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ヤマハ・TMAX 560 TECH MAX試乗|身長168cmには意外とデカい!けれどツアラーとしての性能は申し分ナシ。


500で始まった初代TMAXのデビューは2001年8月。欧州では2000年7月にイタリアのナポリで先行発表され秋に発売。スポーツ・スクーターのパイオニアとして高い人気を獲得した。今回5月8日に新発売されたモデルはTMAX530の後継となる最新モデルである。




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)


取材協力⚫️ヤマハ発動機株式会社

ヤマハ・TMAX560 TECH MAX ABS.......1,419,000円

マットダークグレーメタリックA(マットグリーニッシュグレー)

マットダークグレーメタリック8(マットダークグレー)【TMAX560 TECH MAX ABS】
マットブルーイッシュグレーメタリック3(マットグレー)【TMAX560 ABS.......1,276,000円】

 TMAXが異色なモデルとして注目されたのはスクーターの常識を覆した走行性能の高さにあった。人気獲得の要因はたくさん考えられるが、ごく簡単に説明すると前後に14インチサイズの大径ホイールを採用した事。そしてダイヤモンドフレームに360°クランクのDOHCツインエンジンをリジッドマウントした事に尽きるだろう。


 その実現にはアルミピストン型水平対向バランサーを採用した功績等も見逃せないが、注目すべきはスクーターでは常識的だったリヤ・サスペンションのユニットスイング方式を止め、TMAXはリヤサスペンション稼動部の慣性重量を軽くする独自設計を貫いたのである。


 ピボットとドライブ軸の同軸設計を施したアルミ製リヤアームを採用。アーム内をオイルバス封入式とし2段連結掛けサイレントチェーンで後輪を駆動。専用開発されたゴムベルトCVTによりスクーター同様の扱いやすさとバイク並のスポーツ性能を目指した所に大きなインパクトと魅力を備えていた。


 初代モデルのお話はここまで。その後もアルミフレームの採用やホイールサイズの見直し、エンジンの進化や快適機能の向上、外観デザインも含めて着実な刷新と熟成を重ねてきている。


 2017年3月に6代目へのフルモデルチェンジを果たしたTMAX530は“Master of Scooter”をコンセプトに新設計のアルミダイキャストフレームや40mm長くなったリヤアームにリンク式リヤサスペンションを装備。2次駆動には25mm幅のVベルトを使用。タイヤも含めてトータルで軽量化を達成。電子制御スロットルも新採用。そして今回のTMAX560は環境性能も含めてさらにその上の存在へと昇華させたのである。


 ウィークエンドに300kmぐらいのタンデムツーリングを快適に楽しむための高速スポーツコミューターを提唱した基本コンセプトが、20年の歳月と共にシッカリと煮詰められ、極限まで洗練されたわけだ。




 特に試乗車のTECH MAX ABSはTMAX560 ABSをベースにクルーズコントロールシステムを始め、電動調節式スクリーン、グリップウォーマー、シートヒーター、そしてアジャスター付きリアサスペンションを搭載する上級モデルに仕上げられている。         


 水冷DOHC4バルブ直列2気筒の搭載エンジンはTMAX530をベースにボアを2mm拡幅。ボア・ストロークは70×73mmのロングストロークタイプのまま排気量561ccへ拡大された。冷却性能も見直されパワー&トルク共にアップ。排気系にはツイン触媒を搭載する。動力性能の向上と、2次減速比が6,034から5,771へ高められた事で、燃費性能も1割程度の向上を達成している。


 正直、かなり高価な価格設定に驚かされるが、これまでの変遷を辿ると、スポーツスクーターのパイオニアとしての誇りを持ってつぎ込まれてきたヤマハの技術力とTMAXに掛けてきた開発陣の情熱に対する信頼の証のようにも思えてくるから不思議である。

ジェントルな成長ぶりに大きな魅力を覚えた

 ビッグ(マキシ)スクーターのTMAXを目前にすると流石にそのボリューム感には圧倒された。全長で2,200mm。ホイールベースは1,575mm。俯瞰写真をみれば一目瞭然だが、前方から後方に至るまで全体的にワイドな車体デザインは、バイクと比較すると明らかに太く大きい。


 車庫の限られたスペースに入れる時も、脇にライダーが立ち入る分も考慮すると、かなりの幅が必要となる。壁際のギリギリに留め置く場合でも、ハンドルの下を潜り抜けて人が出てくることもままならない。バイクに例えるならオーバー1Lクラス並の駐輪スペースが必要となるだろう。




