SUV、クロスオーバーが人気だが、端正で使い勝手もよく、もちろん走りもいい、となれば、やはり4ドアセダンだ。大きすぎなくて高価すぎない上質セダンを探すなら340〜360万円台。新型アウディA3セダン登場で激戦区となるこのカテゴリーの魅力的な7台を比べてみる。新型アウディA3セダン、メルセデス・ベンツAクラスセダン、BMW2シリーズ・グランクーペ、トヨタ・プリウス、マツダMAZDA3セダン、ホンダ・インサイト、スバルWRX S4である。
セダンの美しさ、良さが凝縮されたクラス
世界的にSUV/クロスオーバーが人気を集めていて、3ボックス・セダンの販売台数は決して多くはない。が、しかしだからと言って魅力がないかといえば、それは違う。流麗なボディスタイル、高い空力性能、独立したトランクルームがある使い勝手の良さ、低い重心高による走りの良さなどセダンだからこそのアドバンテージもある。
ジャーマン・プレミアム3であるメルセデス・ベンツ、BMW、アウディは主力のDセグメントのセダン(Cクラス、3シリーズ、A4)よりコンパクトなCセグメントのセダンを設定している。Cセグはハッチバックが定番という欧州はともかく、北米、中国市場はいまだに「クルマといえば3ボックスのセダン!」という志向が強いからという理由もあるのだろう。
従来はベースになったハッチバックにトランクスペースを足しただけのようなデザインのクルマもあったが、記念は力の入ったモデルを開発してきている。
その最新例がアウディA3セダンだ。
BMWは2シリーズにグランクーペというクーペライクな4ドアモデルを投入している。
さて、このカテゴリーの主役は上記のドイツ3モデルだけではない。日本車にもトヨタ・プリウス、マツダMAZDA3セダン、ホンダ・インサイト、スバルWRX S4といったモデルが存在する。
この7モデルの価格帯を表にしてみた。
アウディA3セダンの新型の日本導入時期などは未定なため、もちろん価格もわからない。表には現行モデルの価格帯を入れてある。また、アウディS3やBMWのMモデルなどのハイパフォーマンス版は除いた。あくまでも「普段使いできる上質でちょうどいいサイズのセダン」という基準にしてある。
この表でもわかるように、ドイツ勢と日本勢の価格がオーバーラップする価格帯が340〜360万円台なのだ。
次は、ボディサイズ比較
このクラスのセダンの長所は、そのサイズ感だ。Dセグ・セダンになると軒並み全長が4700mm超え、日産スカイラインは4800mm超え、トヨタ・クラウンでは4900mmを超えてしまう。
後席にも大人がちゃんと乗れて大きすぎない、というのが今回取り上げるCセグ・セダンなのだ。
まずはジャーマン・プレミアム3の3モデルから
全長は、意外なことに新型アウディA3セダンが一番短い。
A3セダン:4495mm
2シリーズ・グランクーペ:4535mm
Aクラスセダン:4550mm
となっている。ひとつ上のDセグ・セダンでは
A4:4750mm
3シリーズ:4715mm
Cクラス:4690mm
とアウディが一番大きいのだが、Cセグ・セダンではアウディがもっとも短いのだ。
今回登場するドイツ3モデル、日本4モデルは、スバルを除いてすべてフロントにエンジンを横置きするFFベースだ。サイドビューをみると、それぞれのメーカーのクルマづくりが見えて面白い。
注目したいのは、フロントアクスルセンター(前輪中心)からフロントドアのパーティングライン。「プレミアムレングス」と呼ばれる部分だ。ここが長いとプレミアム感を出しやすい。フロントにエンジンを縦置きするFRベースのモデルはここを長くとれるのだ。
この3台で言えば、BMW2シリーズ・グランクーペがもっとも長い。「クーペ」を名乗るだけあって、ルーフラインからトランクへの流れももっとも流麗なのがBMWだ。その分全長は長くなる。
国産4モデルは、ドイツ勢よりやや大きい。ブランド性で後れをとる関係上、サイズで取り返す(「同じクラスで、少し安くて少し大きい。走りは同等ですよ。燃費ははるかにいいですよ」ということかもしれない。
4台を横並びに見てみよう。
全長は
プリウス:4575mm
WRX S4:4595mm
MAZDA3セダン:4660mm
インサイト:4675mm
写真はリヤアクスルセンターで合わせてある。それぞれ特徴的なサイドビューであることがわかる。スバルはやはりフロントオーバーハングが(水平対向エンジンを搭載するために)長め。マツダがもっともホイールベースが長く(2725mm)、前述の「プレミアムレングス」も長くとっている。
パワートレーンは、ドイツ勢と日本勢でまったく違うところだ。まずはドイツ3モデルから。
パワートレーンは、ドイツ勢はダウンサイジング過給エンジン+7速DCTで揃う。もちろん、ディーゼルや48V MHEVといったパワートレーンも用意するが、あくまで主力はダウンサイジング過給エンジン+7速DCTだ。対する日本勢には、欧州勢が追いつけない「ストロングハイブリイド」という武器がある。プリウスのTHSⅡ、インサイトのe-HEV(i-MMD)は、燃費性能ではドイツ勢を上回る。
MAZDA3には、SKYACTIV-Xという革新的燃焼方式を採る新世代ガソリンエンジンが載る。トランスミッションはトルコンを使う6速AT。WRX S4は、これまた水平対向4気筒直噴ターボという、独自のユニットがある。トランスミッションもスバルだけのチェーン式CVTを使う。
こうしてみると、デザインといい、パワートレーンといい、どのモデルも個性的だ。
諸経費まで考えたら400万円、というのは多くの人にとってクルマ購入の「上限」だと思う。この価格帯にこれだけ個性があって魅力的なセダンがあるというのは、もっと多くの人に気づいてほしい、ところである。