れるだろうか。一度きりの人生ならば、好きなクルマのアクセルを全開にしてから死にたいもの。ということで、『乗らずに後悔したくない! 人生最後に乗るならこの3台』と題して、現行モデルのなかから3台を、これから毎日、自動車評論家・業界関係者の方々に選んでいただく。明日の更新もお楽しみに。(モーターファン.jp編集部より)