メカニズムやレーシングマシンにも詳しい、モータリングライターの世良耕太さん。ポルシェ718ケイマンGTS4.0を選んだのは、実は昔乗っていたとあるミッドシップ・スポーツカーとの共通性があるからだとか。
TEXT●世良耕太( SERA Kota)
1台目:ポルシェ718ケイマンGTS 4.0
人生最後に乗るなら昔乗っていたクルマを選んで思い出に浸りたいところだが、「現行車縛り」があるので、思い出のクルマの超進化形で望みを叶えることにしたい。昔乗っていたクルマとは、SW20型のトヨタMR2・Gリミテッド(5MT)だ。ミッドシップ2シーターという“記号性”に惚れて飛びついた。スーパーカー世代なもので……。
718ケイマンGTS 4.0は「ミッドシップ」「2シーター」「自然吸気エンジン」「マニュアルトランスミッション」の点で、昔乗っていたMR2と共通している。「いやいや、まったくの別物でしょ」という指摘は真摯に受け止めるにして、筆者にとれば上記4つの要素がそろった時点で役満であり、雑音は聞こえなくなる。
MR2(2.0ℓ直列4気筒)と違い、718ケイマンGTS 4.0は大排気量NAエンジン(4.0L水平対向6気筒)を積んでいるのも評価ポイントだ。ターボエンジンも日増しに良くなっているが、“官能”の点で大排気量NAには叶わない。人生最後を締めくくるのに、文句の付けようがない1台だ。
2台目:ホンダ・フィット・ホーム
飛行機に乗って家族旅行に出かける際、到着地ではレンタカーを借りるのが常だ。車種を指定せず、「何が出てくるのかなぁ」と楽しみに待つのが慣わしになっている。そして、どうしたわけか、かなり高い確率でフィットに当たっている。あるときは黄色いフィット、またあるときは赤いフィットだったりした。そのため、旅の楽しい思い出はフィットとともに記憶に刷り込まれている。
現行フィットでの旅はまだ経験していないが、家族で移動の時間を共有するのにふさわしい仕上がりになっているのは確認済みだ。子供に運転を任せられる状況になったので後席の居住性も気になるところだが、その点も申し分ない。荷室には大きな荷物を飲み込むだけの容量がある。燃費が良く、走りもいい。走行中の室内はとても静かで、会話を邪魔することがなさそう。昔を懐かしみつつ、最後にクルマで旅をするならフィットかなぁ...。
3台目:マツダ・ロードスターRS
これも718ケイマンと同様、自分のことだけを考えたチョイスである。元来筆者は、密閉された移動体であるところに、クルマの魅力を感じている。ドアを閉めた瞬間に外界とのつながりが遮断され、自分の世界に入り込むことができるからだ。過度なノイズや刺激は自分の世界を邪魔することになるので、窓は滅多に開けない。まして、屋根など開けようはずがない。
しかし、屋根が開くクルマに乗って「気持ちいいなぁ」と思うのも事実である。これまでオープンカーが購入希望リストに載ることはなかったが、人生の最後くらい思い切って一歩踏み出してみたいと思う。ロードスターの場合は「オープンになる」ことが最大の魅力ではなく、たとえ30km/hや40km/hで走っていてもクルマを操る楽しさが味わえることで、そこが選択の決め手だ。
RSはビルシュタイン製ダンパーを採用しているから「乗り味硬いだろう」と予想したが、その予想を思いっきり覆してくれた。しっかりしているのに、しなやかである。ブレンボ社製ブレーキ+レイズ製アルミホイールのメーカーオプションを選択すれば完璧だ。
■世良耕太(せら・こうた)
モータリングライター。愛車歴はトヨタMR2(SW20)〜日産スカイラインGT-R Vスペック(BNR32)〜VWボーラV6 4モーション〜ゴルフVI 1.2ℓ〜ゴルフVII 1.2ℓ。
あとどれだけクルマに乗れるだろうか。一度きりの人生ならば、好きなクルマのアクセルを全開にしてから死にたいもの。ということで、『乗らずに後悔したくない! 人生最後に乗るならこの3台』と題して、現行モデルのなかから3台を、これから毎日、自動車評論家・業界関係者の方々に選んでいただく。明日の更新もお楽しみに。(モーターファン.jp編集部より)