 シート高は800mm。特に高過ぎるわけではないが、決して低くはない。車体がワイド故足は地面に向かって真っ直ぐに伸ばすことができず、停車時はかなり意識して支えることになる。これ自体は当たり前の事なので、特に問題は感じられないのだが、慣れて来た頃に注意したいのは、乗り味に落ち着きがあり、気持ちがリラックスしてしまう点にある。


 スーッと穏やかに停止して無意識で足を着こうとすると、思いの他地面が遠く感じられ慌てることになる。しかも股が開き気味で膝も曲がった状態で地面を捉えても、爪先の接地荷重が軽く、足を滑らせやすいから、気をつける必要があった。


 具体的には、きちんと気持ちの準備から初める事。後傾した腰骨をシッカリと起こして背筋をのばし、できるだけ下方に伸ばした両足で確実に地面を捉えるように心がける。筆者の体格(168cm)ではそんな用心深さが必要と感じられた。




 さて、スマートキー方式が採用されているので、キーはウエアのポケットに入れておけば良い。ハンドル右手の黒い四角いボタンをワンプッシュすればイグニッションONになり次に同じボタンを押せばスターターモーターが作動してエンジンは簡単に始動する。


 あとは左手でサイドブレーキを解除して右手のスロットルを回せば発進。スクーターらしい気軽な操作性は、大きく重い車体を取り回す煩わしさから一気に開放してくれる。


 スタートダッシュの鋭い加速性能は流石で高速も含めた一般道の中で自由自在にセーフティゾーンを求めて移動し続けられる。その加速フィーリングやエンジンの常用回転域の具合は生き生きと元気な印象が強かった以前の出力特性よりも落ち着きを伴う乗り味になっていて、快適性は抜群。


 スクリーンを高めると前方からの風圧は綺麗に頭上を抜け、負圧による乱流で背中が押されることもなくエアロダイナミクスの進化は絶妙で高速クルージングも快適。


 段差のあるシートに腰を落ち着け、両足をフットボード前方に突っ張るとライダーの身体を安定させることができ、急ブレーキへの対応はもちろん、峠道で気持ちよく右へ左へと身を翻すシーンも、まるでバイクの様に自然と楽しめてしまうのである。


 さらに良いのは、熟成された前後サスペンションのフットワークも素晴らしい。前後15インチサイズのチューブレス・ラジアルタイヤは転がりが実に素直で、旋回操作も扱いやすかった。不意に大きなギャップを拾っても、タイヤとサスペンションで確実に吸収され、衝撃がフレーム迄伝わる事はなかった。


 取りまわしに閉口する大きく重い車体もクルージング時の快適性には大きく貢献。たっぷりあるシート下収納の使い勝手や、満タンでおよそ300km以上走れる後続距離の長さを考えると、快適な移動道具としても侮れない魅力がある。


 ハンドルグリップ・ウォーマーやシートヒーターも標準装備されているので、クルーズコントロールを利かせて冬場でも遠出してみたい気になれる事は請け合いである。


 ちなみに100km/hクルージング時のエンジン回転数は約4,600rpm。減速時は18km/h、1,700rpmでクラッチが切れるまでは適度なエンジンブレーキも利いてくれる。どの領域からでもスロットルレスポンスに優れ、巡航運転だけではなく、アクティブな走りにも十分快適に応えてくれた。なお試乗時の実用燃費率は21,9km/Lだった。 


 ETCが標準装備されていない点だけは、とても残念に感じられたが、各部の作りや操作性、細部の使用パーツからも丁寧に作られた事が理解でき、長年愛用しているかのような愛着さえ沸いてきた。そういう大人びたニーズにも十分対応できる上質な仕上がりが魅力的である。

足つき性チェック(身長168cm)

シート高が800mmある上にシートクッションがワイドなデザインのため、両足の踵は大きく浮いてしまう。車体を支える時は、意識して背筋を伸ばす必要があった。リラックスし過ぎてウッカリ腰骨が後傾したまま足を出すと地面はさらに遠くなる。

ディテール解説

鋭いつり目で前方に睨みをきかすヘッドランプはLEDの4灯式。ゴールドに輝くフロントフォークのアッパーチューブがノーズから覗く。

φ41mm倒立式フロントフォークにラジアルマウントされた油圧ブレーキキャリパーは対向4ピストンタイプ。ダブルでフローティングマウントされたディスクローターはφ267mm。

車体右サイドにハネ上げられてフィニッシュする1本マフラー。マフラーカバー(ヒートガード)は2重構造。ワイドなシートカウルよりさらに外側に張り出している。

メカニズムがぎっしりと詰まるアンダーまわり。リヤサスペンションはショックユニットがほぼ水平にレイアウトされたリンク式モノクロス。プリロードと伸び側減衰力調節ができる。

