FRからミッドシップへと劇的な転身を遂げ、8代目へとフルモデルチェンジしたシボレー・コルベット。その日本仕様はコルベット史上初の右ハンドルとされることがアナウンスされており、シボレーの日本市場にかける意気込みのほどがうかがえる。とはいえ、多くの人の頭にひとつの不安がよぎっていることだろう。ミッドシップということはフロントタイヤとコクピットが近い。となると……ペダル配置は大丈夫なのか? というわけで、東京オートサロンのシボレーブースにて、実車で確認してみた。
右ハンドルの国は、思っているほど少数派ではない
新型コルベット最大のニュースは、フロントエンジン+リヤホイールドライブから、ミッドエンジン+リヤホイールドライブに変わったことだろう。伝統のV8 OHVエンジンは長いフロントノーズではなく、ドライバーの背後に搭載される。コルベット史上初のミッドシップとなったのだ。
そして日本人にとってもうひとつ大きなニュースは、日本仕様がこれまたコルベット史上初の右ハンドルとされること。「アメリカン・マッスルが右ハンドル?」と訝る向きもあるかも知れないが、仕向地に合わせた仕様を用意するのは、考えてみればメーカーとして当然のこと。
さらに言えば、とかくマイノリティと決めつけられがちな右ハンドルだが、左側通行(すなわち右ハンドル)の国は、日本、イギリス、オーストラリアのほか、インド、東南アジアやオセアニア諸国、アフリカの半数くらいの国々(主にイギリスの旧植民地)など、意外と多い。もちろん左ハンドルの国よりは少ないのだが、インド、バングラデシュ、パキスタン、インドネシア、マレーシアといった人口の多い国を数多く擁しているため、マイノリティと簡単に片付けられるものではないはずだ。
アメリカの名門が、そんな現実をしっかり理解していることを素直に評価すべきだろう。
そうは言っても、クルマ好きのアナタであればひとつの不安が頭をよぎっているのではないか。
「果たしてペダル配置は大丈夫なのか?」と。
コンパクトカー、そしてミッドシップ車にとって、右ハンドル化というのはなかなか難しい。フロントタイヤとフロントシートの距離が近いため、ドライバーの足元スペースがホイールハウスの出っ張りの干渉を受けやすく、アクセルペダルが左にオフセットしがちになるなのだ。
MTの場合、右足で踏むべきペダルはふたつ、左足で踏むべきペダルはひとつとなる。ATであれば右足がふたつ、左足はゼロと、いずれも右足で踏むペダルが多い。だから右側にホイールハウスが張り出す右ハンドルは、ペダルレイアウトの自由度が低いのだ。
左ハンドルであれば簡単だ。左フロントタイヤの出っ張りは、そのままフットレストになるだけで、アクセルペダルやブレーキペダルは影響を受けない。
フロントタイヤからフロントシートまでの距離に余裕のある先代までのコルベットであれば、むしろ右ハンドル化は容易だったかも知れない。だが新型はミッドシップなのだ。
というわけで、東京オートサロンに姿を現した新型コルベットで確認してみた。持ち込まれたのは北米仕様の左ハンドルだったが、助手席側の足元を見てみると……
うおおおおおっ、まったく右側にホイールハウスの出っ張りがないではないか!
バンザーイ! みなさん、新型コルベットは右ハンドルでも大丈夫ですよ、きっと!
今のところ新型コルベットにMT仕様はラインナップされていないが、これならたぶんペダルが3つあっても問題ないだろう。アクセル、ブレーキ、クラッチ、そしてフットレストを配置しても、まったく余裕のよっちゃんだ。
新型コルベットを予約しようと思っている恵まれたアナタ! 迷うことなくオーダーしちゃってください。そして記者を含めた多くのクルマ好き諸君、頑張ってお金を貯めようではないか。