160/60R-15インチタイヤを駆動するのは25mm幅のカーボン系繊維ベルト。最終減速は少し高められた。スイングアームやベルトカバーはかなりガッチリと頑丈そうなデザインである。

φ282mmの大径シングルディスクローターを装備したリヤブレーキ。油圧キャリパーはシングルピストンのピンスライド式。左上にあるコンパクトなキャリパーは機械式。ハンドル左側レバーで操作するサイドブレーキ用だ。

フェアリングマウントのサイドミラーは付け根が回転式。駐輪時等は簡単に省スペース化が図れる。スマートキー方式が採用されているので、メインスイッチ等の鍵穴は無い。ステアリングロックも電動式だ。

多彩なスイッチが居並ぶハンドル左側。クルーズコントロールや、ヒーターやスクリーン他の操作に使える切り替え式スイッチがある。グリップと平行する黒いレバーがサイドブレーキだ。
スマートキー方式を採用。黒い四角いスイッチがメインスイッチと始動用セルモータースイッチを兼ねる。スイッチを切る時には写真左端に見えるスイッチを押す。
ブルーのリング状に光る文字盤を持つTFTマルチファンクションメーターはアナログ風表示。中央には3.5インチ・モノクロームTFTモニターを備える。

シート前端部にある二つのボタンは右がシートロックの解錠用及び、左側が燃料給油口の蓋を開けるスイッチだ。
右側のポケットはペットボトル等が収納できる。ボックスの奥底には12V電源ソケットも装備されている。
ハンドル左側のスイッチ操作でスクリーンは電動で無段階に上下できる。高低差は135mm。写真は一番低い状態。
一番高い位置にアップした状態。ウインドプロテクションが高められライダーの顔面もカバーする。ちなみにTMAX560はボルトの差し替えで高低差55mm2段階調節ができる。
幅も厚みもかなりのボリュームがあるダブルシート。ハンドル左側のスイッチでシートヒーターを3段階に効かせることができる。

リヤヒンジで後方に開く一体式ダブルシート。ヒンジの作りもシッカリしており、ダンパーやロックメカもダブルで装備されている。
ご覧の通りシート下の収納スペースはたっぷりと余裕がある。ヘルメットは写真の様に逆さまに入れられる。
T文字を形どったテールランプはLED方式。細身のクリアレンズ・ウインカーもLEDランプが採用されている。

やはり大型スクーターはボリュームがある。フロントまわりだけでなく、マフラーの張り出しも含めてテールまわりもかなりワイドだ。

◼️主要諸元◼️

TMAX560 TECH MAX 〈 〉内はTMAX560


認定型式:8BL-SJ19J


全長/全幅/全高:2,200mm/765mm/1,420mm


シート高:800mm


軸間距離:1,575mm


最低地上高:125mm


車両重量:220kg〈218kg〉


燃料消費率:31.7km/L(60km/h)2名乗車時


WMTCモード値:22.1km/L 1名乗車時




原動機打刻型式:J420E


原動機種類:水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ


気筒数配列:直列2気筒


総排気量:561㎤


内径×行程:70.0mm×73.0mm


圧縮比:10.9:1


最高出力:35kW(48PS)/7,500r/min


最大トルク:56N・m(5.7kgf・m)/5,250r/min


始動方式:セルフ式


潤滑方式:ドライサンプ


エンジンオイル容量:3.5L


燃料タンク容量:15L(無鉛プレミアムガソリン指定)


吸気・燃料装置/燃料供給方式:フューエルインジェクション


点火方式:TCI(トランジスタ式)


バッテリー容量/型式:12V, 11.0Ah(10HR)/YTZ12S


1次減速比:1.000(52/32×36)


2次減速比:5.771(23×59/26)


クラッチ形式:湿式, 遠心, 多板


変速装置:Vベルト式(無段変速/オートマチック)


変速比:2.041〜0.758(無段変速)


フレーム形式:ダイヤモンド


キャスター/トレール:26°00′/98mm


タイヤサイズ(前/後):120/70R15M/C 56H(チューブレス)/ 160/60R15M/C 67H(チューブレス)


制動装置形式(前/後):油圧式ダブルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ


懸架方式(前/後):テレスコピック/スイングアーム(リンク式)


ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ:LED/LED


乗車定員:2名

ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ編集部員を経てフリーランスに。約36年の時を経てモーターファン バイクスのライターへ。常にオーナー気分になり、じっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

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